医療一般|page:137

米国で糖尿病のある妊婦の割合が5年で27%増

 米国では糖尿病のある妊婦が増加していることを示すデータが、米疾病対策センター(CDC)発行の「National Vital Statistics Reports」5月31日号に掲載された。過去5年の間に、糖尿病のある妊婦の割合は27%上昇したという。理由として、肥満者と高齢出産の増加が考えられるとのことだ。CDC傘下の国立健康統計センター(NCHS)のElizabeth Gregory氏らの研究によるもの。  Gregory氏らは、出生証明書を用いて2016~2021年に米国内で出生した全ての新生児を把握し、その母親の医療データを収集。妊娠前から存在していた糖尿病(prepregnancy diabetes mellitus;PDM)の有病率の推移を検討した。その結果、PDM症例数は2016年の3万3,829人から2021年には3万9,736人へと17%増加していた。これを出生1,000人当たりで比較すると、2016年が8.6人、2021年は10.9人であり、27%増となる。

コロナ禍において、5歳児に4ヵ月の発達遅れ/京大ほか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、学校や保育施設が閉鎖され、多くの乳幼児・子供が影響を受けた。これまで手薄だった未就学児を対象として、コロナ禍の影響を調査した京都大学医学研究科助教・佐藤 豪竜氏らによる研究結果が、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年7月10日号に掲載された。  研究者らは新型コロナ流行前から行っていた研究対象を再調査することで、コロナの影響を調べた。首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887例に対し、2017~19年に1回目の調査、2年後に2回目の調査を行った。データは2022年12月8日~2023年5月6日に解析された。

食習慣と片頭痛リスクとの関係

 片頭痛発症に対する食事の影響は知られているものの、大規模サンプルにおける片頭痛リスクと食習慣との潜在的な因果関係については、よくわかっていない。中国・山東大学のXinhui Liu氏らは、食習慣と片頭痛発症リスクとの潜在的な因果関係および片頭痛リスク因子のメディエーターの役割を明らかにするため、本研究を行った。その結果、食習慣と片頭痛リスクとの関連が認められ、一部の食物は不眠症やうつ病にも影響している可能性が示唆された。Frontiers in Nutrition誌2023年6月7日号の報告。

心肺持久力が大腸がん・肺がん・前立腺がんの発症と死亡リスクに関連

 約18万人のスウェーデン人男性を平均9.6年間追跡調査したコホート研究の結果、心肺持久力(CRF)が高いと大腸がん罹患リスクが低く、また肺がんおよび前立腺がんによる死亡リスクが低いことが示された。この結果から、これらのがんの罹患リスクおよび死亡リスクの低減に、CRFが潜在的に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。スウェーデン・The Swedish School of Sport and Health SciencesのElin Ekblom-Bak氏らが、JAMA Network Open誌2023年6月29日号に報告。  本研究は、スウェーデンにおいて1982年10月~2019年12月に労働衛生健康プロファイル評価を完了した男性を対象とした前向きコホート研究。CRFは最大下サイクルエルゴメーター試験を用いて推定した最大酸素消費量(mL/分/kg)として評価した。また、がんの罹患率および死亡率のデータは全国登録から取得した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰を用いて算出した。さらにCRFを4群(非常に低い:25以下、低:25~35、中等度:35~45、高:45超)に層別化し、非常に低い群を基準としてHRと95%CIを算出した。

治療抵抗性高血圧の有病率は意外に高い

 高血圧患者の10人に1人近くが見かけ上の治療抵抗性高血圧(apparent resistant hypertension;aRH)の基準を満たすが、aRHに対する治療は医療提供者により大きく異なることが、新たな研究で明らかにされた。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のJoseph Ebinger氏らによる研究で、「Hypertension」に6月26日掲載された。  Ebinger氏らは、3つの大規模なヘルスケアシステムの電子健康記録(EHR)を用いて、登録患者242万468人のデータを解析した。その結果、これらの患者の55.6%(134万3,489人)が高血圧の基準を満たし、そのうちの8.5%(11万3,992人)はaRHの基準も満たすことが明らかになった。また、これらのaRH患者は合併症を有していることが多く、特に、糖尿病や心不全の有病率が高いことも示された。さらに、血圧がコントロールされているaRH患者では、コントロール不良のaRH患者に比べて、β遮断薬、利尿薬、硝酸薬が処方されることが多く、特にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の処方は、前者で35.4%、後者で10.4%と大きな差があることも判明した。

徒歩で生活しやすいデザインの地域は人々の交流を高める

 徒歩で生活しやすい地域に住んでいる人は、移動に車が必要な地域に住んでいる人に比べて、近隣住民との交流が多く、コミュニティー意識も強いことが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)Herbert Wertheim School of Public Health and Human Longevity ScienceのJames F. Sallis氏らによるこの研究の詳細は、「Health & Place」7月号に掲載された。  米国の公衆衛生政策を指揮する医務総監のVivek Murthy氏は2023年5月に、「孤独や孤立は高齢者での心疾患リスクを29%、脳卒中リスクを32%、認知症リスクを50%、早期死亡リスクに至っては60%以上増加させる要因となる」と述べた。そして、この公衆衛生危機への対応として、人と人とのつながりを促進する環境デザインにより社会基盤を強化することを推奨している。

妊婦の親子関係の不良は妊娠中高血糖の予測因子

 両親との親子関係にあまり満足していない妊婦は、妊娠中に高血糖を来すリスクが高いというデータが報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Pregnancy and Childbirth」に4月4日掲載された。藤原氏は、「妊婦健診の際に親子関係を尋ねることが、妊娠中高血糖のリスク評価に役立つのではないか」と述べている。  妊娠中に血糖値の高い状態が続いていると、難産や巨大児出産などのリスクが高くなるため、妊娠中の積極的な血糖管理を要する。また、妊娠以前から糖代謝異常のリスク因子を有する女性は、妊娠糖尿病などの妊娠中高血糖(HIP)のリスクが高く、その糖代謝異常のリスク因子の一つとして、子ども期の逆境体験(ACE)が挙げられる。そのためACEのある女性は、HIPになりやすい可能性がある。とはいえ、妊婦健診などにおいて全妊婦のACEの有無を把握することは現実的でない。

スタチン、ゾコーバなど、重大な副作用追加で添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品(スタチン)、エンシトレルビルなどの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  国内副作用症例において、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められた。また、公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例など、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていることを踏まえ、改訂が適切と判断された。

双極性障害女性患者における抗精神病薬使用後の乳がんリスク

 統合失調症女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連は、さまざまな疫学データより報告されている。しかし、双極性障害女性患者を対象とした研究は、これまであまり行われていなかった。香港大学のRachel Yui Ki Chu氏らは、双極性障害女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連を調査し、統合失調症との比較を行った。その結果、統合失調症女性患者では、第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連が認められ、双極性障害女性患者では、第1世代および第2世代抗精神病薬のいずれにおいても、乳がんリスクとの関連が認められた。Psychiatry Research誌8月号の報告。

サプリメント摂取の最大目的は「健康増進」/アイスタット

 サプリメントは私たちの生活に欠かせないアイテムとなっている。ちょっとした栄養補給や健康の増進、体質改善などに摂取されているが、一般的なサプリメントの摂取について、摂取する目的やその理由、効果や安全面などで何か傾向はあるのであろうか。株式会社アイスタットは6月22日に「サプリメント」に関するアンケートを行った。  アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員20~69歳の300人が対象。

TTP診療ガイド2023改訂のポイント~Minds方式の診療ガイドラインを視野に

 「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループの専門家によるコンセンサスとして2017年に作成され、2020年に部分改訂された、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診療ガイドライン、『血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023』が7月に公開された。2023年版では、Minds方式の診療ガイドラインを視野に、リツキシマブに対してclinical question(CQ)が設定され、エビデンスや推奨が掲載された。 ・リツキシマブの推奨内容の追加・変更とCQの掲載 ・カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択に ・抗血小板薬、FFP輸注に関する記述を追加 ・FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述を追加 ・増悪因子に関する記述を追加

男性ではY染色体の喪失で膀胱がんの増殖が加速?

 男性では、加齢に伴い毛髪や筋肉の張りが失われ、視力や聴力が低下していくだけでなく、男性を生物学的に男性たらしめているY染色体そのものも徐々に失われていく。こうした中、米シダーズ・サイナイ医療センターのDan Theodorescu氏らが、加齢に伴うY染色体の喪失はがん細胞が免疫の攻撃を回避するのに役立ち、その結果、Y染色体を喪失した男性はがんに対して脆弱な状態になり得ることを、「Nature」に6月21日報告した。研究グループは、「Y染色体の喪失とがんに対する免疫システムの反応との関連を示した初めての研究」と説明している。

孤立や孤独が寿命を縮める可能性

 孤立や孤独が寿命にかかわる可能性のあることを示唆する研究結果が報告された。研究参加者数の合計が220万人以上に及ぶ世界各国から報告された90件の研究データを統合した解析から、社会的に孤立している、または孤独を感じている人は、早期死亡のリスクが高いことが示された。ハルビン医科大学(中国)のMaoqing Wang氏、Yashuang Zhao氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Human Behaviour」に6月19日掲載された。

