日本発エビデンス|page:83

インスリン療法の脱落理由、日本人における特徴は?

 日本の糖尿病患者と医師が認識しているインスリン療法の障壁を調査するために、京都大学の原島 伸一氏らは、8ヵ国が参加したGlobal Attitude of Patients and Physicians in Insulin Therapy(GAPP)スタディのサブ解析を実施した。その結果、インスリン療法を受けている日本人患者の多くが、おそらく低血糖への恐れやライフスタイルのために脱落する、もしくは治療を順守しないことがわかった。著者らは「患者のライフスタイルを妨げず、低血糖リスクを減少させるインスリン療法が必要」としている。Expert opinion on pharmacotherapy誌2017年1月号に掲載。

FXa阻害剤の抗炎症作用:日本のNVAF患者

 非弁膜症性心房細動(NVAF)例に対する第Xa因子(FXa)阻害剤の投与は、血液凝固マーカーだけでなく、血管炎症マーカーであるペントラキシン3(PTX3)も改善させることが、横浜栄共済病院の加藤 大雅氏らによる研究で明らかになった。これらのマーカーの変化が将来の心血管イベントリスクの低下と関連するかどうかを評価するためには、さらに大規模な前向き研究が必要である。Heart and vessels誌オンライン版2017年3月10日号の報告。

僧帽弁閉鎖不全へのMitraClip、日本できわめて良好な初期成績~日本循環器学会

 重度の僧帽弁不全症(MR)への新たな治療法として期待されている新規デバイスMitraClip(アボットバスキュラージャパン社)の有効性と安全性に関する30日結果が、3月17~19日に金沢市で開催された第81回日本循環器学会学術集会にて発表された。本試験には全国6施設における、中等度~重度(3+)もしくは重度(4+)の閉鎖不全症(DMR)、または、機能性僧房弁閉鎖不全症(FMR)で、LVEF≧30%、STSスコア≧8%の外科的手術が難しい患者が参加した。クリップでの処置が不適な病変を有する患者や予後が1年未満である患者などは除外された。被験者の平均年齢は80歳超であり、平均STSスコアが約10%の高リスクな層であった。

質の高い論文はここが違う~日本の無作為化比較試験

 読む価値のある論文を、アブストラクトで効率よくスクリーニングすることはできないだろうか。東京大学の米岡 大輔氏らが、どのような文章が質の高い無作為化比較試験(RCT)の指標となるのかを調べるために、日本のRCTの論文を評価したところ、質の高いRCTと質の低いRCTではアブストラクトの文章の特徴にいくつかの有意な差があることがわかった。著者らは、この結果がrisk-of-bias tool の代わりに、価値のある論文をすばやくスクリーニングする新たな判断基準として使用できるとしている。PLOS ONE誌2017年3月9日号に掲載。

2型糖尿病患者の動脈壁硬化に関わる因子

 2型糖尿病患者において、従来の心血管リスク因子や生活習慣は動脈壁硬化と関連するが、それらの因子を調整後も実際に動脈壁硬化と関連するかどうかは不明である。順天堂大学代謝内分泌学講座の研究グループが、日本人の2型糖尿病外来患者で、上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)に関連する因子を調べたところ、従来の心血管リスク因子と生活習慣を調整後も、年齢、2型糖尿病の罹病期間、収縮期血圧、血清尿酸、尿中アルブミン排泄、睡眠の質の低下がbaPWVと関連していた。Journal of clinical medicine research誌2017年4月号に掲載。

日本成人の自殺予防に有効なスクリーニング介入:青森県立保健大

 自殺予防にスクリーニング介入が有効であることが示唆されている。しかし、中年期の自殺による死亡など、アウトカム対策への影響について報告された研究はほとんどない。青森県立保健大学の大山 博史氏らは、日本のコニュニティベースにおける介入群と対照群の自殺率の比較を行った。Psychological medicine誌オンライン版2017年2月14日号の報告。

心房細動患者のCCrとイベントの関連、日本の実臨床では?

 心房細動(AF)患者における非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の投与量調節と禁忌患者の除外のために、クレアチニンクリアランス(CCr)が広く使用されているが、AF患者のCCrと有害な臨床転帰との関連をみたリアルワールドデータはほとんどない。今回、国立病院機構京都医療センターの阿部 充氏らは、日本のAF患者の大規模前向きコホートである「伏見心房細動患者登録研究」で、CCr 30mL/分未満の患者が脳卒中/全身塞栓症および大出血などのイベントと密接に関連していたことを報告した。The American Journal of Cardiology誌オンライン版2017年1月25日号に掲載。

CKD患者に対するトルバプタン、反応予測因子は:横浜市大センター病院

 バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンは、心不全患者の利尿作用を有する。しかし、慢性腎臓病(CKD)患者におけるトルバプタンの効果に関するデータは少ない。横浜市立大学附属市民総合医療センターの勝又 真理氏らは、慢性心不全およびCKD患者に対するトルバプタンの効果をレトロスペクティブに解析した。Clinical and experimental nephrology誌オンライン版2017年2月11日号の報告。

日本人高齢者の不眠、男女間で異なる特徴:岡山大

 不眠症の患者数は、高齢化社会に伴い急速に増加している。認知機能、情動機能、ADL機能に対する不眠症の影響は十分に研究されていない。岡山大学の菱川 望氏らは、日本人高齢者の不眠の有病率や認知機能、情動機能、ADL機能に対する影響について、性別、年齢により比較した。Neurological research誌オンライン版2017年2月9日号の報告。

