DGAT-2阻害薬ION224、MASHを改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/05

 

 ジアシルグリセロール O-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)を標的とした肝指向性アンチセンスオリゴヌクレオチドのION224は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対する安全かつ有効な治療薬となりうることを、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らION224-CS2 Investigatorsが、米国およびプエルトリコの43の臨床施設で実施した「ION224-CS2試験」において初めて明らかにした。ION224は、MASHの病態に重要な、脂肪毒性ならびに炎症、肝細胞障害および肝線維化に関連する代謝経路であるde novo脂肪合成を抑制する。著者は、「本試験で観察された組織学的改善は体重の変化とは無関係であり、GLP-1をベースとした治療など他の治療との併用が期待される」とまとめている。Lancet誌2025年8月23日号掲載の報告。

肝線維化を伴うMASHに対するION224の安全性と有効性をプラセボと比較

 ION224-CS2試験は、51週間のアダプティブ2パート無作為化二重盲検プラセボ対照第II相試験。対象は、肝生検にてMASHおよび肝線維化(ステージF1、F2、F3)が確認された18~75歳の成人で、BMI値25以上、MRIプロトン密度脂肪分画測定法(MRI-PDFF)による評価で肝脂肪化率≧10%、HbA1cは<9.5%、ならびにALTおよびASTが≦200U/Lを満たす患者であった。

 パート1(用量設定パート)では、適格患者を3つの用量コホート(コホートA:ION224 60mgまたはプラセボ、コホートB:ION224 90mgまたはプラセボ、コホートC:ION224 120mgまたはプラセボ)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、さらに各用量コホート内でION224群またはプラセボ群に3対1の割合で無作為に割り付けた。

 パート2(登録拡大パート)では、事前に規定された安全性および有効性に関する中間解析に基づき、コホートBまたはコホートCに1対1の割合で無作為に割り付け、さらに各用量コホート内でION224群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けた。

 研究グループは、すべての患者に12ヵ月間にわたりION224またはプラセボを4週ごとに1回、計13回皮下投与した。

 主要エンドポイントは、51週時における肝線維化の悪化を伴わないMASH改善(非アルコール性脂肪性肝疾患活動性スコア[NAS]が2以上改善、かつ風船様変性または小葉炎症のスコアが1以上改善)とした。

 主要解析は、事前に規定されたper-protocol集団(試験薬を13回中連続3回以上欠かすことなく、少なくとも10回投与され、治療終了時に肝生検を完了)を対象とした。

51週時のMASH改善率、90mg群46%、120mg群59%、プラセボ群19%

 2021年6月8日~2022年12月27日に、計160例がION224 60mg群(23例)、90mg群(45例)、120mg群(46例)、プラセボ群(46例)に無作為化され、うち123例がper-protocol集団に組み込まれた。

 主要エンドポイントを達成した患者の割合は、プラセボ群19%(6/32例)(予測リスク:18.7%[95%信頼区間[CI]:5.2~32.3])であったのに対し、ION224 90mg群が46%(18/39例)(予測リスク:46.2%[95%CI:30.5~61.8]、対プラセボリスク群間差:27.4%[95%CI:6.7~48.1]、p=0.0094)、120mg群が59%(20/34例)(58.8%[42.3~75.4]、40.1%[18.7~61.4]、p=0.0002)であった。

 安全性については、ION224の忍容性は良好であり、有害事象はION224群全体で107/114例(94%)、プラセボ群で41/46例(89%)報告された。死亡および治療に関連する重篤な有害事象は報告されなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 相澤 良夫( あいざわ よしお ) 氏

医療法人社団玲朧会 金町中央病院 肝臓内科