obicetrapibとエゼチミブの固定用量配合剤(FDC)は、最大耐用量の脂質低下療法を受けている動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)既往または高リスク患者のLDL-コレステロール(LDL-C)値を、各単独投与あるいはプラセボと比較して有意に低下させたことが示された。米国・Cleveland ClinicのAshish Sarraju氏らが、米国の48施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「TANDEM試験」の結果を報告した。著者は、「この経口・配合剤単剤療法は、ASCVD既往または高リスク患者におけるLDL-C管理を改善する可能性がある」とまとめている。obicetrapibはコレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬で、非ASCVD患者を対象とした小規模な第II相試験で、単独投与またはエゼチミブとの併用投与でLDL-C値を低下させることが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年5月7日号掲載の報告。
obicetrapib/エゼチミブ配合剤、各単独、プラセボのLDL-C低下効果を比較
研究グループは、ASCVD またはヘテロ接合型家族性高コレステロール血症の既往を有する、またはASCVD の複数のリスク因子を有する患者で、エゼチミブを除く最大耐用量の脂質低下療法を安定的に受けているにもかかわらず空腹時LDL-C値が1.8mmol/L(70mg/dL)以上、あるいはスタチン不耐の18歳以上の患者を、obicetrapib10mg+エゼチミブ10mg併用群(FDC群)、obicetrapib10mg群、エゼチミブ10mg群、またはプラセボ群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回84日間経口投与した。
主要エンドポイントは、ITT集団におけるLDL-C値のベースラインから84日目までの変化率で、FDC群とプラセボ群、エゼチミブ群およびobicetrapib群、ならびにobicetrapib群とプラセボ群の4つを比較した。
obicetrapib/エゼチミブ配合剤、プラセボと比較しLDL-C値が48.6%低下
2024年3月4日~7月3日に407例が無作為化された(FDC群102例、obicetrapib群102例、エゼチミブ群101例、プラセボ群102例)。患者背景は、年齢中央値が68.0歳(四分位範囲:62.0~73.0)、女性が177例(43%)で、ベースラインの平均LDL-C値はFDC群2.5mmol/L、obicetrapib群2.6mmol/L、エゼチミブ群2.5mmol/L、プラセボ群2.4mmol/Lであった。
84日時点でのLDL-C低下率のFDC群と各群との差(最小二乗平均差)は、プラセボ群で-48.6%(95%信頼区間:-58.3~-38.9)、エゼチミブ群で-27.9%(-37.5~-18.4)、obicetrapib群で-16.8%(-26.4~-7.1)であり、obicetrapib群とプラセボ群との差は-31.9%(22.1~41.6)であった。
有害事象の発現率は、FDC群51%(52/102例)、obicetrapib群54%(55/102例)、エゼチミブ群53%(54/101例)で3群は同程度で、プラセボ群が37%(38/102例)と最も低かった。
重篤な有害事象は、FDC群で3例(3%)、obicetrapib群で6例(6%)、エゼチミブ群で7例(7%)、プラセボ群で4例(4%)に発現した。
死亡は、FDC群1例(1%)、obicetrapib群1例(1%)、エゼチミブ群1例(1%)に認められ、プラセボ群では死亡例の報告はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)