呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:51

侵襲的⼈⼯呼吸を要したCOVID-19患者は退院半年後も健康状態が不良

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化してICUで長期にわたる侵襲的人口呼吸(IMV)を要した患者は、退院後6カ月経過しても、身体的な回復が十分でなく、不安やふさぎ込みといった精神症状も高率に認められることが明らかになった。名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学分野の春日井大介氏らの研究結果であり、詳細は「Scientific Reports」に9月4日掲載された。  IMVの離脱後には身体的・精神的な後遺症が発生することがある。COVID-19急性期にIMVが施行された患者にもそのようなリスクのあることが、既に複数の研究によって明らかにされている。ただし、それらの研究の多くはICU退室または退院直後に評価した結果であり、かつ評価項目が限られており、COVID-19に対するIMV施行後の長期にわたる身体的・精神的健康への影響は不明。春日井氏らは、同大学医学部附属病院ICUに収容されたCOVID-19患者を対象とする前向き研究により、この点を検討した。

ステロイド処方医は知っておきたい、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドライン改訂

 『グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023』が8月に発刊。本書は、ステロイド薬処方医が服用患者の骨折前/骨密度低下前の管理を担う際に役立ててもらう目的で作成された。また、ステロイド性骨粗鬆症の表現にはエストロゲン由来の病態も含まれ、海外ではステロイド性骨粗鬆症と表現しなくなったこともあり、“合成グルココルチコイド(GC)服用による骨粗鬆症”を明確にするため、本改訂からグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症(GIOP)と表記が変更されたのも重要なポイントだ。9年の時を経て治療薬に関する膨大なエビデンスが蓄積された今回、ガイドライン作成委員会の委員長を務めた田中 良哉氏(産業医科大学第一内科学講座 教授)に、GIOPにおける治療薬の処方タイミングや薬剤選択の方法などについて話を聞いた。

重症コロナ患者に対するスタチンとビタミンCの治療効果、対照的な結果に

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象に、広く使用されている安価なスタチン系薬のシンバスタチンとビタミンCのそれぞれの有効性を調べた2件の臨床試験で、大きく異なる結果が示された。これらの試験は感染症の患者を対象とした進行中の国際共同研究「REMAP-CAP(Randomised, Embedded, Multi-factorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia)」の一環で実施され、スタチン系薬に関する試験の詳細は「The New England Journal of Medicine(NEJM)」、ビタミンCに関する試験の詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」にいずれも10月25日掲載されるとともに、欧州集中治療医学会(ESICM 2023、10月21~25日、イタリア・ミラノ)でも発表された。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法は日本人でもPFS改善(FLAURA2)/日本肺癌学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。

ファイザーのコロナワクチン、インフルワクチンと同時接種の有効性は?

 ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)と季節性インフルエンザワクチンを同時に接種した場合、別々に接種した場合と比べて有効性に差があるかを、米国の18歳以上の約344万人を対象に、米国・ファイザー社のLeah J. McGrath氏らの研究グループが調査した。その結果、コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種は、それぞれ単独で接種した場合と比較して同等の有効性があることが示された。JAMA Network Open誌2023年11月8日号に掲載。  本研究では、2022年8月31日~2023年1月30日に、ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)のみ、インフルワクチンのみ、または両方を同日接種した、米国の民間医療保険に加入している18歳以上の344万2,996人を対象に、後ろ向き比較試験を実施した。1価ワクチンまたは他社の新型コロナワクチン接種者は除外した。65歳以上は、強化型インフルワクチン接種者のみを対象とした。主な転帰および評価基準は、COVID-19関連およびインフルエンザ関連の入院、救急(ED)や緊急診療(UC)の受診、および外来受診とした。ワクチン接種群間の残存バイアスを検出するため、尿路感染と不慮の傷害の2つのネガティブコントロールアウトカム(NCO)を評価した。

進行胸膜中皮腫、化学療法+ペムブロリズマブでOS延長/Lancet

 進行性胸膜中皮腫患者の治療において、標準治療的化学療法のプラチナ+ペメトレキセドへのペムブロリズマブの上乗せは、忍容性は良好で、全生存(OS)を有意に改善した。カナダ・Cross Cancer InstituteのQuincy Chu氏らが、カナダ、イタリア、フランスの51病院で、440例を対象に行われた第III相の国際非盲検無作為化試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は「本レジメンは、未治療の進行性胸膜中皮腫に対する新たな治療選択肢である」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

妊婦禁忌のコロナ治療薬は慎重に処方・調剤を、5団体が合同声明文を発表

 妊婦にとって禁忌とされる新型コロナウイルス感染症の治療薬が処方・調剤され、その後に患者が妊娠していることが判明した事例が多数報告されていることから、11月14日付で、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本産科婦人科学会、日本医師会、日本薬剤師会の5団体は、診療に携わる医療関係者および治療を受ける女性患者のそれぞれに向けて合同声明文を発表した。  現在承認されている経口コロナ治療薬は、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)、ニルマトレビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)である。そのうち、モルヌピラビルとエンシトレルビルは、動物実験で催奇形性や胚・胎児致死などが認められているため、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与が禁忌となっている。

EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法で脳転移巣の病勢進行リスクを42%低下(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは2023年11月1日付のプレスリリースにて、第III相FLAURA2試験の探索的解析において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)と化学療法の併用療法はオシメルチニブ単剤療法と比較して、ベースライン時に脳転移を有していたEGFR遺伝子変異陽性の転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者(本臨床試験に参加した患者の40%)における中枢神経系(CNS)の無増悪生存期間(PFS)を42%改善したと発表した。本結果は、10月21日にスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。

赤ワインやコーヒーがコロナ重症化リスクを増大

 いくつかの食習慣と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染感受性や入院・重症化リスクとの間には因果関係があり、とくに赤ワイン摂取は入院と重症化のいずれのリスクも有意に増大させることが、中国・Yantai Yuhuangding HospitalのXiaoping Li氏らのメンデルランダム化研究により明らかになった。British Journal of Nutrition誌オンライン版2023年11月6日号掲載の報告。  食習慣とCOVID-19リスクとの関連は数多くの観察研究によって報告されている。しかし、交絡変数や研究の限界のためその関連はまだ不明確であり、より厳密なデザインの研究が求められていた。そこで研究グループは、メンデルランダム化研究を実施し、食習慣とCOVID-19の感受性、入院・重症度の関連を推定した。解析は逆分散加重法を主要な方法として用い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

毎年9%死亡者が増加する人獣共通感染症の行方/ギンコ・バイオワークス

 古くはスペイン風邪、近年では新型コロナウイルス感染症のように、歴史的にみると世界的に流行する人獣共通感染症の人への感染頻度が、今後も増加することが予想されている。そして、これらは現代の感染症のほとんどの原因となっている。人獣共通感染症の人への感染の歴史的傾向を明らかにすることは、将来予想される感染症の頻度や重症度に関する洞察に資するが、過去の疫学データは断片的であり分析が困難である。そこで米国・カルフォルニア州のバイオベンチャー企業ギンコ・バイオワークス社のAmanda Meadows氏らの研究グループは、広範な疫学データベースを活用し、人獣共通感染症による動物から人に感染する重大な事象(波及事象)の特定のサブセットについて、アウトブレイクの年間発生頻度と重症度の傾向を分析した。その結果、波及事象の発生数は毎年約5%、死亡数は毎年約9%増加する可能性を報告した。BMJ Glob Health誌2023年11月8日号に掲載。