心エコーの自動解析AIシステム「PanEcho」、精度は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2025/07/04

 

 米国・テキサス大学オースティン校のGregory Holste氏らは、経胸壁心エコー(TTE)において39項目(診断分類タスク18項目、パラメーター推定タスク21項目)を自動解析する人工知能(AI)システム「PanEcho」を開発し、内部および外部検証の結果、地理的および時間的な違いにかかわらず高い精度が得られることを報告した。心エコー検査は心血管診療の基盤であるが、一連の動画の専門家による読影と手作業によるレポート作成に依存している。著者は、「マルチタスクディープラーニングを用いて心エコー読影を自動化したAIシステム(PanEcho)は、心エコー検査室における補助的な読影ツールとして、あるいはポイントオブケアにおけるAI対応スクリーニングツールとして活用できる可能性があり、各臨床ワークフローにおける前向き評価が望まれる」と述べている。JAMA誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

心エコー動画120万本を用いてAIシステムを開発し精度を検証

 本研究には、イェール・ニューヘイブン・ヘルス・システム(YNHHS)傘下の病院および診療所において、患者2万4,405例への日常診療で実施されたTTE検査3万2,265件から得られた心エコー動画120万本が用いられた。

 YNHHSの2016年1月~2022年6月のデータを用いて「PanEcho」を開発し、YNHHSの2022年7月~12月の別のコホートで内部検証するとともに、4つの他のコホート(RVENet+[ハンガリー]、POCUS、EchoNet-Dynamic、EchoNet-LVH[3つはいずれも米国])で外部検証を行った。

 主要アウトカムは、診断分類タスクの受信者動作特性曲線下面積(AUC)およびパラメーター推定タスクの平均絶対誤差とし、AIによる予測と読影担当の心臓専門医の評価を比較した。

診断分類タスク18項目、パラメーター推定タスク21項目で高精度

 AIシステムは、内部検証において18項目の診断分類タスクでAUC中央値0.91(四分位範囲[IQR]:0.88~0.93)、21項目のパラメーター推定タスクで正規化平均絶対誤差の中央値0.13(0.10~0.18)を示した。

 具体例としては、本モデルは左室駆出率を正確に推定し(平均絶対誤差:内部4.2%、外部4.5%)、中等度以上の左室収縮不全(AUC:内部0.98、外部0.99)、右室収縮不全(AUC:内部0.93、外部0.94)、および重度大動脈弁狭窄(AUC:内部0.98、外部1.00)を検出した。

 AIシステムは、限られた画像プロトコールにおいても優れた性能を維持し、簡略化されたTTEコホートにおいて15項目の診断分類タスクをAUC中央値0.91(IQR:0.87~0.94)で実行し、YNHHS救急部門の実際のポイントオブケアエコー検査でも14項目のタスクをAUC中央値0.85(0.77~0.87)で実行した。

 なお、著者は研究の限界として、2Dグレースケールとカラードップラー心エコーの動画データに限定されており、静止画、スペクトルドップラー、ストレイン画像、3D心エコーなどのデータは含まれていなかったこと、本研究で定義された39項目のタスクに限定されるため一部のタスクにおいて患者ケアの個別的な指針となるには解釈が不十分な場合があることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)