ユニセフとWHOが推奨する6ヵ月母乳養育には母親への教育が欠かせない

提供元:ケアネット

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公開日:2007/10/05

 

母乳栄養には多くの利点があり、ユニセフとWHOは1991年から、母乳栄養についてベストな選択を母親ができるようサポートするイニシアティブ(the baby friendly hospital initiative)を開始しているが、診療現場に普及するには至っていない国も多い。
 シンガポール大学のLin-Lin Su氏らは、どのような方法が母乳養育率を改善するのかを調査するため、一般的に行われる院内ケアを受けるグループと出産前だけに母乳栄養について教育されるグループ、出産後授乳支援を受けるグループとを比較する無作為化試験を行った。本論はBMJ誌オンライン版8月1日付けで早期公開され、本誌では9月22日号で収載されている。

ルーチンケア、出産前教育、出産後サポートの3群に分け比較




調査はシンガポールの3次機能病院で、併発症を伴わない妊婦450例を、ルーチンケア群(151例)、出産前教育群(150例)、出産後サポート群(149例)にランダムに振り分け行われた。

主要評価項目は、分娩退院後2週、6週、3ヵ月、6ヵ月各時点の母乳養育率。副次評価項目は、すべての母乳養育率とした。

出産後サポートのほうが出産前教育よりわずかに効果的




結果、ルーチンケア群と比較して出産後サポート群のほうが母乳養育の傾向が強いことが明らかとなった。相対リスクは2週時点1.82(95%信頼区間:1.14-2.90)、6週時点1.85(同1.11-3.09)、3ヵ月時点1.87(1.03-3.41)、6ヵ月時点2.12(1.03-4.37)。

出産前教育群は、6週、3ヵ月、6ヵ月の時点だけ出産後サポート群より母乳で育てる傾向が見られた。相対リスクはそれぞれ1.73(1.04-2.90)、1.92(1.07-3.48)、2.16(1.05-4.43)。

6ヵ月時点での出産後サポート群と出産前教育群の比較では、それぞれNNT(*)が11(6~80)と10(6~60)という結果で有意差は見られなかった。

しかし2週時点では、出産後サポート群は出産前教育群と比べるともっぱらあるいは主として母乳で育てる傾向が見られた(相対リスク1.53、95%信頼区間1.01-2.31)。

6週間時点でも出産サポート群は、ルーチンケア群と比較しても母乳養育率がより高かった(同1.16、1.02-1.31)。

このように、出産前後を問わず1回の介入で分娩後最高6ヵ月時点での母乳養育率の改善につながること、出産後サポートのほうが出産前教育よりわずかに効果的であることが明らかとなった。

*NNT:number needed to treat。治療必要数。ここではルーチンケア群との比較で。