ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:313

前期破水妊婦に対する抗生物質投与は子どもへの影響はない:ORACLE Children I試験

前期破水妊婦に対する抗生物質の投与は、その子どもの7歳時の健康にはほとんど影響を及ぼさないことが、イギリスLeicester大学生殖科学のS Kenyon氏らが実施したORACLE Children I試験で明らかとなった。ORACLE試験は妊婦への抗生物質投与が早産児に及ぼす影響を検討するもの。早産児は脳性麻痺など重大な障害のリスクが高く、妊娠期間が短くなるほどリスクは増大する。障害のない早産児でも、後年、多くが行動障害や学習困難をきたすという。Lancet誌2008年10月11日号(オンライン版2008年9月17日号)掲載の報告。

2型糖尿病の強化血糖コントロールのベネフィットは10年間持続:UKPDS

英国糖尿病前向き研究(UKPDS)では、試験期間中に登録患者を従来の食事療法群と強化血糖療法群に割り付けた結果、強化療法群のほうが血糖値は改善されることが示された。この効果と差異が試験終了後も維持されるかどうか、長期間追跡調査し検証していたオックスフォード大学チャーチル病院の糖尿病研究班Rury R. Holman氏らは「血糖値の差異は1年で消失する。しかし微小血管のリスク低下は10年後も継続しており、心筋梗塞と全死因死亡のリスク低下をもたらしている」と報告した。NEJM誌2008年10月9日号(オンライン版2008年9月10日号)より。

2型糖尿病の血圧コントロールによるベネフィットは試験後2年で消失:UKPDS

英国糖尿病前向き研究(UKPDS)では、試験期間中に登録患者を厳格な血圧コントロールと緩やかな血圧コントロールに割り付けた結果、厳格コントロール群では合併症リスクが有意に低下することが示された。この差異が試験終了後も維持されるかどうか、登録患者を長期間追跡調査し検証していたオックスフォード大学チャーチル病院の糖尿病研究班Rury R. Holman氏らは「早期の血圧コントロール改善は、合併症のリスク低下をもたらすが、血圧コントロールをやめてから2年以内でそのベネフィットは消失していた」と報告した。NEJM誌2008年10月9日号(オンライン版2008年9月10日号)より。

適切な終末期の説明が患者と介護者のQOLを改善

患者と、死について話すのは難しいことだが、終末期に関して適切な説明を行えば、死の直前までの積極的治療を減らし、より早期のホスピス照会につながること。ホスピス滞在期間が長いほど、患者および介護者のQOLは良好であったとする、米国ボストンのダナ・ファーバー癌研究所のAlexi A. Wright氏らによる報告が、JAMA誌2008年10月8日号に掲載された。

下肢深部静脈血栓症検出は簡便な2ポイント超音波検査でも十分

 下肢深部静脈血栓症(DVT)が疑われる患者は通常、近位静脈超音波検査(2ポイント)か、全深部静脈システムのカラードップラー超音波検査(下肢全体)で評価されるが、イタリア・Conegliano市民病院のEnrico Bernardi氏らは「両者の診断能は変わらない」と報告した。JAMA誌2008年10月8日号より。  前者の診断法は簡便だが、後者は熟練したオペレーターが必要なため、主に就業時間内しか利用できない。しかしこれまで、両検査法の診断能を評価したエビデンスはなかった。本研究は、下肢DVT発現の疑いありと診断された外来患者2,465例を対象とした、前向き無作為多施設共同試験で、データは2003年1月1日から2006年12月21日にかけて、イタリア国内の14ヵ所の大学、私立病院の超音波検査室で集められた。患者は、2007年3月20日の検査完了まで3ヵ月間追跡され、初回診断から症候性静脈血栓塞栓症の発生率を主要評価項目とした。

ロスバスタチンは慢性心不全にも有効か?:GISSI-HF試験

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)であるロスバスタチンは、慢性心不全において安全に投与可能であるが、臨床的な予後改善効果はないことが、イタリアで実施されたGISSI-HF試験で明らかとなった。スタチンは慢性心不全にも有効な可能性があることが、大規模な観察試験、小規模なプロスペクティブ試験および無作為化試験の事後解析で示されていたが、これらの試験は方法論的に弱点があったという。Lancet誌2008年10月4日号(オンライン版8月31日号)掲載の報告。

n-3多価不飽和脂肪酸は慢性心不全にベネフィットをもたらすか?:GISSI-HF試験

慢性心不全に対する標準治療へのn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の追加投与は、簡便かつ安全に施行可能であり、中等度のベネフィットをもたらすことが、イタリアで実施されたGISSI-HF試験で実証された。n-3 PUFAは不整脈などのアテローム血栓性心血管疾患に対して良好な効果を発揮することが、いくつかの疫学研究および実験的な研究で示されていた。Lancet誌2008年10月4日号(オンライン版2008年8月31日号)掲載の報告。

持続血糖モニタリングは成人患者の血糖管理を改善

1型糖尿病の血糖管理のために簡便な持続血糖モニタリング装置が開発されている。強化治療を受けている患者にとっての装置の有効性を検証していた米国の若年性糖尿病研究基金・持続血糖モニタリング研究グループ(The Juvenile Diabetes Research Foundation Continuous Glucose Monitoring Study Group)のWilliam V. Tamborlane氏らは、「成人患者の血糖管理は改善されたが、小児や青年患者にも有効かどうかは、さらに研究が必要」と報告した。NEJM誌2008年10月2日号(オンライン版2008年9月8日号)より。

maravirocは治療歴のあるR5 HIV-1患者のウイルスを抑制

CCケモカイン受容体5(CCR5)拮抗剤のmaravirocは、新しい抗レトロウイルス薬である。既存の抗レトロウイルス薬による治療歴のある患者を対象とした、maravirocと至適療法を比較する多国間二重盲検プラセボ試験(第3相)「MOTIVATE 1」(カナダ、米国)「MOTIVATE 2」(オーストラリア、ヨーロッパ、米国)が行われ、参加した米国・Weill-Cornell Medical College(ニューヨーク市)のRoy M. Gulick氏らは、「maravirocはHIV-1ウイルスを有意に抑制し、T細胞を増やす」と報告した。NEJM誌2008年10月2日号より。

