VATSと開胸手術の気胸再発率は同等とする見解は誤り

提供元:ケアネット

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公開日:2007/08/09

 

 気胸の再発予防手術(胸膜癒着術)は良性胸膜疾患の手術法として最も施行頻度の高い手技である。2002~2005年のイギリスおよびアイルランドの調査では、より侵襲性の低いビデオ支援下胸腔鏡手術(VATS)の施行数は開胸手術の約3倍にも達しており、その理由として再発率が同等で術後疼痛や入院日数が少ない点が挙げられている。しかし、その論拠とされる研究には無作為化試験が少なく、しかも検出パワーが低いため、これらのエビデンスは疑問視されている。

 イギリス・ケンブリッジ市のPapworth病院心臓胸郭手術部のAllanah Barker氏らは、VATSと開胸手術の気胸再発率のより厳密な比較を目的に、無作為化試験および非無作為化試験の体系的なレビューおよびメタ解析を実施、その結果を7月28日付Lancet誌上で報告した。

相対リスクは無作為化試験と非無作為化試験の間で差はない

 医学データベースを用いて気胸手術に関する体系的な文献検索を行い、29の試験(無作為化試験:4試験、非無作為化試験:25試験)を抽出した。VATS施行例と開胸手術施行例の気胸再発率を統合しメタ解析を行った。

開胸手術に対するVATSの気胸再発の相対リスクは、無作為化試験と非無作為化試験の間で差を認めなかった。気胸再発に関するVATSの全体の相対リスクは4.731であり、有意差を認めた(p<0.0001)。

VATSの気胸再発率は開胸手術の約4倍

 全比較試験における開胸手術に対するVATSの相対リスクは3.991(p<0.0001)、唯一の質の高い試験では4.016(p<0.0001)であり、VATSの高い相対リスクは変量効果モデルを適用しても強力に維持されていた(4.051、p<0.0001)。

 Barker氏は、「多くの試験は方法論的な質が低いが、無作為化試験と非無作為化試験の結果は一致しており、VATSの気胸再発率は開胸手術の約4倍にも達した」と結論したうえで、「VATSは開胸手術に比べ再発率が同等で術後疼痛や入院日数が少ないとするこれまでの一般的な見解は誤り」と指摘している。

(菅野 守:医学ライター)