東洋医学では舌の周囲に歯形がついた歯痕舌は体液貯留を示し、高血圧と関連する可能性があるが、歯痕舌と血圧の関連を調べた疫学研究はほとんどない。今回、順天堂大学の謝敷 裕美氏らが日本の地域住民を対象にした東温スタディにおいて検討したところ、潜在的交絡因子の調整後も歯痕舌のある人は収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)が高いことが明らかになった。American Journal of Hypertension誌オンライン版2025年4月17日号に掲載。
本研究は東温スタディ(愛媛県東温市における保健事業の評価、ならびに循環器疾患発症にかかる新たな危険因子の検索を目的とするコホート研究)に参加した30~84歳の1,681人を対象とし、歯根舌を舌画像により評価し、歯痕舌あり群と歯痕舌なし群に分けた。SBP≧140mmHgまたはDBP≧90mmHgまたは降圧薬の使用を高血圧と定義した。多変量調整ポアソン回帰分析を用いて、年齢、性別、肥満度を含む潜在的交絡因子を調整後、歯痕舌と血圧の関連を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・参加者のうち、326人(19.6%)が歯痕舌で、624人(51.6%)が高血圧であった。
・多変量調整後のSBPの平均値は、歯痕舌なし群、歯痕舌あり群の順に126.6mmHg、129.7mmHg(p<0.01)、DBPの平均値は順に76.5mmHg、78.0mmHg(p=0.02)であった。
・歯痕舌なし群に対する歯痕舌あり群の多変量調整有病率比(95%信頼区間)は、高血圧、SBPおよびDBPの最高四分位順に、1.21(1.04~1.41)、1.50(1.23~1.84)、1.25(1.03~1.53)であった。
(ケアネット 金沢 浩子)