最新技術が解き明かす古代ファラオの死の謎

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2021/03/20

 

 最新技術を用いた研究により、古代エジプトのファラオ(王)の死に関する謎が解明された。1881年にデルエルバハリの隠し墓で発見されたセケンエンラー・タア2世(タア2世)のミイラをCTスキャンで調べることにより、タア2世の死の詳細が明らかになったという。カイロ大学(エジプト)教授のSahar Saleem氏と元エジプト考古学省大臣のZahi Hawass氏によるこの研究結果は、「Frontiers in Medicine」に2月17日掲載された。

 タア2世は古代エジプト第17王朝のファラオで、異民族のヒクソスが約1世紀にわたり王国全土を占領していた時期(紀元前1650~1550年頃)に、下エジプトを短期間(紀元前1558〜1553年頃)支配した。タア2世はヒクソスを駆逐するための戦いに挑んだが、その最中に捕らえられ、死亡した。死因は、ヒクソス王自身の手によって処刑されたというものが有力であるが、側近の陰謀により就寝中に暗殺されたという説などもある。1960年代にX線などを用いて行われた調査では、タア2世は頭部に複数の深い傷を負っていたのに対し、身体には目立った外傷がなかったことが報告されている。

 Saleem氏らは今回、タア2世のミイラをCTスキャンにより調べるとともに、その結果を考古学の文献や、デルエルバハリで見つかった、アジアの青銅製の武器と照合した。これらの武器は、ヒクソスがエジプトを征服していた時代に作られたことが判明している。

 その結果、これまでに報告されていた頭部の外傷についての新たな事実が明らかになっただけでなく、防腐処理(エンバーミング)によって巧みに隠されていた頭蓋骨右側面の骨折も発見した。また、ミイラの変形した手から、捕らえられたタア2世が、後ろ手に縛られていたことが推測された。さらに、頭部の傷痕が、5種類のヒクソスの武器の形状と一致することも判明した。そのほか、死亡時の王の年齢は40歳前後であったことも推定された。

 以上のことからSaleem氏らは、「タア2世はエジプト解放のために、危険を顧みず自ら最前線で戦っていたようだ」と推測。そして、「捕虜に対する処刑は、通常は1人が行うものであり、さまざまな角度から攻撃することはあっても、5種類もの異なる武器を使ったりはしない。タア2世は、複数の人物の攻撃により、儀式的に処刑された可能性がある」と述べている。

 また、タア2世のミイラ化についても新たな情報が得られた。これまで、ミイラの状態の悪さから、遺体の防腐処理は作業場から離れた設備の乏しい場所で急遽行われたと考えられていた。しかし、今回の分析から、タア2世の頭部の傷を処理材の層で隠すという高度な方法が使われていることが判明した。これはタア2世のミイラ化が、設備の整ったミイラ工房で行われたことを示唆する。

 Saleem氏とHawass氏は、CTスキャンを用いた考古学研究を開拓し、これまでハトシェプスト女王、ツタンカーメン、ラムセス3世、トトメス3世、ラムセス2世などの著名なファラオについての研究を進めてきた。Saleem氏は、「CTスキャンにより、エジプトの長い歴史の要となるポイントについて、新たな情報を得ることができる」と述べ、「タア2世の死により、継承者たちが奮起してエジプト統一に向けた戦いを続け、新王国の始まりにつながった」と説明している。

[2021年2月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら