使用する電子メディアによって子どものメンタルに及ぼす影響は異なる?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/05/05

 

 小中学生では、使用する電子メディアによってメンタルヘルスに及ぼす影響は異なり、特に長時間のSNS利用が最もリスクを高める可能性が報告された。日本体育大学の城所哲宏氏、野井真吾氏らの研究グループが東京都世田谷区の小中学生を対象とした調査データを解析した結果であり、詳細は「Frontiers in Pediatrics」に1月24日掲載された。

 スマホやオンラインゲーム、テレビの視聴などのスクリーンデバイス使用と、子どものうつリスクの関係については、多くの研究が行われている。ただし結果に一貫性がなく、利用するメディアのタイプ、利用時間、調査対象年齢などにより影響が異なるのではないかと考えられている。一方、運動や睡眠がうつリスクを抑制することが知られているが、それらと子どものスクリーンデバイス使用との相互の関連性を検討した研究は少ない。これらの点を明らかにするため、研究グループでは、東京都世田谷区の小中学生を対象とした大規模な悉皆調査を実施した。

 調査対象は、東京都世田谷区内にある公立小中学校の8~15歳の全生徒3万4,643人。アンケート調査は2019年3月に実施された。回答に不備のあるものなどを除外し、2万3,573人(小学生1万5,726人、中学生7,847人)のデータを解析した。

 スクリーンデバイス使用については、1週間当たりのテレビ、ビデオ、DVDの視聴時間、オンライン動画のプレー時間、SNSの利用時間を把握した(SNSは中学生のみで調査)。運動時間は、学校外でスポーツや運動をする時間を質問し、中央値で2群に分けて比較した。睡眠時間は、国際的なガイドラインに則して、13歳以下は9~11時間、14歳以上は8~10時間を至適範囲と定義した。

 うつレベルは、米国精神医学会の質問票を基に日本学校保健会が作成した日本語版を用いて評価。小学生男子の3.3%、同女子2.7%、中学生男子9.5%、同女子8.8%がうつ状態と判定された。

 ロジスティック回帰分析により交絡因子を調整し、スクリーンデバイス使用時間とうつ状態に該当することとの関連を検討。その結果、SNSの1週間の利用時間が2時間以上の場合、中学生の男子・女子ともにうつリスクが有意に高いことが明らかになった。それに対してテレビの視聴は、小学生の女子を除いて、うつリスクが低いことと有意に関連していた。オンラインゲームについては、1週間に2時間以上プレーする中学生女子でのみ、うつリスクが高いことと有意に関連していた。オンライン動画については、中学生男子ではうつリスクの低さと有意に関連していた一方、1週間に2時間以上視聴する小学生男子、1週間に30~60分視聴する小学生女子で、うつリスクの高さと有意な関連が見られた。

 次に、運動時間の長短で2分した上で、利用しているスクリーンデバイスのタイプごとにうつレベルを比較すると、交絡因子調整後も運動時間の長い群の方がうつレベルが低い傾向が認められた。例えば、オンライン動画を視聴している小学生男子のうつレベルのスコアは、運動時間が長い群の方が有意に低かった。中学生女子では、利用スクリーンデバイスのタイプにかかわらず、運動時間が長い群のうつレベルが有意に低かった。中学生男子でもほぼ同様の結果であり、小学生女子でのみ、運動時間によるうつレベルへの有意な影響が見られなかった。

 続いて、睡眠時間がガイドラインの推奨を満たすか否かで二分して検討すると、小学生の男子のみ、睡眠時間が十分であることがうつレベルの低さと有意に関連していたが、その他のカテゴリーでは有意な関連がなかった。

 まとめると、スクリーンデバイスの利用と子どものうつとの関連は、デバイスのタイプや年齢・性別、利用時間によって異なることが明らかになった。全体的に、SNSなどの新しいタイプのデバイスの使用はうつレベルの高さと関連しており、一方でテレビの視聴はうつレベルの低さと関連していた。

 著者らは、「子どもたちが利用するスクリーンデバイスはますます多様化しながら、生活の一部として定着してきている。子どものメンタルヘルスへの影響の理解には、それらのタイプや属性の違いを考慮することが不可欠と考えられる」と述べている。

[2022年4月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら