EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の標準治療の1つとして、オシメルチニブが用いられている。しかし、1次治療でオシメルチニブ単剤を用いた進行NSCLC患者を対象とした後ろ向き観察研究(OSI-FACT)において、PD-L1高値の集団は無増悪生存期間(PFS)が不良であったことが報告された1)。ただし、OSI-FACTはPD-L1発現状況の影響を検討することを目的とした研究ではなかった。そこで、StageIVの肺がん患者6,751例の大規模コホート研究(REAL-WIND/WJOG1512L)のデータを用いて、初回治療としてオシメルチニブ単剤を用いたNSCLC患者の治療効果と、PD-L1発現状況の関係を検討する研究(WJOG20724L)が実施された。本研究の結果を坂田 能彦氏(済生会熊本病院)が第66回日本肺癌学会学術集会で報告した。
対象は、2016年1月~2020年12月にREAL-WINDへ登録されたStageIVの肺がん患者6,751例のうち、初回治療でオシメルチニブ単剤が投与されたEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者486例。このうちPD-L1不明例(101例)を除いた385例(コホートB)、およびコホートBからOSI-FACTの重複症例を除いた200例(コホートA)が解析対象となった。対象患者をPD-L1発現状況で2群(TPS≧50%、TPS<50%)に分類し、治療成績を比較した。主要評価項目はPFS、副次評価項目は全生存期間(OS)、PFS率、OS率などとした。未調整の解析に加えて、逆確率重み付け法(IPTW)や傾向スコアマッチング法(PSM)を用いて背景因子を調整した解析も実施した。
主な結果は以下のとおり。
・PD-L1発現状況(TPS≧50%/TPS<50%)は、コホートAが48例(24%)/152例(76%)、コホートBが83例(22%)/302例(78%)であった。
・PD-L1高発現群(TPS≧50%)は低発現/陰性群(TPS<50%)と比較して、男性、PS1以上、喫煙歴あり、EGFR uncommon変異が多かった。
・コホートAにおけるPFSは、未調整解析でPD-L1高発現群が低発現/陰性群と比較して有意に不良であり、PSM、IPTWを用いた解析でも同様の傾向であった。詳細は以下のとおり。
<未調整>
PFS中央値:10.8ヵ月vs.20.1ヵ月(ハザード比[HR]:1.95、95%信頼区間[CI]:1.30~2.92、p=0.001)
1/2年PFS率:45.6%/24.8%vs.76.2%/41.6%
<PSM>
PFS中央値:10.5ヵ月vs.19.7ヵ月(HR:1.74、95%CI:0.97~3.11、p=0.061)
1/2年PFS率:43.7%/26.2%vs.78.0%/34.2%
<IPTW>
PFS中央値:10.8ヵ月vs.19.8ヵ月(HR:1.91、95%CI:1.13~3.23、p=0.016)
1/2年PFS率:45.6%/24.8%vs.79.2%/36.6%
・コホートAにおけるOSも、未調整解析でPD-L1高発現群が低発現/陰性群と比較して有意に不良であり、PSM、IPTWを用いた解析でも同様の傾向であった。詳細は以下のとおり。
<未調整>
OS中央値:26.7ヵ月vs.32.8ヵ月(HR:1.77、95%CI:1.02~3.09、p=0.044)
1/2年OS率:80.2%/57.9%vs.91.5%/80.5%
<PSM>
OS中央値:23.7ヵ月vs.32.8ヵ月(HR:1.68、95%CI:0.81~3.52、p=0.17)
1/2年OS率:80.2%/48.9%vs.91.5%/69.7%
<IPTW>
OS中央値:26.7ヵ月vs.32.8ヵ月(HR:1.69、95%CI:0.82~3.48、p=0.15)
1/2年OS率:80.2%/57.9%vs.94.1%/81.9%
・コホートBにおいても、PFS、OSはいずれの解析もコホートAと同様の結果であった。
本結果について、坂田氏は「いずれの患者集団においても、PD-L1高発現は初回治療でオシメルチニブ単剤が投与された患者の有効性に、負の影響を及ぼすことが追認された。EGFR遺伝子変異陽性例において、PD-L1高発現は治療戦略を検討するうえで考慮するべき因子である」と述べた。
(ケアネット 佐藤 亮)