医薬品研究をめぐる新聞報道に問題あり、一因に記者の無知

ニュースメディアは、患者はもちろん医師にとっても、医薬品研究に関する重要な情報源となっている。しかしニュース記事では、その研究が製薬企業の資金提供を受けて行われたものかどうか、あるいは、記事の中で医薬品の一般名とブランド名が用いられる頻度がどれくらいなのか、すなわち医薬品研究にありがちなバイアスについて、これまで明らかにされていなかった。ハーバード大学医学部のMichael Hochman氏らの研究グループが、医薬品研究に関するニュース記事について、製薬企業による資金提供の有無に関する情報提供、医薬品の一般名使用の頻度を評価するとともに、これらの問題に対する新聞編集者の考え方を調査検討した。JAMA誌2008年10月1日より。

炭疽菌ワクチン接種は筋注のほうが有益

BioThraxは、現在、米国で唯一公認の炭疽菌ワクチン(AVA)であり皮下注4回接種が公認療法となっている。このワクチンについて米国議会は1999年、米国疾病管理センター(CDC)に対して安全性と有効性に関する調査を行うよう指示した。調査にあたったCDC炭疽菌ワクチン調査プログラム専門調査委員会は、「筋注のほうが安全性が高く、免疫獲得もすみやか」とする報告を寄せた。JAMA誌2008年10月1日号より。

小児の解熱にパラセタモール+イブプロフェン併用が経済的:PITCH

本論は、イギリスの国民医療保健サービス(NHS)で、就学前の小児の解熱によく処方されるパラセタモール(別名アセトアミノフェン)とイブプロフェンに関する有効性等の比較研究(PITCH:Paracetamol plus ibuprofen for the treatment of fever in children)の報告の一つ。Sandra Hollinghurst氏ら効果とコストについて分析結果で、「両剤の併用がコスト面では最も効果が大きい」と報告した。 BMJ誌2008年9月9日号に掲載された。

小児の解熱にはまずイブプロフェンの単独投与が効果的:PITCH

発熱は就学前の小児によく見られる症状だが、本人にとっては深刻で、親には不安を与え、医療費全体の増加につながる。イギリスでは毎年、就学前の小児の7割が発熱に見舞われ、4割が医療機関を受診し、しばしばパラセタモール(別名アセトアミノフェン)とイブプロフェンが併用または単独で投与されるが、これまで各処方のエビデンスはなかった。そこで、各薬剤の単独投与と併用した場合の効果を比較研究(PITCH)したブリストル大学のAlastair D Hay氏らは、「子供にはまずイブプロフェンを与え、24時間経過したら両剤併用を」と報告した。BMJ誌2008年9月2日号(オンライン版7月4日号)より。

テルミサルタン、有意な予後改善効果はない:TRANSCEND試験

アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタンは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に不耐用な心血管疾患患者で良好な耐用性を示すものの有意な予後改善効果はないことが、カナダMcMaster大学のSalim Yusuf氏らTRANSCEND試験の研究グループによって報告された。ACE阻害薬は主要な心血管イベントを抑制するが患者の約20%は耐用性がない。不耐用のおもな原因は咳嗽で、特に女性やアジア人に不耐用例が多いという。Lancet誌2008年9月27日号(オンライン版2008年8月31日号)掲載の報告。

新開発のbiolimus溶出ステント、従来ステントと同等の有用性示す

冠動脈ステント留置術が適用とされる慢性安定性冠動脈疾患や急性冠症候群では、新たに開発された生体分解性ポリマー製のbiolimus(高脂溶性の半合成シロリムス・アナログ)溶出ステントが、従来の耐久性ポリマー製のシロリムス溶出ステントと同等の安全性および有効性を示すことが、ヨーロッパで実施された無作為化試験で明らかとなった。生体分解性ポリマー製biolimus溶出ステントは初期研究で有望な結果が報告されていた。スイスBern大学病院循環器科のStephan Windecker氏が、Lancet誌2008年9月27日号(オンライン版2008年9月1日号)で報告した。

経皮的冠動脈インターベンション施術は薬剤溶出性ステントに軍配:大規模長期試験結果

 急性心筋梗塞への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における、薬剤溶出性ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)の使用に関する大規模長期比較研究の報告。ハーバード大学付属ブリガム&ウィメンズ病院(米国)のLaura Mauri氏らによるもので、「DESはBMSより2年死亡率、血行再建術再施行率ともに低かった」と報告している。NEJM誌2008年9月25日号にて掲載。

脳梗塞発症3~4.5時間後のrt-PA静注療法は有効だが……

急性期脳梗塞に対し唯一承認された治療法は、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法だが、発症から3時間以上経過した後の投与については、有効性と安全性が確立されていなかった。ドイツ・ハイデルベルク大学のWerner Hacke氏らECASS(European Cooperative Acute Stroke Study)研究グループは、発症後3~4.5時間に投与されたrt-PAの有効性と安全性を検証した結果、「臨床転帰は改善するが、症候性頭蓋内出血を伴う所見が高頻度にみられる」と報告した。NEJM誌2008年9月25日号より。