プライマリ・ケア医の疲弊感に対する改善策

提供元:ケアネット

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公開日:2009/10/13

 



バーンアウト(疲弊感)を感じているプライマリ・ケア医に対し、瞑想や自己認識訓練などを含んだ教育プログラムを行うことで、患者への態度や感情障害の程度などが改善することが、JAMA誌2009年9月23/30日号で報告されている。米国ロチェスター大学医学部のMichael S. Krasner氏が、70人のプライマリ・ケア医を対象に行った試験で明らかにした。米国ではプライマリ・ケア医が高いストレスを感じていること、それが疲弊感や消耗感、またケアの質低下に連鎖していることが報告されており、プライマリ・ケア医のおよそ60%が燃え尽き症候群を感じているとの報告はあるものの、それを改善するプログラムやプログラムの評価に関する報告は珍しいという。

週2.5時間の講座を8週間、月2.5時間を10ヵ月実施




Krasner氏らは2007~2008年にかけて、ニューヨーク州ロチェスターのプライマリ・ケア医70人を対象に、CMEコース(continuing medical education)というストレスや燃え尽き症候群の改善を目的とした教育プログラムを行った。当初8週間は、2.5時間/週プラス7時間の集中講座1回(6週と7週目の間に)を行い、その後10ヵ月は2.5時間/月の講座が実施された。プログラムでは、意識の高い瞑想(mindfulness meditation)や自己認識訓練(self-awareness exercises)、意味深長な臨床経験の語り(narratives about meaningful clinical experiences)、話し手の内容をきちんと聞き取る訓練(appreciative interviews)、ディスカッションなどを行った。

同プログラムの開始前と最中、終了後に、5回にわたり、意識の高さや疲弊感の程度などについて自己評価を行った。

「意識の高さ」に大きな改善、バーンアウトでも中程度の改善




70人の参加者のうち、1回目の評価を受けたのは60人、5回目の評価を受けたのは51人だった。

試験開始前と開始15ヵ月後の、「意識の高さ」について見てみると、スコアは45.2から54.1に、大幅に有意に改善した(スコアの改善幅:8.9、95%信頼区間:7.0~10.8)。

マスラック・バーンアウト尺度による評価によって、情緒的疲弊スコアは26.8から20.0に(改善幅:-6.8)、患者に対し非人間的な対応をする離人化スコアは8.4から5.9に(同:-2.5)、個人的達成感のスコアは40.2から42.6へと(同:2.4)、いずれも中程度の改善が見られた。

患者に対する共感度についても、Jefferson Scale of Physician Empathy(JSPE)スコアが111.6から121.2へ(同:4.6)改善した。その他、感情障害の程度や自覚、情緒的安定性などについても、改善が見られ、意識の高さの改善は、感情障害やバーンアウトなどの改善と相関関係が見られた。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)