日本人統合失調症患者の再入院予防に対する長時間作用型注射剤のベネフィット

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬のベネフィットに関するリアルワールドでのエビデンスは、とくに日本の就労人口において限られている。ヤンセンファーマのMami Kasahara-Kiritani氏らは、雇用されている患者を含む統合失調症患者の再入院予防に対するLAI抗精神病薬の影響を評価した。その結果、日本人統合失調症患者の入院予防に対するLAI抗精神病薬のベネフィットが示唆された。LAI抗精神病薬による治療を受けた患者は、フォローアップ期間中の入院期間および再入院リスクが有意に低下することが明らかとなった。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2023年6月7日号の報告。  日本医療データセンター(JMDS)の健康保険レセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ観察的集団ベース研究を実施した。対象は、2012年4月~2019年12月にLAI抗精神病薬を処方された就労者または被扶養者の統合失調症患者。LAI処方日をインデックス日とし、ベースライン時の(インデックス日の365日前)1年間のフォローアップ期間中におけるすべての原因による入院、精神医学的入院、統合失調症関連の入院を評価した。

ウイルス感染時の発熱による重症化抑制、腸内細菌叢が関係か/東大ほか

 これまで、ウイルスに感染した場合に外気温や体温が重症度に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、東京大学医科学研究所の一戸 猛志准教授らの研究グループは、さまざまな温度条件で飼育したマウスに対し、ウイルスを感染させた場合の重症度を解析した。その結果、体温の上昇によりウイルスに対する抵抗性が高まり、血中胆汁酸レベルが上昇した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血液についても解析した結果、軽症患者は中等症患者と比較して血中胆汁酸レベルが高かった。これらのことから、発熱により腸内細菌叢が活性化し、2次胆汁酸産生を介してウイルス感染症の重症化が予防されることが示唆された。本研究結果は、Nature Communications誌2023年6月30日号に掲載された。

GLP-1RAの上乗せが糖尿病患者のMACE、心不全リスクの低下と関連

 糖尿病患者に対する心血管疾患一次予防目的での血糖降下薬の上乗せにおいて、DPP4阻害薬(DPP4i)に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の優位性を示唆するデータが報告された。米退役軍人省テネシーバレー・ヘルスケアシステム高齢者研究教育臨床センターのTadarro L. Richardson Jr.氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に5月9日掲載された。主要心血管イベント(MACE)と心不全の発症率に有意差が認められたという。

ガスコンロの使用で血液がんリスクを高める化学物質が排出

 ガスコンロの使用によって室内の空気中のベンゼン濃度が上昇する可能性のあることが、米スタンフォード大学ドア・サステナビリティ学部のRobert Jackson氏らの研究で示された。ベンゼンは、白血病などの血液がんのリスク上昇に関連することが指摘されている化学物質だ。この研究からは、ガスコンロから排出されるベンゼンが家中に広がり、何時間も漂い続ける可能性も示唆された。この研究結果は、「Environmental Science & Technology」に6月15日掲載された。

手術中のオピオイド投与削減は患者転帰に悪影響を及ぼす

 オピオイド乱用の問題が深刻化している米国では、多くの医師が、たとえ手術中であってもオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)の投与を控えている。こうした中、このアプローチに疑問を投げかける研究結果が報告された。手術中のオピオイド投与量が多いほど、術後は短期的にも長期的にも疼痛が軽く、オピオイドの累積投与量も少なくて済むことが明らかになったのだ。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のLaura Santa Cruz Mercado氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に6月14日掲載された。

乾癬患者の健康関連QOLを評価するPROMsでの健康概念は5つのドメインに分類可能

 乾癬患者の健康関連の生活の質(QOL)を評価する既存の患者報告アウトカム尺度(PROMs)のシステマティックレビューを行ったところ、全体に通用する健康に関する概念(以下、健康概念)として5つのドメインに分類できたとする研究結果が、「JAAD International」に1月10日掲載された。  米クリーブランドクリニックのHaya A. Homsi氏らは、システマティックレビューにより乾癬患者の健康関連QOLを評価するためのPROMsを特定し、その内容や使われている表現(ポジティブ/ネガティブ/中立的)の評価を行った。

出産から5年未満の乳がん、術前化療の効果乏しく再発リスク増/日本乳癌学会

 閉経前乳がん患者を対象に、最終出産からの経過年数と術前化学療法の感受性を検討した結果、出産から5年未満に診断された患者では術前化学療法の感受性が乏しく、再発率が高かったことを、岡山大学の突沖 貴宏氏が第31回日本乳癌学会学術総会で発表した。  妊娠・出産から数年以内に乳がんと診断された妊娠関連乳がんの特徴として、腫瘍径が大きい、リンパ節転移やリンパ管侵襲が多い、HR-の割合が高い、病勢が進行した症例が多い、早期例でも遠隔再発リスクが高い、などが報告されている。しかし、妊娠関連乳がんにおける薬物療法の感受性を検討したデータは乏しい。そこで研究グループは、それらの再発率が高い理由として、最終出産からの経過年数が少ない症例は化学療法の効果が乏しいという仮説を立て、最終出産からの経過年数と術前化学療法の感受性の検討を行った。