小児期に親が喫煙していた男性の子どもは喘息リスクが高い

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/10/18

 

 子どもの周りでタバコを吸うと、受動喫煙によって子どもの健康を害してしまうことはよく知られている。しかし影響はそれにとどまらず、その子どもが成長後に授かる子ども、つまり、喫煙者の孫にまで害が及ぶ可能性が報告された。そして、受動喫煙しやすい環境で育った子供が成人後に喫煙者となった場合には、その子(孫)への影響はさらに強まるという。メルボルン大学(オーストラリア)のJiacheng Liu氏らの研究によるもので、詳細は「European Respiratory Journal」に9月14日掲載された。

 Liu氏らはこの研究のために、タスマニア縦断健康調査(Tasmanian Longitudinal Health Study;TAHS)のデータを使用した。TAHSは、1968年にスタートした世界でも最大規模かつ追跡期間の長い呼吸器関連の疫学研究の一つであり、現在も続けられている。

 今回の研究では1,689人の子どもとその父親、さらに父方の祖父が調査対象とされた。主な調査内容は、以下の3点。1点目は、調査対象の子どもが7歳になるまでに喘息を発症したかどうか。2点目は、子どもの父親が15歳になるまでに、タバコを吸う親の下で育ったかどうか。そして3点目は、父親が喫煙者かどうか。

 解析の結果、父親が子どもの頃に受動喫煙にさらされていた場合、その子どもの非アレルギー性喘息のリスクは、受動喫煙にさらされていなかった父親の子どもに比べて59%高いことが明らかになった。また、子どもの頃に受動喫煙にさらされていた人は、自分自身が喫煙者になりやすく、そのような人の子どもの喘息のリスクはさらに大きくなり、受動喫煙にさらされていなかった父親の子どもとの差は72%に上った。

 この研究結果について、論文の共著者の一人である同大学のShyamali Dharmage氏は、「小児期の受動喫煙によるダメージがどのように次の世代に引き継がれていくのかは定かでないが、エピジェネティックな変化が関係している可能性があると考えている」と述べている。エピジェネティックな変化とは、「タバコの煙などの環境要因が遺伝子と相互作用して、遺伝子の働きが変化することであり、その変化も遺伝する可能性がある。しかし、世代ごとにその変化を部分的に元に戻すことができる場合もある」と同氏は説明する。そして「タバコの煙によるエピジェネティックな変化が起きると、その男児が成長したときに生成される精子に影響が生じる可能性があり、その変化は次の世代の子どもへと引き継がれるのではないか」とDharmage氏は推測している。

 Liu氏、Dharmage氏らの研究チームは、小児期に受動喫煙にさらされた男性の子どもに見られる喘息の病状が、成長過程でどのように変化するのか、成人後にも続くのかという点を、継続的に調査することを計画している。また、父親の小児期の受動喫煙の影響が、その他の疾患、例えばアレルギー疾患や喘息以外の呼吸器疾患のリスクを高めているか否かの確認も、次の研究テーマに含まれているとのことだ。

[2022年9月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら