マンモグラフィ検診の過剰診断率情報が、受診動向に影響/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2013/02/08

 

 乳がんのマンモグラフィ検診の過剰診断について知る一般女性は少なく、高い過剰診断率に関する情報は検診の受診動向に影響を及ぼす可能性があることが、オーストラリア・シドニー大学のJolyn Hersch氏らの検討で示された。マンモグラフィ検診では、生存中には臨床的に発現しない病変を検出する過剰診断のリスクがあるが、このリスクの程度には大きな幅がある。乳がんの過剰診断の社会的認知度は低く、一般の女性が過剰診断にどう対応するか、検診の選択の際にこれらの情報をどう活用するかに関するエビデンスはほとんどないという。BMJ誌2013年1月26号(オンライン版2013年1月23日号)掲載の報告。

過剰診断の認識が、検診に対する考え方に及ぼす影響を評価
 研究グループは、マンモグラフィ検診における過剰診断(生存中には臨床的に発現しない病変の検出)の実態に関する情報への女性の反応を調査し、過剰診断の認識が検診に対する考え方や意向に及ぼす影響を評価する質的研究を行った。

 対象は、乳がんの既往歴のない40~79歳の女性50人で、教育歴や検診への参加歴はさまざまであった。

 これらの女性が、過剰診断に関する説明を受け、過剰診断率がそれぞれ1~10%、30%、50%とする論文データと、検診がもたらすベネフィットに関するエビデンスに基づく情報を提供された。その後、グループでディスカッションを行った。

慎重な情報伝達の必要性を強調すべき
 50人の女性のうち、40~49歳が19人、50~69歳が16人、70~79歳は15人であった。マンモグラフィ検診歴のある女性は31人(62%)だった。

 乳がんの過剰診断について事前に知っていた女性は少なかった。過剰診断の事実を知って多くの女性が驚きの反応を示したが、ほとんどが問題を理解した。

 過剰診断への反応やその程度はさまざまであった。最も高い過剰診断率(50%)の場合、受診の意志決定の際はより慎重な態度が必要と考える女性がいたのに対し、過剰診断率が低~中(1~10%、30%)の場合は、女性の考え方や意向に及ぼす影響は少なく、多くの女性が検診への姿勢に変化を示さなかった。

 過剰診断の情報を得ることで、別の検診法への関心や、検診でみつかったがんを治療するか、別のアプローチ[経過観察(watchful waiting)など]を考慮するかという問題への関心を示した女性もいた。

 情報の受け止め方もさまざまであった。多くの女性は、過剰診断について自分で考えることが重要であり、受診の可否の選択に情報を活かそうと考えたが、誰かに検診を受けるよう強く薦めてもらいたいと考える女性も多かった。

 著者は、「さまざまな社会経済的背景を持つ女性たちは、マンモグラフィ検診の過剰診断の問題を理解し、関連情報の価値を判断した。検診の受診への意思には、過剰診断率の情報が大きな影響を及ぼした」とまとめ、「過剰診断は多くの人びとにとって初耳で、思いがけないものである。それゆえ、十分に考えずに検診や治療の可否の決定をしている可能性があるため、慎重な情報伝達の必要性を強調すべきである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)