ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:312

鼻炎の成人は喘息発症リスクが高い

鼻炎は、アトピー素因の有無にかかわらず成人期発症の喘息の強力な予測因子であることが、地域住民ベースのプロスペクティブな縦断的研究で明らかとなった。喘息とアレルギー性鼻炎の密接な相関がいくつかの疫学および臨床研究で示されているが、その関連の本質はいまだ解明されていないという。フランス・国立保健医療研究所(INSERM)疫学部のRafea Shaaban氏が、Lancet誌2008年9月20日号で報告した。

小児喘息の新たなリスク因子を同定か:ISAACプログラム第III相試験

1歳になる前にアセトアミノフェン(別名パラセタモール)を使用すると、6~7歳時の喘息、鼻結膜炎、湿疹のリスクが増大することが、20万人以上の小児の横断的研究で明らかとなった。喘息発症のリスク因子の検討は数多く行われてきたがいまだ明確なエビデンスはなく、胎生期にアセトアミノフェンに曝露すると小児期および成人期の喘息発症リスクが高まる可能性が指摘されていた。ニュージーランド医学研究所のRichard Beasley氏が、Lancet誌2008年9月20日号で報告した。

CTコロノグラフィの精度は大きな病変でも検出率90%

マルチスライスCTを使ったCTコロノグラフィ(CTC)は「仮想内視鏡」などと呼ばれ、内視鏡やバリウムの挿入が不要なため、結腸直腸癌のスクリーニングにおける新たな非侵襲性の選択肢として注目されている。しかしながら、平坦な早期癌や無症候性の小さな病変検出には精度に難があるのではと言われていたが、エビデンスデータを求めてメイヨー・クリニックのC. Daniel Johnson氏らが精度について調査を行っている。NEJM誌2008年9月18日号より。

3人に1人が尿失禁など骨盤底障害:米国女性

骨盤底障害(尿失禁、便失禁、骨盤臓器脱)は多くの女性で発症する。ユタ大学医学部産婦人科のIngrid Nygaard氏ら骨盤底障害ネットワークの研究グループは、これまで米国において報告されていなかった、集団ベースのサンプルから導き出された多発性骨盤底障害に関する推定有病率の調査を行った。その結果、3人に1人がなんらかの骨盤底障害を有していると推定されることが報告されている。JAMA誌2008年9月17日号掲載より。

食器や製缶の防蝕剤ビスフェノールAは糖尿病・心血管系疾患のリスク要因?

ビスフェノールA(BPA)は、食品や飲みもののプラスチック(ポリカーボネート樹脂製)容器や缶内面の防蝕塗装に広く使われているエポキシ樹脂である。溶出したBPAが動物に及ぼす影響についてはエビデンスが示されており、ヒトにおいても低レベルの長期曝露によって健康被害が生じるおそれが指摘されている。本論は英国ペニンシュラ医科大学のIain A. Lang氏らによる米国人を対象とした横断研究の結果。JAMA誌2008年9月17日号に掲載された。

医療のIT化がもたらす効果:イギリス

イギリスではNIHの主導で医師オーダーエントリーシステムと放射線画像保存伝送システムの導入が進められており、ここ10年で推計20億ポンドがこの事業に投下されている。そのため、医療へのIT導入が医療の質の向上と、検査オーダーの減少など運営上の効率化をもたらしたかどうかが大きな関心事となっている。そこでブリストル大学のSimon Collin氏らのグループが通常診療で収集した患者レベル・データを用いて、システム導入前後の比較対照試験を行った。BMJ誌2008年8月14日号より。

アジア系医学生に落ちこぼれが多い理由

イギリスの医学生のうち約30%の出自は民族・人種的に白人以外の少数派で、彼ら少数派の医学生および医師に対する評価は、白人出自の者と比較して平均以下である。類似の報告はアメリカ、オーストラリアでも報告され、アメリカでは民族・人種的な「ステレオタイプの脅威」によるものと説明されている。この理論を当てはめることでイギリスにおいても、民族的に少数派の落ちこぼれ医学生の背景にある民族的なステレオタイプを調査する質的研究が、ロンドンの医学教育アカデミックセンターのKatherine Woolf氏らによって行われた。BMJ誌2008年8月18日号より。

小児ケアの質はヘルスワーカーの訓練期間の長さで異なるか?

Integrated Management of Childhood Illness(IMCI)の訓練は、ヘルスワーカーの訓練の期間の長さやレベルにかかわらず、小児のケアにおいてほぼ同等の質をもたらすことが、中~低所得の4ヵ国における1次医療施設のデータ解析で判明した。小児死亡率の高い国は、質の高いヘルスワーカーが不足している傾向がある。一方、ヘルスワーカーのケアの質を評価した高度なエビデンスはほとんどないという。ペルー・サンマルコス国立大学のLuis Huicho氏が、Lancet誌2008年9月13日号で報告した。

周産期うつ病に認知行動療法に基づく介入は有効か:パキスタンの場合

地域のプライマリヘルスワーカーによる認知行動療法に基づく心理学的介入は、周産期うつ病の治療として有効なことが、パキスタンで実施された無作為化試験で明らかとなった。周産期うつ病の発症率は高く、障害を引き起こしたり幼児の発達障害の原因となりうるため、その治療は公衆衛生学上の優先課題だという。イギリスLiverpool大学地域コミュニティ行動科学科のAtif Rahman氏が、Lancet誌2008年9月13日号で報告した。

膝半月板損傷は一般的な加齢変化で膝症状とは関連しない

膝のMRI画像診断は、原因不明の膝症状がある患者にしばしば行われる。そして半月板損傷が見つかると普通、症状はそれらに起因するものとされるが、半月板損傷の有病率と、膝症状やX線撮影の所見に基づく変形性膝関節症を伴う半月板断裂との関連については十分なデータが示されていない。米国・ボストン医科大学のMartin Englund氏らは、マサチューセッツ州住民を対象にその関連について調査を行った。NEJM誌2008年9月11日号より。

