PCI後DAPT例の維持療法、P2Y12阻害薬が主要有害心・脳血管イベント抑制に有効/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/16

 

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を終了した患者では、アスピリン単剤療法と比較してP2Y12阻害薬単剤療法(チカグレロルまたはクロピドグレル)は、大出血のリスク増加を伴わずに、心筋梗塞と脳卒中のリスク低下に基づく主要有害心・脳血管イベント(MACCE)の発生率の低下をもたらすことが、イタリア・University of CataniaのDaniele Giacoppo氏らによるメタ解析で明らかになった。研究の成果は、BMJ誌2025年6月4日号で報告された。

5件の無作為化試験のメタ解析

 研究グループは、PCI施行後のDAPTを終了した患者におけるP2Y12阻害薬単剤療法とアスピリン単剤療法の有効性の比較を目的に、無作為化臨床試験の個々の参加者のデータを用いてメタ解析を行った(スイス・Cardiocentro Ticino Instituteなどの助成を受けた)。

 医学関連データベースを用いて、冠動脈疾患患者でPCI施行後の虚血性イベントの2次予防として、P2Y12阻害薬またはアスピリンの単剤療法について検討した無作為化試験を検索した。

 主要アウトカムはMACCE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合)とし、主要複合アウトカムとして大出血(BARC type 3または5)も評価した。副次アウトカムは有害心・脳血管イベントの複合(NACCE、主要アウトカムと主要複合アウトカムの組み合わせ、および個々のアウトカム[全死因死亡、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、definiteまたはprobableステント血栓症、消化管出血など])とした。

 PCI施行後に、推奨されたDAPTレジメン(期間中央値12ヵ月)を終了した患者を、P2Y12阻害薬単剤療法またはアスピリン単剤療法に割り付けた5件(ASCET、CAPRIE、GLASSY、HOST-EXAM[韓国の37施設5,438例]、STOPDAPT-2[日本の90施設3,009例])の無作為化試験(合計1万6,117例)を解析の対象とした。

治療必要数は45.5例

 ベースラインの年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~73)、23.8%が女性、28.6%が糖尿病、14.6%が中等症~重症の慢性腎臓病を有していた。P2Y12阻害薬は、58.7%がクロピドグレル、41.3%がチカグレロルであった。また、患者の48.9%が欧州または北米の試験の参加者で、51.1%は東アジアの試験の参加者だった。

 追跡期間中央値1,351日(IQR:373~1,791)の時点で、アスピリン単剤群に比べP2Y12阻害薬単剤群はMACCEのリスクが有意に低かった(混合効果モデルよる1段階解析のハザード比[HR]:0.77[95%信頼区間[CI]:0.67~0.89、p<0.001]、多変量混合効果モデルによる1段階解析の補正後HR:0.77[0.67~0.89、p<0.001]、変量効果モデルに基づく2段階解析のHR:0.77[0.67~0.89、p<0.001])。有益性を得るための治療必要数は45.5例(95%CI:31.4~93.6)だった。

NACCEのリスクも有意に低い

 大出血は両群間で有意な差を認めなかった(混合効果モデルよる1段階解析のHR:1.26[95%CI:0.78~2.04、p=0.35]、多変量混合効果モデルによる1段階解析の補正後HR:1.12[0.74~1.70、p=0.60]、変量効果モデルに基づく2段階解析のHR:1.15[0.69~1.92、p=0.59])。

 また、NACCE(変量効果モデルに基づく2段階解析のHR:0.84[95%CI:0.73~0.98]、p=0.03)、心筋梗塞(0.69[0.55~0.86]、p=0.001)、脳卒中(0.67[0.51~0.88]、p=0.003)は、アスピリン単剤群に比べP2Y12阻害薬単剤群で発生リスクが低かった。

 著者は、「これらの結果は、複数の感度分析で確認され、P2Y12阻害薬単剤群の有効性は心筋梗塞と脳卒中の有意な減少に起因していた」「大出血と全出血は、両群間で有意差を認めなかったが、試験間で著明な異質性が検出された」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 参与・名誉院長

J-CLEAR評議員