アルコール使用障害は、世界で1億人に影響を及ぼしているといわれており、救急外来への受診につながるケースも少なくない。近年の研究では、救急外来でnaltrexoneを投与することで飲酒行動を効果的に抑制することが示唆されているが、十分に活用されているとはいえない。米国・ペンシルベニア大学のIvan Covarrubias氏らは、救急外来においてnaltrexone投与開始を検討する際、臨床医と患者が直面する障壁およびnaltrexone投与を促進するための介入を特定するため、本研究を実施した。The Journal of Emergency Medicine誌オンライン版2025年1月23日号の報告。
コンテキストインタビューを用いて、救急外来における業務を観察し、2023年11月に臨床医、病院職員、患者を対象に自由記入式インタビューを行い、アルコール使用障害に対する薬物療法開始の阻害因子を特定しようと試みた。2024年3月、ペンシルバニア大学医療システムの職員160人を対象に、混合調査法による調査を実施した(回答率:61%)。本調査では、アルコール使用障害治療のさまざまな要素に対する満足度、潜在的な介入の影響を10段階評価により評価した。
主な結果は以下のとおり。
・重大な障壁として、アルコール使用障害のスクリーニングプロトコールの欠如、臨床医による治療選択肢の認知度の低さ、緊急を要さない治療の延長傾向などが明らかとなった。
・患者の訴えは、救急外来の不快感、治療選択肢への不慣れさ、フォローアップケアへのアクセス困難が挙げられた。
・臨床医は、naltrexone投与に関連する問い合わせへの対応に関して最も不安を感じていた。
・効果的な介入として、退院患者に対するnaltrexone処方セットの設定、継続的なケアを促進するための薬物使用ナビゲーターの活用などが特定された。
著者らは「救急外来におけるアルコール使用障害の治療の課題は、多面的な問題であり、患者と臨床医の双方に対する教育的な介入が求められる。さらに、臨床医と患者の双方にとって、プロセスの簡素化および合理化を行う必要がある」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)