変形性膝関節症の治療に関節鏡視下手術を併用しても利益なし

変形性膝関節症の治療に関節鏡視下手術を併用することは広く行われているが、その有効性を支持するエビデンスは乏しい。カナダ・西オンタリオ大学のAlexandra Kirkley氏らは、中等度から重度の変形性膝関節症患者を対象に、関節鏡視下手術の単一施設無作為化比較試験を行った結果、「理学療法と薬物療法に関節鏡下手術を加えても、それによる利益は生じない」と報告した。JAMA誌2008年9月11日号より。

オンコール時のインターンは29.9時間勤務、睡眠2.8時間

臨床研修中のレジデントの長時間勤務が、患者への有害なミスにつながるとの指摘を受けて、レジデントの勤務時間をさらに規制することが検討されているが、米国・シカゴ大学医学部のVineet M. Arora氏らは、研修初年度のインターンについても「インターンのオンコール(待機当番)勤務は、睡眠不足と長時間勤務および教育活動への不参加に関連する」と警鐘を鳴らしている。JAMA誌2008年9月10日号より。

低用量アスピリンは、認知機能に影響を及ぼさない

中高年の認知機能低下には多発梗塞性など心血管疾患が関与しているが、ならば抗血栓作用のあるアスピリンを投与することで認知機能低下を食い止められるのではないか。もしくはアスピリン投与が脳出血を促し悪化させる作用があるかもしれない。適度に心血管リスクが増した無症候性アテローム性動脈硬化症患者に対するアスピリン投与の効果を評価する試験(AAA試験:aspirin for asymptomatic atherosclerosis trial)研究グループによる無作為化試験の結果が、BMJ誌2008年9月1日号で報告された。

併用HRTは、閉経後女性の健康QOLを改善する:WISDOM

エストロゲンとプロゲストゲンの併用ホルモン補充療法(併用HRT)は、「血管運動症状(ほてり)や性機能、睡眠障害を改善する効果がある」とのWISDOM研究グループによる報告が、BMJ誌2008年8月21日号に掲載された。WISDOM(women’s international study of long duration oestrogen after the menopause)は、HRT療法の長期にわたる効果とリスクを評価する無作為化試験で、心血管疾患、骨折、乳癌を主要臨床転帰とし健康QOLについても評価が行われた研究。1999年に始まったが2002年に、当時発表された「women’s health initiative trial in 2002」の結果(心血管疾患への長期的効果はない)の影響もあり試験は中断され、健康QOLについても疑問符がつけられていた。

重症肺炎患児は1次医療施設で管理可能か:修正IMCIガイドライン

総合的小児疾患管理(integrated management of childhood illness; IMCI)のガイドラインを適切なトレーニングや監督の下に地域の実情に合わせて適応すれば、1次医療施設で重症肺炎患児の安全で効果的な管理が可能になることが、バングラデシュでの調査で明らかとなった。IMCIガイドラインでは重症肺炎患児は高次病院への紹介が推奨されているが、バングラデシュでは多くの高次病院が適切なケアを十分にできる状態にないため紹介された患児のほとんどが実際には治療を受けていないという。下痢性疾患研究国際センターのEnayet K Chowdhury氏が、Lancet誌2008年9月6日号(オンライン版2008年8月18日号)で報告した。

ivabradineによる心拍低下療法の心予後改善は?:BEAUTIFUL試験

 If電流阻害薬ivabradineは、安定型冠動脈疾患および左室収縮機能障害患者の心臓の予後を改善しないが、心拍数が≧70拍/分の患者では冠動脈疾患の発症を低下させることが、大規模な無作為化試験(BEAUTIFUL試験)で明らかとなった。安定型冠動脈疾患、左室収縮機能障害はいずれもイベント発生率が高く、安静時の高心拍数は冠動脈リスク因子に影響を及ぼす可能性がある。ivabradineは洞房結節のIf電流を阻害することで心拍を低下させるが、他の心機能には影響を及ぼさないという。イギリス・王立Brompton病院のKim Fox氏が、Lancet誌2008年9月6日号(オンライン版2008年8月29日号)で報告した。

肝移植のための緊急性の指標に血清ナトリウム濃度も

現行の肝臓移植ガイドラインでは、移植用臓器は死亡リスクが最も高い患者に提供されることになっている。米国では肝移植のための移植片は医学的な緊急性に基づいて配分されるが、その緊急性は2002年からModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアを基に判定されている。MELDスコアは短期間の予後予測に使われるもので、血清ビリルビン濃度、プロトロンビン時間、血清クレアチニン濃度の3つを指標とし、スコア40以上で3ヵ月後の死亡率80%以上と判定するが、さらに最近、肝硬変患者にとって血清ナトリウム濃度が重要な予後因子であることが認められつつあり、MELDスコアとの関係が議論されている。本論は、メイヨー・クリニック医科大学のW. Ray Kim氏らの研究グループによる、血清ナトリウム濃度の指標としての有用性についての報告。NEJM誌2008年9月4日号より。

植込み型除細動器が作動するとその後の死亡リスクが高い

致命的な初回不整脈イベントを防ぐ一次予防を目的として植込み型除細動器(ICD)を装着した心不全患者は、ICDの作動による電気ショックを受ける可能性がある。ICD治療の長期予後に関する研究を行っていたワシントン大学(米国)のJeanne E. Poole氏らは、適切・不適切を問わず電気ショックを受けた患者の死亡リスクは、電気ショックを受けなかった患者より大幅に高くなることを報告している。NEJM誌2008年9月4日号より。