トリプルネガティブ乳がん、veliparib+CBDCA併用の術前化学療法でpCR向上/NEJM

トリプルネガティブの乳がん患者では、術前補助化学療法として標準療法に加え、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬veliparib+カルボプラチンを併用することで、病理学的完全奏効率が向上することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏らが、多施設共同の適応的無作為化第II相試験「I-SPY2」で明らかにしたもので、NEJM誌2016年7月7日号で発表した。乳がんは、遺伝的・臨床的不均一性から有効な治療の特定が困難になっている。研究グループは、実験的試験で効果のあるがんサブタイプを見つけることを目的とした。
被験者を10種のバイオマーカー標識に分類
試験は、腫瘍が直径2.5cm以上でステージIIまたはIIIの乳がんの女性を対象に、実験的レジメンにより治療アウトカムが向上する乳がんサブタイプについて調べるもので、現在も継続中である。具体的には、乳がんをヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、ホルモン受容体、70の遺伝子アッセイにより8つのバイオマーカー・サブタイプに分類。そのうえで、あらかじめ定義したバイオマーカーの組み合わせで10種のバイオマーカー標識を作成し、標準治療と実験的レジメンを比較することとした。被験者は、標準療法よりも良好な成績のレジメンを受けられるよう、バイオマーカー・サブタイプ内で適応的無作為化を行った。
今回報告されている標準療法にveliparibとカルボプラチンを併用するレジメンは、HER2陰性腫瘍について検討され、3標識について評価が行われた。
主要評価項目は、病理学的な完全奏効で、治療中にMRIで腫瘍体積を測定して完全奏効を予測する形で評価。また、ベイズ確率で第III相試験での成功予測が高いと示されたレジメンについて、第II相から第III相へ進めると判定することとした。
標準療法にveliparib+カルボプラチンで病理学的完全奏効が51%
veliparib+カルボプラチンを投与した被験者は72例、対照群は44例だった。トリプルネガティブ(エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2が陰性など)の患者において、化学療法終了時点で病理学的完全奏効が予測された人の割合は、veliparib+カルボプラチン群が51%(95%ベイズ確率区間:36~66)だったのに対し、対照群では26%(同:9~43)だった。また、トリプルネガティブ乳がんに関して、veliparib+カルボプラチンレジメン治療が第III相で成功する確率は88%だった。
なお、veliparib+カルボプラチン群の毒性は、対照群より高かった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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新規候補薬剤veliparibがトリプルネガティブ乳がんに有効な可能性(解説:矢形 寛 氏)-575
コメンテーター : 矢形 寛( やがた ひろし ) 氏
埼玉医科大学 総合医療センター ブレストケア科 教授