貧困とアテローム硬化症増加の関係

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2009/11/27

 



虚血性心疾患は社会経済的に恵まれた地域よりも貧困な地域に多い。この健康格差は、現に認知されている心血管の「古典的」リスクファクターでは十分に説明できず、「新興」リスクファクターが同定されつつある。英国・グラスゴー王立病院血管生化学部のKevin A Deans氏らは、貧困と頸動脈エコーによるアテローム硬化症指標(内膜中膜厚とプラークスコア)との関連、そして健康格差が古典的な心血管リスクファクターで説明できるのか、あるいは新興リスクファクターで説明されるのか、住民ベースの横断調査を行った。BMJ誌2009年11月14日号(オンライン版2009年10月27日号)より。

IMTとプラークスコアは最貧地域が有意に大きい




本研究はNHSのGreater Glasgow Health Board地域を対象とし、Scottish Index of Multiple Deprivation 2004でランクづけされた地域から666例が参加した。最も貧困な地域と最も恵まれた地域からほぼ同数ずつ、加えて男女間、年齢層(35~44歳、45~54歳、55~64歳)ごとに調査した。

主要評価項目は、頸動脈エコーで検出された内膜中膜厚(IMT)とプラークスコアとした。

結果、平均年齢と性別で調整されたIMTは、最貧地域の方が最恵地域と比べて有意に大きかった[0.70mm(SD 0.16mm)対0.68mm(SD 0.12mm)、P=0.015]。しかし、サブグループ解析では、両者の差は、男性の最高年齢三分位値(56.3~66.5歳)で認められたにすぎなかった。

最恵地域と最貧地域間の未調整平均プラークスコアの差は、IMTの差より著明だった[最恵地域1.0(SD 1.5)対最貧地域1.7(SD 2.0)、P<0.0001]。加えてプラークスコアの有意差は、男性では2つの高位の年齢三分位値(46.8~56.2歳と56.3~66.5歳、P=0.0073、P<0.001)で、女性は最高年齢三分位値(56.3~66.5年、P<0.001)で認められた。

貧困との関連は多因子的で、古典的・新興リスクファクターだけでは説明できない




男性における最貧・最恵グループ間のIMTの差は、古典的リスクファクター、新興リスクファクター、そして社会経済状態での調整後も有意なままだった(P=0.010)。

両グループ間のプラークスコアの差は、古典的リスクファクターと新興リスクファクターのいずれかで、あるいは組み合わせて補正後も維持された(オッズ比:1.73、95%信頼区間:1.07~2.82)。しかし、古典的リスクファクターと幼少期の社会経済状態とで補正後は、プラークスコアの差は消失した(補正オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.54~1.65、P=0.84)。

これらの調査結果からDeans氏は、貧困は頸動脈のプラークスコアとIMTの増加と関連しているとしたものの、アテローム硬化症と貧困との関連は多因子的であり、古典的あるいは新興リスクファクターによっても適切には説明できないと述べている。