2型糖尿病、併存疾患ごとの超過死亡リスク

 2型糖尿病の患者は、大血管疾患・慢性腎臓病・慢性呼吸器疾患・がん・喫煙習慣を伴うことが多い。山梨大学の横道 洋司氏らは、これらを伴う2型糖尿病患者の超過死亡リスクについて、バイオバンク・ジャパン・プロジェクトのデータを用いて定量化した。その結果、慢性腎臓病・大血管疾患・慢性呼吸器疾患の既往、もしくは現在喫煙している糖尿病患者において高い死亡リスクが示された。著者らは、糖尿病の予後改善のために併存疾患の改善および禁煙の必要性を提言している。Journal of epidemiology誌オンライン版2017年2月10日号に掲載。

日本の認知症者、在院期間短縮のために必要なのは

 多くの深刻なBPSD(認知症の周辺症状)を有する認知症者の治療は、自発性にかかわらず精神科病院で行われている。日本における認知症者の平均在院期間は約2年である。症状が安定すれば退院するのが理想的ではあるものの、わが国ではBPSDが落ち着いた後でも、入院を継続するケースがみられる。神戸学院大学の森川 孝子氏らは、認知症者の精神科病院在院期間を短縮する要因を特定するため検討を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2017年2月10日号の報告。

高齢2型糖尿病、低過ぎるHbA1cは認知症リスク?

 ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病患者のQOL維持のための血糖コントロール改善の重要な指標とされているが、高齢者には低過ぎるHbA1cが害を及ぼす恐れがある。今回、金沢医科大学の森田 卓朗氏らの調査により、地域在住の高齢2型糖尿病患者において、HbA1cと要支援/要介護認定のリスクがJ字型を示すことが報告された。また、高齢の2型糖尿病患者での低過ぎるHbA1cが、認知症による後年の障害リスクに関連する可能性が示唆された。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版2017年2月11日号に掲載。

飲酒行動と喫煙行動、同じ遺伝子多型が影響?

 アルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2;rs671、Glu504Lys)およびアルコールデヒドロゲナーゼ1B(ADH1B;rs1229984、His47Arg)の遺伝子多型は、飲酒行動に強く影響することが知られている。愛知県がんセンターの正岡寛之氏らは、喫煙行動と飲酒行動が関連するというエビデンスから、ALDH2とADH1Bの遺伝子多型が喫煙開始とも関連する可能性を検証するために大規模な横断研究を行った。その結果、飲酒量や頻度のほか、これらの遺伝子多型の組み合わせにより、喫煙開始を予測しうることが示唆された。Drug and alcohol dependence誌オンライン版2017年2月1日号に掲載。

スタチンはがん死亡リスクを下げるか~日本のコホート研究

 スタチンのがん発症やがん死亡に対する予防効果については結論が出ていない。今回、山梨大学の横道洋司氏らがバイオバンク・ジャパン・プロジェクトのデータから脂質異常症患者4万1,930例を調査したところ、スタチン単独療法が全死亡およびがん死亡に対して影響し、とくに大腸がんによる死亡に予防効果を示す可能性が示唆された。Journal of Epidemiology誌オンライン版2017年2月11日号に掲載。

肺炎球菌ワクチン定期接種化で薬剤感受性への影響は?

 肺炎球菌ワクチンは小児および成人の肺炎球菌感染を減少させたが、ワクチンに含まれない血清型(non-vaccine serotype:NVT)の有病率が相対的に増加していることが報告されている。今回、東京医科大学の宮崎治子氏らの調査から、肺炎球菌ワクチンの急速な影響および血清型置換の進行が示唆された。ペニシリン非感受性のNVTによる有病率の増加が懸念され、著者らは「最適な予防戦略を立てるために肺炎球菌血清型と薬剤感受性の継続的なモニタリングが必要」と指摘している。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2017年2月1日号に掲載。

アセタゾラミド術前投与で緑内障眼の白内障術後における眼圧上昇を抑制

 経口アセタゾラミド内服による、緑内障眼の白内障術後の眼圧上昇予防効果は認められるのか。福岡県・林眼科病院の林研氏らが、その有効性と適切な投与時期について無作為化試験にて検討した。その結果、原発開放隅角緑内障(POAG)眼では水晶体超音波乳化吸引術後3~7時間に眼圧上昇が認められ、手術1時間前のアセタゾラミド経口投与は非投与および手術3時間後投与と比較して、眼圧上昇を抑制することを明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2017年1月19日号掲載の報告。

繰り返す肺炎、危険因子となる薬剤は?

 日本や高齢化が急速に進行する社会において、繰り返す肺炎(recurrent pneumonia:RP)は大きな臨床的問題である。全国成人肺炎研究グループ(APSG-J)は、わが国のRP発症率と潜在的な危険因子を調査するために、成人肺炎の前向き研究を実施した。その結果、RPは肺炎による疾病負荷のかなりの割合を占めることが示唆され、RPの独立した危険因子として、肺炎既往歴、慢性の肺疾患、吸入ステロイドや催眠鎮静薬の使用、緑膿菌の検出が同定された。著者らは、高齢者におけるRPの影響を減らすために薬物使用に関して注意が必要としている。BMC pulmonary medicine誌2017年1月11日号に掲載。