Nav1.8は末梢神経系に発現している電位依存性ナトリウムチャネルで、疼痛シグナル伝達において重要な役割を果たすという。LTG-001は、オピオイドと同等の鎮痛効果をもたらすように設計された、経口投与が可能な非オピオイド系の選択的Nav1.8阻害薬である。米国・Latigo BiotherapeuticsのNeil Singla氏らは、腹壁形成術後に疼痛を訴える患者において、低・高用量のLTG-001はプラセボと比較して、48時間後の疼痛スコアを有意に改善し、高用量ではオピオイドのレスキュー使用量が少ないことを示した。研究の成果はNEJM誌2026年7月30日号に掲載された。
4群を比較する無作為化第IIb相試験
研究グループは、LTG-001の術後の疼痛緩和効果の評価を目的に二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb相試験を実施した(Latigo Biotherapeuticsの助成を受けた)。
2025年7~12月に米国の4施設で参加者を登録した。対象は、年齢18~65歳、腹直筋縫縮術を伴う待機的下腹部腹壁形成術を受け、術後4時間以内の言語的カテゴリー評価尺度(verbal categorical rating scale[VRS]:4段階[疼痛なし~重度疼痛])で中等度または重度の安静時疼痛を示し、数値的疼痛評価尺度(numeric pain rating scale[NPRS]:11段階[0点:疼痛なし~10点:想像しうる最悪の痛み])で安静時に5点以上の患者であった。
被験者343例を、低用量LTG-001(85例)、高用量LTG-001(86例)、酒石酸水素ヒドロコドン-アセトアミノフェン(86例)、プラセボ(86例)を投与する4群に無作為に割り付けた。
低用量LTG-001群は、負荷用量として300mgを、その後は維持用量として150mgを12時間ごとに48時間、経口投与した。高用量LTG-001群は、負荷用量450mg、維持用量300mgを同様に投与した。
主要評価項目は、48時間の治療期間におけるベースラインと各評価時点の疼痛強度の差の時間加重合計(SPID48)とした。SPID48は、NPRSスコアに基づき、数値が高いほどベースラインからの疼痛軽減度が大きいことを示す(急性疼痛における臨床的に意義のある最小差は確立されていない)。
低・高用量ともSPID48が有意に改善
全体で患者の95.6%が試験を完了した。ベースラインにおける4群の被験者特性は類似しており、平均年齢は39.9~41.2歳、女性が98~99%であり、VRSで中等度疼痛の患者割合の範囲は43~52%、重度疼痛は42~57%であり、各群の平均NPRSスコアの範囲は7.3~7.5点だった。
最小二乗平均SPID48は、低用量LTG-001群が161.05(95%信頼区間[CI]:142.93~179.16)、高用量LTG-001群が185.30(95%CI:167.26~203.34)、酒石酸水素ヒドロコドン-アセトアミノフェン群が164.08(95%CI:146.02~182.14)、プラセボ群は123.22(95%CI:105.23~141.21)であった。
SPID48の最小二乗平均差は、低用量LTG-001群とプラセボ群が37.82(95%CI:12.62~63.03、p=0.003)、高用量LTG-001群とプラセボ群は62.08(95%CI:36.95~87.21、p<0.001)であり、いずれもLTG-001群で有意に良好であった。
オピオイドの総レスキュー使用量(最小二乗平均)は、プラセボ群(18.35モルヒネ ミリグラム当量[MME])と比較し、高用量LTG-001群(11.00MME)は有意に少なかったが(群間差:-7.35MME、95%CI:-13.12~-1.58、p=0.01)、低用量LTG-001群(12.95MME)では有意差はなかった。
また、オピオイドのレスキュー投与を受けなかった患者の割合は、高用量LTG-001群がプラセボ群に比べ有意に高かった(52%vs.22%、p<0.001)。
意義のある疼痛緩和(NPRSスコアのベースラインから2点以上の低下)が達成されるまでの時間中央値は、低用量LTG-001群が60.0分、高用量LTG-001群は51.7分であり、酒石酸水素ヒドロコドン-アセトアミノフェン群は82.8分、プラセボ群は87.5分であった。
高用量LTG-001群は発熱、失神寸前の状態の頻度が高い
有害事象の発生率は高用量LTG-001群で最も低かった(低用量LTG-001群62%、高用量LTG-001群50%、酒石酸水素ヒドロコドン-アセトアミノフェン群63%、プラセボ群65%)。最も頻度の高い有害事象は、悪心、頭痛、めまいであり、これらの多くは軽度または中等度であった。
プラセボ群との比較で高用量LTG-001群は、発熱(7%vs.2%)と失神寸前の状態(6%vs.1%)の頻度が高かった。重篤な有害事象は各群で1例ずつ発生した。LTG-001群とプラセボ群では、試験レジメンの中断や試験中止に至った有害事象、および死亡例は認められなかった。
著者らは、「これらの結果を確認し、他の急性疼痛モデルにおけるLTG-001の有効性および安全性プロファイルを明らかにし、LTG-001の相対的有効性を他のNa
v1.8阻害薬と比較するために、さらなる検討が必要である」としている。
(医学ライター 菅野 守)