CLEAR!ジャーナル四天王|page:61

CABG手術時のトラネキサム酸投与は、術後出血リスクを半減する(解説:許 俊鋭 氏)-608

トラネキサム酸投与は開心術に伴う術後の出血傾向を抑制し、再手術を必要とした大出血または心タンポナーデの合併症を半減(1.4% vs.2.8%)させるという結論がこのRCTで証明され、逆にトラネキサム酸により血栓形成促進による非致死的心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症、腎不全、または腸梗塞を増加させないことが証明された。今後、手術成績を向上させるうえでトラネキサム酸投与は有効である可能性が示唆された。

LDL-C低下に関与する遺伝子変異は2型糖尿病のリスク増加と関連(解説:小川 大輔 氏)-606

脂質異常症の治療としてスタチン薬が動脈硬化性疾患の予防のために用いられることが多いが、これまでにスタチン薬の使用は体重増加や2型糖尿病の新規発症と関連することが報告されている。一方、LDLコレステロールトランスポーターNiemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)の阻害薬であるエゼチミブの糖代謝に対する影響については不明である。今回、LDLコレステロールの低下に関与するNPC1L1遺伝子の変異と2型糖尿病の発症リスク増加との関連が報告された。

脳梗塞血栓除去療法:治療までの時間と転帰―メタ解析(解説:中川原 譲二 氏)-604

第2世代デバイスを用いた血栓除去療法は、頭蓋内の大血管閉塞による虚血性脳卒中患者に対して有益である。治療までの時間と転帰との関係図式は、治療実施をガイドするために役立つ。本研究は、血栓除去療法が有益である期間、および治療遅延が機能的転帰、死亡、症候性頭蓋内出血と関係する範囲を特定することにある。研究結果は、JAMA誌2016年9月27日号に掲載された。

GLP-1受容体作動薬は心血管イベントを抑止しうるか(解説:吉岡 成人 氏)-603

いくつもの大規模臨床試験により、糖尿病治患者の心血管イベントを抑制するためには、発症早期からの集約的な代謝管理が有用であることが確認されている。一方、罹病期間が長く、心血管イベントを発症するリスクが高い患者やすでに心血管疾患の既往がある患者では、インスリンを中心とした薬剤で厳格な血糖管理を目指すことは、低血糖のリスクが高まり、心血管イベントを抑止しえないことも広く知られている。

新しいセンサー式血糖測定器、血糖コントロールを悪化させずに低血糖を減少(解説:小川 大輔 氏)-601

糖尿病合併症の発症、進展の阻止には良好な血糖コントロールの維持と同時に低血糖の回避が重要である。とくに1型糖尿病の場合は、血糖管理のために頻回に指先を穿刺し血糖値を測定することが多いが、新しいセンサー式血糖測定器は1型糖尿病患者の福音となるかもしれない。そのような研究結果が最近Lancet誌に報告された。

LDL-コレステロール低下による心血管イベント抑制はスタチンだけではない!(解説:平山 篤志 氏)-600

動脈硬化の原因として、LDL-コレステロールの関与は実験的、疫学的にも20世紀初頭から明らかにされ、コレステロール低下によるイベント抑制試験も行われてきた。しかし、1994年に4S試験で全死亡をはじめとした心血管死、心筋梗塞の発症の抑制が示されたことを契機として、数多くのスタチンによる大規模臨床試験が発表されるようになった。

今のところ順調なapo(a)アンチセンス療法(解説:興梠 貴英 氏)-599

2015年に、心血管イベントおよび石灰化大動脈弁狭窄症のリスク因子であるLp(a)の血中濃度を低下させる、アンチセンス薬(IONIS-APO[a]Rx)の第I相試験の結果が報告された。本試験は、その続き(第II相試験)および元の薬剤にリガンドを結合させて特異的に肝細胞に取り込まれるように改変したもの(IONIS-APO[a]-LRx)の第I/IIa相試験の報告である。

気管支喘息への新規抗IL-5受容体抗体の治療効果は?(解説:小林 英夫 氏)-598

気管支喘息の有病率は減少していないが、本邦での年間死亡数は20年前に7千人を超えていたものが近年は2千人以下と減じた。その最大の理由として、吸入ステロイド薬の普及が挙げられる。しかし、高用量の吸入ステロイド薬ないし吸入ステロイド+長時間作用型β2刺激薬でもコントロールに難渋する重症・難治性気管支喘息が約1割でみられる。そこで、さらなる治療効果を求め、抗IgE抗体や抗interleukin-5(IL-5)抗体が臨床に登場した。新規抗IL-5抗体benralizumabは、Il-5のアルファサブユニット(IL-5Rα)を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、受容体結合により抗体依存性細胞障害作用を発揮し、ナチュラル・キラー細胞を介し好酸球のアポトーシスを誘導する。すでに、第II相試験で好酸球性喘息の増悪を改善する効果が得られている。本論文では、benralizumabがプラセボ群に比して年間喘息増悪を有意に抑制すると報告している。

70歳以上高齢者に対する帯状疱疹サブユニットワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-596

帯状疱疹の罹患率や、その合併症である帯状疱疹後神経痛の発生率は、年齢とともに増加することが知られている。帯状疱疹を発症した場合、抗ウイルス薬の投与によって罹病期間を短縮することはできるが、帯状疱疹後神経痛の減少効果は示されておらず、ワクチンによる予防効果が期待されてきた。日本や米国では、50歳以上の成人に対して帯状疱疹の予防に生ワクチンが認可されているが、帯状疱疹の予防効果は50%程度とそれほど高くなく、さらに年齢とともに有効性が低下することが指摘されていた。

NORSTENT試験:人は冠動脈のみにて生くるものにあらず(解説:中川 義久 氏)-594

「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉を皆さんは耳にしたことがあると思います。聖書の「マタイによる福音書」の有名な一節です。人は物質的な満足だけを目的として生きるものではなく、精神的なよりどころが必要であるといった意味合いでしょうか。医学界における位置付けは聖書にも近いともされるNEJM誌から、「人は冠動脈のみにて生くるものにあらず」というありがたい教えがもたらされました。

非虚血性収縮不全の心不全例に対する予防的ICDは予後を改善しない(解説:今井 靖 氏)-591

植込み型電気除細動器(ICD)は、虚血性・非虚血性心不全のいずれにおいても、心室細動・血行動態の破綻を伴う心室頻拍の既往例の再発予防(2次予防)として、また既往がなくともそのリスクが高い症例の予防(1次予防)として適応され、国内外いずれのガイドラインでも推奨・考慮される治療法として掲げられている。