脳動脈瘤へのヒドロゲル被覆コイル塞栓術、プラチナコイルに比べ再発率を抑制

提供元:ケアネット

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公開日:2011/05/26

 



脳動脈瘤に対するヒドロゲル被覆コイルを用いた血管内塞栓術は、瘤破裂の明らかな抑制効果や長期的な臨床アウトカムの改善効果はもたらさないものの、脳動脈瘤再発(フォローアップ画像検査で不完全な瘤塞栓)を有意に抑制することが、英国・エディンバラ大学のPhilip M White氏らが行ったHELPS試験で示された。血管内コイル塞栓術は開頭手術によるクリッピング術に比べ予後良好で低侵襲だが、残存瘤や再発、再治療率が高いとされる。被覆コイルは、再発率や再治療率の低減を目的に開発されたが、従来のベアプラチナコイルに比べ高価で、その安全性や有効性に関する強固なエビデンスが確立されないまま8~9年間、臨床使用されてきたという。Lancet誌2011年5月14日号掲載の報告。

ヒドロゲル被覆コイルの有効性と安全性を評価する無作為化対照比較試験




HELPS試験の研究グループは、ヒドロゲル被覆コイルの有効性と安全性を評価するために、ベアプラチナコイルと比較する無作為化対照比較試験を行った。

最大径2~25mmの未治療の破裂または未破裂脳動脈瘤患者(18~75歳)が登録され、ヒドロゲル被覆コイルあるいは標準的なベアプラチナコイル(対照)を用いた動脈瘤コイル塞栓術を施行する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。

患者とアウトカムの評価者には、治療割り付け情報は知らされなかった。欠測データを除外した修正intention-to-treat解析を行った。主要評価項目は、施術後18ヵ月の時点における血管造影画像上および臨床的な複合アウトカムとした。

主要評価項目:28% vs. 36%、脳動脈瘤再発率は8.6%減少





2004年9月~2007年2月までに499例が登録され、ヒドロゲル被覆コイル群に249例が、対照群には250例が割り付けられた。18ヵ月後の血管造影画像が得られなかった44例は、6ヵ月後の画像が解析に用いられた。
 有害な複合アウトカム(血管造影画像上の動脈瘤再発、治療関連死、治療関連合併症)の発生率は、ヒドロゲル被覆コイル群が28%(70/249例)、対照群は36%(90/250例)で、被覆コイル群の絶対低下率は7.0%であったが、有意差はみられなかった(オッズ比:0.73、95%信頼区間:0.49~1.1、p=0.13)。

直近の破裂動脈瘤患者に関するサブグループ解析では、有害複合アウトカムの発生率はヒドロゲル被覆コイル群で有意に低下した(オッズ比:2.08、95%信頼区間:1.24~3.46、p=0.014)。血管造影画像上の脳動脈瘤再発率はヒドロゲル被覆コイル群で8.6%減少した(同:0.7、0.4~1.0、p=0.049)。

非直近の破裂動脈瘤の患者では、ヒドロゲル被覆コイル群の5例、対照群の1例で原因不明の水頭症が認められた。

著者は、「ヒドロゲル被覆コイルによる動脈瘤破裂の抑制効果および長期的な臨床アウトカムの改善効果は確認できなかったが、脳動脈瘤の再発抑制効果が示唆された」と結論している。

(菅野守:医学ライター)