CLEAR!ジャーナル四天王|page:81

アセチルシステインは特発性肺線維症に“効く”のか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(209)より-

特発性肺線維症に対する治療薬としてピルフェニドンが登場するまで、ステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステイン(N-アセチルシステイン:NAC)は世界的に広く用いられていた(現在も汎用されているが)。ただ、これらの薬剤もその効果は限定的であり、現時点で特発性肺線維症に対する使用を強く推奨しているガイドラインは存在しない。ただ、それでもなお「これらの薬剤が少なくとも悪影響は与えることはないだろう」という思いが臨床医の胸の内にあった。ステロイドや免疫抑制剤による日和見感染などの合併症があったとしても、炎症・線維化を抑制する効果はそれを上回るベネフィットがあると考える研究者も少なくなかった。

ニンテダニブは福音となりうるか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(208)より-

ご存じのとおり特発性肺線維症は予後不良の進行性疾患であり、年単位、早い患者であれば、月単位で肺の線維化が進行する。これに対してこれまで数々の治療が試みられてきたが、実臨床でその効果を実感できるほどの治療薬が21世紀に入ってもまだ登場していないのが現状である。

徴候と症状と心不全の入院歴でHFpEFは定義できない―ナトリウム利尿ペプチド上昇で定義したHFpEFにはスピロノラクトンが有効である可能性(コメンテーター:原田 和昌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(207)より-

左室駆出率が保持された症候性心不全(HFpEF)の有効な治療薬はまだない。抗アルドステロン薬のスピロノラクトンは、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の予後を改善することからガイドラインで推奨されている。

これでC型肝炎を安全に完全に治せる?(コメンテーター:溝上 雅史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(206)より-

今まで、C型慢性肝炎や肝硬変における根本的治療法としてはインターフェロン(IFN)ベースの治療しかなかったが、その持続的なウイルス消失(sustained virological response:SVR )は約50%で、さらに各種の高率な副作用で十分な治療を施すことができないという問題点があった。そこでHCVを直接叩く薬剤(directly acting antivirals (DAAs))が開発されたが、新規副作用や耐性株の出現があるにも関わらずそのSVRはそれほど改善されなかった。

2種類のTAVIデバイス(バルーン拡張型と自己拡張型)、優れているのはどちらか?(コメンテーター:香坂 俊 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(205)より-

2013年10月、本邦でも重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)が保険償還された。2014年5月現在、本邦で使用できるのは、バルーン拡張弁(エドワーズ社のSapien XT)のみであるが、自己拡張弁(メドトロニック社のCoreValve)に関しても治験が終了しており、近いうちに日常診療でも使用できるようになる見込みとなっている。

高血圧患者の妊娠における周産期リスク解析から学ぶこと(コメンテーター:三浦 伸一郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(204)より-

高血圧患者が妊娠した場合(慢性高血圧の妊婦)の周産期リスクには、妊娠高血圧症候群ガイドライン2009にも掲載されているように加重型妊娠高血圧腎症、常位胎盤早期剥離、small for gestational age、周産期乳児死亡率・早産率の増加が挙げられている。

「降圧薬服用患者が大幅に減る見通し、というより減らした」というほうが正確かもしれない:EBMは三位一体から四位一体へ(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(203)より-

今、世界の先進国は高齢化とともに医療費の膨張に頭を悩ませている。そのような中で、米国では2003年のJNC7から11年ぶりに2014年版ガイドラインが発表された。その中では、JNC7に比べて慢性腎臓病や糖尿病を合併高血圧、そして高齢者高血圧などの降圧目標基準が大幅に緩和された。

TAVRは外科手術より死亡リスクが低い可能性がある?(コメンテーター:許 俊鋭 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(199)より-

昨年までの高リスク大動脈弁狭窄症(AS)に対するTAVI(TAVR)と外科的AVR(SAVR)の比較検討では、早期成績(30日死亡および入院死亡率)および中期成績(3ヵ月~3年死亡率)に差はないとされてきた1)~4)。また、無作為化割り付け試験において、TAVIはSAVRに比較してstrokeや血管合併症、永久的ペースメーカー装着率、中等度以上の人工弁周囲逆流発生率が高い結果1)が出ている一方、出血の合併症はSAVRに比較してTAVIでは少ない結果が報告されている1),4)。

このstudyはnegative studyであり、また説明不足である(コメンテーター:野間 重孝 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(198)より-

本稿は論文評であってreviewではないが、多くの専門外の先生方にとってheart failure and preserved ejection fraction (HFpEF)という概念自体が大変にわかりにくいのではないかと考えるので、まずHFpEFとはどのような病態概念なのかを簡単に説明することから始めたい。

EGFR野生型の非小細胞肺がんに対するEGFR-TKIと化学療法を比較した初のメタアナリシス(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(195)より-

このメタアナリシスは、INTEREST試験、IPASS試験などの有名な試験を含む11の研究において、EGFR野生型の非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、第1世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)と通常の化学療法を比較解析したものである。

期待が大きいと失望も大きい:プラセボをおくことの重要性を教えてくれた試験。(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(194)より-

腎除神経術(RND)は治療抵抗性高血圧の非薬物治療としてここ数年、海外学会などで話題をさらってきた期待の治療法である。理論的には腎動脈から発信される神経刺激が中枢を刺激して交感神経を活性化させ高血圧をもたらすことは動物実験からも確認されており、腎臓からの神経遮断は血圧を下げることは理論にかなっている。しかしこの治療法の当初からの懸念は、白衣高血圧とプラセボ効果がきちんと除外されているのかということであった。

結節性多発動脈炎の原因はアデノシンデアミナーゼ2の遺伝子変異である(コメンテーター:金子 開知 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(193)より-

 結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は、1866年にKussmaulとMaierにより初めて詳細に報告された血管炎である。Chapel Hill Consensus Conference 2012では、PANは「中・小動脈の壊死性血管炎で、糸球体腎炎あるいは細小動脈・毛細血管・細小静脈の血管炎を伴わず、抗好中球細胞質抗体と関連のない疾患」と定義された稀な疾患であり、その病因は明らかではなかった。

薬剤溶出性ステントの優劣は1年の短期成績によって決めてよいか?(コメンテーター:上田 恭敬 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(192)より-

 SORT OUT III試験は、2種類の異なる薬剤溶出性ステントを留置した患者の臨床転帰について評価することを目的に、デンマーク国内5ヵ所のインターベンションセンターで行われた。適格患者2,332例が無作為に2群に割り付けられ、ゾタロリムス溶出エンデバースプリントステント(米国メドトロニック社製)もしくはシロリムス溶出サイファーセレクトプラスステント(米国コーディス ジョンソン&ジョンソン社製)の留置を受けた。

膠芽腫の新規診断例に対する治療、ベバシズマブの上乗せ効果得られず(コメンテーター:中川原 譲二 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(191)より-

 血管内皮増殖因子Aに対するヒト化モノクロナール抗体:ベバシズマブ(商品名:アバスチン)は、わが国では昨年6月に初発および再発の悪性神経膠腫(膠芽腫)の治療薬として製造販売承認されたばかりであるが、膠芽腫の新規診断例の治療においてベバシズマブの上乗せ効果が得られないことがNEJMの2月20日号に相次いで報告され、ベバシズマブに対する過度の期待を戒めている。