認知症患者が一人歩き中に行方不明になると、事件・事故に巻き込まれるケースがあるため、家族などから行方不明者届(旧捜索願)が警察に出されることも多い。
警察庁は、6月5日に「令和6年における行方不明者届受理等の状況」を公表した。この中で、認知症による行方不明者数は令和6(2024)年で1万8,121人おり、平成27(2015)年の1万2,208人より緩やかに増加していることが判明した。
認知症関連の行方不明者は約1週間以内に多くが見つかっている
警察に届出のあった行方不明者数全体は8万2,563人(前年比7,581人減少)であり、男性5万2,502人(63.6%)、女性3万61人(36.4%)と男性のほうが多かった。年代別では10~20代が多く、全体の約4割を占めていた。原因・動機では、疾病関係が2万3,663人で1番多く、家庭関係が1万2,466人、事業・仕事関係が6,722人と続いていた。
認知症に関連する行方不明者は1万8,121人(前年比918人減少)であり、過去10年でおおむね上昇していた。男性は1万12人(55.3%)で、女性は8,109人(44.7%)で男女比には大きな差はなかった。
また、警察への届出受理から所在確認までの期間は、受理当日が1万2,476人(死亡確認99人)、2~3日が4,156人(死亡確認175人)、4~7日が195人(死亡確認80人)と約1週間以内に見つかるケース多かった。
認知症関連の行方不明者捜索にGPS発信機器やドローンが有効
今回のレポートでは、令和6(2024)年中に受理した認知症に関連する行方不明者のうち死亡者数は491人であり、その77.8%に当たる382人が行方不明となった場所から5km圏内で死亡が確認されていた。
今後、認知症に関連する行方不明者の届出を受理し、その立ち回り見込先などが判然としない場合は、「行方不明となった場所周辺での死亡事例が多いことを勘案し、迅速な発見活動を展開することが重要」とレポートでは示唆している。
また、死亡確認場所は、河川・河川敷(115人)、用水路・側溝(79人)、山林(71人)で全体の54.0%を占めていた。これらの場所は、人的捜索が困難な場合も多く、発見の遅延が行方不明者の生命に大きく影響する。そのため行方不明者の早期発見・保護のためには、「GPS発信機器などによる位置情報の早期把握や、無人航空機(ドローン)による捜索が効果的である」と結んでいる。
(ケアネット 稲川 進)