関節リウマチ治療薬が新型コロナの入院患者を救う可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/10/07

 

 世界中の医師が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の治療に苦慮する中、希望を抱かせる研究結果が報告された。関節リウマチ治療薬のバリシチニブ(商品名オルミエント)が、COVID-19入院患者の死亡リスクを低減させる可能性のあることが明らかになった。米ヴァンダービルト大学メディカルセンター教授のE. Wesley Ely氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Respiratory Medicine」に9月1日掲載された。

 Ely氏は、「レムデシビルやデキサメタゾン、トシリズマブによる治療は進歩してはいるものの、入院患者の死亡率低減という点では、依然として満足できる成果は得られていない」と述べる。

 こうした状況の中で実施された今回の研究では、アジア、ヨーロッパ、北米、南米12カ国に所在する101カ所の病院で酸素投与を受ける入院患者1,525人が対象とされた。対象者は2020年6月11日から2021年1月15日までの間に、デキサメタゾンなどのステロイド系抗炎症薬とレムデシビルなどの抗ウイルス薬による標準治療に加え、1日1回、最長14日間にわたって、抗炎症作用のあるバリシチニブ(764人)、またはプラセボ(761人)を投与される群にランダムに割り付けられた。高流量酸素投与、非侵襲的陽圧換気、侵襲的人工呼吸器管理あるいはECMOの使用に至った患者、または投与開始から28日目までに死亡した患者の割合を複合主要評価項目、28日目までの全死亡率を副次評価項目、さらに投与開始60日目までの全死亡率を探索的評価項目とした。

 その結果、複合主要評価項目は、バリシチニブ群で27.8%だったのに対して、プラセボ群では30.5%だったことが明らかになった(オッズ比0.85、P=0.18)。また、投与開始28日目までの全死亡率は、バリシチニブ群で8%(62/764人)、プラセボ群で13%(100/761人)であり(オッズ比0.57、P=0.0018)、28日目までの全死亡リスクはバリシチニブ群で38.2%低かった。60日目までの全死亡率も、バリシチニブ群で10%(79/764人)、プラセボ群で15%(116/761人)と、バリシチニブ群で有意に低いままだった(ハザード比0.62、P=0.0050)。

 新型コロナウイルス肺炎や急性呼吸不全などの深刻な有害事象は、バリシチニブ群の15%、プラセボ群の18%に生じた。治療中に発生した感染症と静脈血栓塞栓症イベントの割合は、両群で同じだった(両群とも、感染症16%、肺静脈血栓症イベント3%)。

 Ely氏は、「新型コロナウイルスに感染して入院した患者は、しばしば激しい炎症を起こして、急性呼吸促迫症候群、敗血症性ショックなどから多臓器不全に陥り、死に至ることがある」と説明する。この研究でも、バリシチニブを投与された群の死亡リスクは低減したものの、一部の患者は重症化が続いたという。同氏は、「いったん疾患が進行し始めると、バリシチニブでそれを完全に食い止めることは難しい。しかし、たとえ容体が徐々に悪化し続けても、バリシチニブを追加することで、死を食い止めることができる」と話している。

 なお、バリシチニブは、レムデシビルとの併用の有無にかかわらず、COVID-19治療への緊急使用を米食品医薬品局(FDA)により認可されている。

[2021年9月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら