胃がん患者向けGLが19年ぶり改訂、2023年3月発表のエビデンスも反映

提供元:ケアネット

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公開日:2023/04/14

 

 2023年3月に「患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版」が発刊された。2004年版以来、19年ぶりの改訂となる。そこで、金原出版は2023年3月31日に、本ガイドラインの作成委員長を務めた寺島 雅典氏(静岡県立静岡がんセンター胃外科/副院長)を講師に迎え「胃がんの標準治療の今-開発の歴史と今後確立が予想されるエビデンス」をテーマにセミナーを開催した。

患者さんに正しい情報へアクセスしてもらいたい

 胃がんについては、2004年版を最後に患者さん向けのガイドラインが作成されていなかった。しかし、寺島氏は「患者さんがインターネットなどで目にする情報には不適切なものが多く、正しい情報にたどりつけない方も多い」と言う。そこで、「正しい情報を提供するには、患者さん向けのガイドラインが必要だと感じ、胃癌治療ガイドライン 第6版1)の内容を基に作成することにした」と述べた。

 「患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版」は、第1章では「胃はどこにあるのか」といった基本的なことから、「胃がんはどのようながんか」「胃がんはどのように進展するか」といった内容まで、胃がんのことが総合的にわかるように作成されている。寺島氏は「この部分が患者さんへの説明に非常に役立つと考えている」と話した。第2章では、医師向けの「胃癌治療ガイドライン 第6版」の内容を患者さんがわかるように平易な言葉で説明されている。第3章では、患者さんが疑問に感じることについて、多くのQ&Aが用意されている。

 本ガイドラインは患者団体からの意見も取り入れて作成されており、用語の解説を豊富に取り入れるなど、患者さんにとって理解しやすいように作成されているのも特徴である。

胃がんの最新のエビデンスを反映

 胃がんの外科的治療は目覚ましい進歩を遂げている。以前は、開腹手術が一般的で、進行がんの一部では拡大手術が推奨されていた。しかし、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)胃がんグループの進行胃がんに対する臨床試験2-5)において、進行胃がんに対する外科手術の意義が見直され、侵襲を減らすことの重要性が注目されるようになった。そしてStageIの胃がんでは、腹腔鏡下胃切除が開腹胃切除と比べて、無再発生存期間に関して非劣性であるというエビデンス(JCOG0912)6)などを基に、腹腔鏡下胃切除が標準治療の1つとして推奨されるようになった1)。さらに、2023年3月にはStageII/IIIの胃がん患者を対象とした幽門側胃切除術に関する臨床試験(JLSSG0901)において、腹腔鏡下胃切除は開腹胃切除と比べて無再発生存期間が非劣性であったという結果が報告された7)。「患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版」では、この2023年3月発表のエビデンスも盛り込まれ、腹腔鏡下胃切除術の解説が掲載されている。また、さらに進歩したロボット支援手術も推奨される時代になっており、これについても本ガイドラインで解説されている。

 薬物治療についても進歩が著しく、抗PD-L1抗体薬の使用が推奨され、今後も新しい分子標的治療薬が登場する予定である。そこで本ガイドラインでは、2021年発刊の「胃癌治療ガイドライン 第6版」の情報だけでなく、WEB速報版8)の内容も取り入れられている。具体的には「図30 推奨されるがん薬物療法」において、「HER2陰性の治癒切除不能な進行・再発胃がん/胃食道接合部がんにおけるニボルマブと化学療法を含む治療」が、1次化学療法の選択肢に追加されている。

 そのような背景を踏まえて、「Q3 HER2、CPS、MSIって何ですか?」など、用語の解説も多く掲載されている。寺島氏は「患者さんが治療を理解・納得したうえで、医療者と治療方法を決めていく、Shared Decision Making(SDM)が極めて重要である」と述べ、本ガイドラインを活用してほしいと語った。

ガイドライン普及のために

 本ガイドラインの患者さんへの普及のために医療者に期待することを聞くと、寺島氏は、「看護師をはじめとするコメディカルの方も手に取って、理解を深めてほしい。そうすることで患者さんの説明もよくわかるようになるため、日々の業務に活用できると考えている。そして、コメディカルの方からも患者さんへこのガイドラインを紹介していただけるとありがたい」と述べた。

 なお、金原出版では国立がん研究センター中央病院に、本邦初の医学書の自動販売機を設置し、がん患者さん向けのガイドラインを販売する取り組みを行っている。

書籍紹介『患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版』

■参考文献
1)日本胃癌学会編集. 胃癌治療ガイドライン 医師用 2021年7月改訂 第6版. 金原出版;2021.
2)Sasako M, et al. N Engl J Med. 2008;359:453-462.
3)Sasako M, et al. Lancet Oncol. 2006;7:644-651.
4)Sano T, et al. Ann Surg. 2017;265:277-283.
5)Kurokawa Y, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2018;3:460-468.
6)Katai H, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020;5:142-151.
7)Etoh T, et al. JAMA Surg. 2023 Mar 15. [Epub ahead of print]
8)日本胃癌学会. 胃癌治療ガイドライン 医師用 第6版 学会WEB速報

(ケアネット 佐藤 亮)