救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:9

昏睡・植物状態の患者、25%はfMRIまたはEEGで脳活動あり/NEJM

 昏睡、植物状態または最小意識状態マイナスの患者において、約4例に1例は言葉による指示に対するfMRIまたは脳波(EEG)上の活動、すなわち認知と運動の解離(cognitive motor dissociation:CMD)が認められたという。米国・Spaulding Rehabilitation HospitalのYelena G. Bodien氏らが国際共同前向きコホート研究の結果を報告した。一方、意識障害を有するが言葉による指示に対して観察可能な反応があった患者において、CMDが認められたのは約3例に1例であった。脳損傷により指示に反応しない患者が認知課題を行い、fMRIやEEGで検出される場合がある。CMDとして知られるこの現象については、これまで意識障害患者の大規模コホートにおいて体系的な研究はなされていなかった。NEJM誌2024年8月15日号掲載の報告。

現金給付は、医療アクセスを改善するか/JAMA

 貧困は医療へのアクセスの大きな障壁となり、健康アウトカムの悪化と関連することが知られている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSumit D. Agarwal氏らは、現金給付が医療サービス利用と健康にベネフィットをもたらすかを無作為化試験で調べた。現金給付を受けた人では、とくに精神疾患や物質使用障害(substance use disorder:SUD)に関連した理由での救急外来の受診が有意に減少し、入院に至った救急外来の受診の減少や専門外来の受診の増加もみられた。著者は、「試験の結果は、所得支援の提供で貧困を軽減しようとする政策が、健康および医療アクセスに大きなメリットをもたらす可能性があることを示唆するものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年7月22日号掲載の報告。

重症敗血症へのアセトアミノフェン、生存日数を改善せず/JAMA

 重症敗血症患者において、アセトアミノフェン(パラセタモール)の静脈内投与は、安全性は高いものの、生存日数および臓器補助(腎代替療法、機械換気、昇圧薬)が不要な日数を改善しないことが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのLorraine B. Ware氏らが実施した「ASTER試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2024年8月6日号で報告された。  ASTER試験は、米国の40の病院の救急診療部または集中治療室(ICU)で実施した二重盲検無作為化第IIb相試験であり、2021年10月~2023年4月に参加者のスクリーニングを行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。

国内での小児の新型コロナ感染後の死亡、経過や主な死因は?

 2024年8月2日時点での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内での流行状況によると、とくに10歳未満の小児患者の占める割合が多い傾向にある。日本でCOVID-19発症後に死亡した0~19歳の小児・青年患者の特徴を明らかにするために、国立感染症研究所のShingo Mitsushima氏らの多施設共同研究チームは、医療記録および死亡診断書から詳細な情報を収集し、聞き取り調査を行った。その結果、53例の情報が得られ、ワクチン接種対象者の88%が未接種であったことや、発症から死亡までの期間は77%が7日未満であったことなどが判明した。CDCのEmerging Infectious Diseases誌2024年8月号に掲載。

臓器不全の重篤患者、ICU治療にSGLT2阻害薬追加は有益か?/JAMA

 急性臓器不全を呈した重篤患者に対し、標準的なICU治療にSGLT-2阻害薬ダパグリフロジンを追加しても臨床アウトカムは改善しなかった。一方で、信頼区間(CI)値の範囲が広く、ダパグリフロジンに関連する有益性または有害性を排除できなかったという。ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのCaio A. M. Tavares氏らDEFENDER Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検試験「DEFENDER試験」の結果を報告した。SGLT-2阻害薬は、糖尿病、心不全、慢性腎臓病(CKD)を有する患者のアウトカムを改善するが、臓器不全を呈した重篤患者のアウトカムへの効果は不明であった。JAMA誌2024年8月6日号掲載の報告。

バスケットボールでよくある傷害は足首の捻挫

 バスケットボールは、わが国でも漫画の影響やBリーグの活躍で非常に人気の高い球技であり、パリ・オリンピック2024でも注目されている競技である。そんなバスケットボールは、身体接触も多く、選手の怪我も多いスポーツである。  では、バスケットボールの選手は、どのような傷害をよくするのか。セルビアのPristina-Kosovska Mitrovica大学体育・スポーツ学部のNikola Aksovic氏らの研究グループは、さまざまな文献を基にシステマティックレビューを行った。その結果、選手は膝と足首を傷害する頻度が高いことが判明した。Life誌2024年7月19日号の報告。

経口コロナ治療薬シェア7割のゾコーバ、入院を37%抑制/塩野義

 塩野義製薬は7月29日の第1四半期決算説明会にて、新型コロナウイルス感染症治療薬のゾコーバ(一般名:エンシトレルビル フマル酸)について、現在流通する3剤の経口コロナ治療薬の中でシェアを拡大し、とくに2024年4月以降は重症化リスク因子を有する患者への処方が多く、7月第3週時点でシェア67.6%に達したことを明らかにした。ゾコーバの重症化リスクのある患者の入院抑制効果など、リアルワールドエビデンスが蓄積されていることについて、以下のとおり説明された。

忽那氏が振り返る新型コロナ、今後の対策は?/感染症学会・化学療法学会

 2024年8月2日の政府の発表によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の定点当たりの報告数は14.6人で、昨夏ピーク時(第9波)の20.5人に迫る勢いで12週連続増加し、とくに10歳未満の感染者数が最も多く、1医療機関当たり2.16人だった。週当たりの新規入院患者数は4,579人で、すでに第9波および第10波のピークを超えている。  大阪大学医学部感染制御学の忽那 賢志氏は、これまでのコロナ禍を振り返り、パンデミック時に対応できる医師が不足しているという課題や、患者数増加に伴う医師や看護師のバーンアウトのリスク増加など、今後のパンデミックへの対策について、6月27~29日に開催の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会にて発表した。

日本女性の平均寿命87.14歳は世界1位、男女とも前年より寿命延長/厚労省

 厚生労働省は、7月26日に令和5年の簡易生命表の概況を発表した。これによると男性の平均寿命は81.09歳、女性の平均寿命は87.14歳となり、3年ぶりに前年を上回った。  前年と比較して男性は0.04年、女は0.05年上回ったほか、平均寿命の男女差は6.05年で前年より0.02年延長した。  65歳の死因別死亡確率(主要死因)について、男性では肺炎6.18%(前年6.13%)、老衰8.85%(前年8.31%)が前年に比べ死亡確率が上昇し、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患は前年に比べ低下した。女性では肺炎4.44%(前年4.34%)、老衰20.77%(前年19.79%)が前年に比べ死亡確率が上昇し、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患は前年に比べ低下した。

院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/BMJ

 非外傷性院外心停止成人患者において、骨髄路確保は静脈路確保と比較して、生存退院、病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開、良好な神経学的アウトカムのいずれについても差はなかった。台湾・国立台湾大学病院のYing-Chih Ko氏らが、クラスター無作為化比較試験「Venous Injection Compared To intraOsseous injection during Resuscitation of patients with out-of-hospital cardiac arrest trial:VICTOR試験」の結果を報告した。蘇生に関するガイドラインでは、院外心停止時の薬物投与には静脈路を優先し、静脈路が確保できない場合は骨髄路を使用することが推奨されているが、これまでの後ろ向き研究には限界があった。著者は、今回の前向き試験の結果に基づき、「骨髄路確保は、静脈路確保の代替ではなく第1選択として考慮しうるもので、患者や救急医療システムのさまざまな特徴に基づいた血管アクセスの最適な意思決定プロセスを検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2024年7月23日号掲載の報告。