短時間のPET-CT検査でホルモン分泌異常による高血圧を診断

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/02/09

 

 10分程度の非侵襲的なPET-CT検査により、高血圧の原因となっている腫瘍を、従来のカテーテルを用いた侵襲的な検査と同程度の精度で検出できることが、新たな研究で示された。研究グループは、この検査により見つけた腫瘍を外科的に切除することで、このタイプの高血圧を治療できるようになる可能性があるとしている。英ロンドン大学クイーン・メアリー校教授のMorris Brown氏らが実施したこの研究結果は、「Nature Medicine」に1月16日掲載された。

 高血圧の大部分はその原因が不明であり、患者は生涯にわたって薬物療法が必要である。ただし、同大学の研究グループが実施した過去の研究では、高血圧患者の5~10%は、副腎でのアルドステロンの過剰分泌(原発性アルドステロン症)を原因とすることが明らかにされている。アルドステロンは体内のナトリウムや水分の量を調節する働きを持つホルモンだが、過剰に分泌されると体内に塩分や水分が蓄積して高血圧を引き起こす。このタイプの高血圧患者では一般的な降圧薬が奏効せず、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇する。原発性アルドステロン症の原因は、副腎の良性腫瘍(通常は片側性)か、両側の副腎でのアルドステロン分泌細胞の過形成である。前者の場合には、副腎摘出による治療が可能だが、標準的な術前検査が侵襲的であるため、実際に手術を受ける患者は1%足らずにとどまっているのが現状である。

 今回の研究では、アルドステロン合成酵素に結合する、11Cで標識したメトミデートを用いたPET-CT検査による副腎腫瘍検出の精度を、副腎静脈サンプリングとの比較で検討した。副腎静脈サンプリングは、カテーテルを左右の副腎の静脈に挿入して採血を行い、アルドステロンが主にどちらの副腎から分泌されているのかを調べる侵襲的な検査法である。対象は、原発性アルドステロン症を原因とする高血圧が医師により確認された患者128人(年齢中央値52歳、男性68%)で、検査の所要時間は10分程度であった。

 その結果、左右どちらかの副腎に高い確率で腫瘍が存在すると判定された患者の割合は、本検査では52%(67/128人)、副腎静脈サンプリングでは45%(58/128人)であった。両検査とも陽性だった患者は30%、どちらかの検査のみが陽性だった患者は37%で、全体では86人(67%)の患者が片側性の副腎腫瘍を持つと診断された。

 これら86人のうち、78人(61%)が腫瘍のある副腎を摘出する手術を受けた。その6カ月後、77人の患者で手術の成功に関する生化学的または臨床的転帰を1つ以上達成したことが確認された。このPET-CT検査の精度は、従来の副腎静脈サンプリングと同等であったが、患者に痛みやストレスを与えることなく短時間で実施でき、失敗例もなかったという。

 こうした結果を受けてBrown氏は、「アルドステロン産生を促す副腎腫瘍は非常に小さいため、通常のCTスキャンでは容易に見逃されてしまう。11C標識メトミデートの投与により腫瘍を数分間光らせることで、それを高血圧の明確な原因として検出することができ、多くの場合は治療も可能になる」と説明している。そして、「これまでは、検査が困難なだけでなく、検査を受けることも容易ではなかったため、原発性アルドステロン症患者の99%は診断がなされないままだった。この状況が改善されることを期待している」と付け加えている。

[2023年1月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら