日本語でわかる最新の海外医学論文|page:860

H.pyloriの除菌治療、アジア人胃がん発生を低下/BMJ

 ヘリコバクター・ピロリ(以下、H.pylori)の除菌治療が、健康な無症候性感染者の胃がん発生を予防するのかについて検討した、英国・セントジェームズ大学病院のAlexander C Ford氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、アジア人については減少するという限定的で中程度のエビデンスが示されたことを報告した。理論上では、除菌治療により胃がんの発生率は低下するが、報告されているエビデンスは相反するものだった。BMJ誌オンライン版2014年5月20日号掲載の報告より。

特発性肺線維症患者へのアセチルシステインは本当に有用か/NEJM

 肺機能障害が軽度~中等度の特発性肺線維症患者について、努力性肺活量(FVC)の維持に関してアセチルシステイン(商品名:ムコフィリンほか)は、プラセボと比べて有意なベネフィットをもたらさなかったことが、Fernando J. Martinez氏らIdiopathic Pulmonary Fibrosis Clinical Research Networkによる無作為化試験の結果、明らかにされた。これまでアセチルシステインは特発性肺線維症の治療として有用であることが示唆されていたが、プラセボ対照の試験データが不足していた。NEJM誌2014年5月29日号(オンライン版2014年5月18日号)掲載の報告より。

アセチルシステインは特発性肺線維症に“効く”のか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(209)より-

特発性肺線維症に対する治療薬としてピルフェニドンが登場するまで、ステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステイン(N-アセチルシステイン:NAC)は世界的に広く用いられていた(現在も汎用されているが)。ただ、これらの薬剤もその効果は限定的であり、現時点で特発性肺線維症に対する使用を強く推奨しているガイドラインは存在しない。ただ、それでもなお「これらの薬剤が少なくとも悪影響は与えることはないだろう」という思いが臨床医の胸の内にあった。ステロイドや免疫抑制剤による日和見感染などの合併症があったとしても、炎症・線維化を抑制する効果はそれを上回るベネフィットがあると考える研究者も少なくなかった。

特発性肺線維症へのニンテダニブ、有効性、安全性を確認/NEJM

 特発性肺線維症患者においてニンテダニブ(BIBF 1120)は、努力性肺活量(FVC)の低下を有意に抑制することが、英国・サウサンプトン大学病院のLuca Richeldi氏らが行った2件の再現性無作為化二重盲検第III相試験(INPULSIS-1、INPULSIS-2)の結果、報告された。同低下の抑制は、疾患進行抑制と一致していることも示された。安全性に関しては、下痢と関連する頻度が高かったが、試験薬の投与中止となった割合は5%未満であったという。ニンテダニブは複数のチロシンキナーゼを標的とする細胞内阻害薬で、第II相試験では、特発性肺線維症患者に対し150mgを1日2回投与が肺機能低下と急性増悪を抑制することが示されていた。NEJM誌2014年5月29日号(オンライン版2014年5月18日号)の掲載報告。

変形性股関節症への理学療法、害あって利なし/JAMA

 痛みを伴う変形性股関節症成人患者への理学療法は、痛みや機能性の改善には結びつかないことがオーストラリア・メルボルン大学のKim L. Bennell氏らが行った無作為化試験の結果、示された。また軽度ではあったが有害事象の頻度が高く、著者は、「同患者に対する理学療法プログラムの有益性について疑問を呈する結果となった」とまとめている。症候性変形性股関節症に対してガイドラインでは、薬物治療ではなく理学療法を用いる保存治療が推奨されている。しかし理学療法は、コストがかかることに加えて有効性のエビデンスがそれほど確立されておらず限定的だった。JAMA誌2014年5月21日号掲載の報告より。

ニンテダニブは福音となりうるか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(208)より-

ご存じのとおり特発性肺線維症は予後不良の進行性疾患であり、年単位、早い患者であれば、月単位で肺の線維化が進行する。これに対してこれまで数々の治療が試みられてきたが、実臨床でその効果を実感できるほどの治療薬が21世紀に入ってもまだ登場していないのが現状である。

抗精神病薬注射剤を患者は望んでいるのか

 持効性注射剤(LAI)の抗精神病薬は統合失調症の治療アウトカムを改善するが、患者の注射への恐怖心や、アドヒアランスが得られないことから、しばしばその処方を見合わせるケースがある。複数の研究で、処方における文化や人種の差が示されている。米国・カリフォルニア大学のSteven G. Potkin氏らは、LAIの抗精神病薬に対する統合失調症患者の認識について、文化および人種差の観点から検討を行った。その結果、LAIに対して好意的な反応を示した患者は少なく、残りは「中立的/消極的」あるいは「不向き」との懸念を示した患者が同数を占めた。ヨーロッパ系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、ラテン系アメリカ人それぞれ40例のデータを解析したが、サンプルサイズに限界があり文化や人種に特化した結論は得られなかった。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2014年5月20日号の掲載報告。

安全性情報(2014年6月3日改訂指示分)

2014年6月3日改訂指示分 【成分名】 ・アラセプリル ・イミダプリル塩酸塩 ・エナラプリルマレイン酸塩 ・カプトプリル ・キナプリル塩酸塩 ・シラザプリル水和物 ・テモカプリル塩酸塩 ・デラプリル塩酸塩 ・トランドラプリル ・ベナゼプリル塩酸塩 ・ペリンドプリルエルブミン ・リシノプリル水和物 ・アジルサルタン ・イルベサルタン ・オルメサルタンメドキソミル ・カンデサルタンシレキセチル ・テルミサルタン ・バルサルタン ・ロサルタンカリウム ・アジルサルタン・アムロジピンベシル酸塩 ・イルベサルタン・アムロジピンベシル酸塩 ・イルベサルタン・トリクロルメチアジド ・オルメサルタンメドキソミル・アゼルニジピン ・カンデサルタンシレキセチル・アムロジピンベシル酸塩 ・カンデサルタンシレキセチル・ヒドロクロロチアジド ・テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩 ・テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド ・バルサルタン・アムロジピンベシル酸塩 ・バルサルタン・シルニジピン ・バルサルタン・ヒドロクロロチアジド ・ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド ・ロサルタンカリウム ・ロスバスタチンカルシウム ・イミダフェナシン ・フィルグラスチム(遺伝子組換え)[バイオ後続品を含む] ・レノグラスチム(遺伝子組換え) ・ナルトグラスチム(遺伝子組換え)

喘息患者へのビタミンD3、治療失敗や増悪を改善しない/JAMA

 成人喘息患者に対するビタミンD3の投与は、ステップ1の吸入ステロイド薬治療の失敗や増悪を改善しなかったことが、米国・ワシントン大学のMario Castro氏らが行った無作為化試験VIDAの結果、示された。著者は「症候性の喘息患者に対するビタミンD3投与の治療戦略について、裏づけは得られなかった」とまとめている。喘息などの疾患において、ビタミンD不足と有害転帰との関連が示唆されている。しかし、経口ビタミンD3の摂取により、吸入ステロイド薬治療を受けているビタミンD不足の喘息患者のアウトカムが改善するかについては、明らかではなかった。JAMA誌2014年5月28日号掲載の報告より。

抗TSLP抗体薬、アレルゲン誘発性喘息に有望/NEJM

 新規開発中の喘息治療薬AMG157について、軽症アレルギー性喘息患者に対する、抗アレルゲン誘発性喘息反応が確認された。カナダ・マックマスター大学のGail M. Gauvreau氏らが実証検証試験として行った二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。AMG157は、アレルギー性炎症にかかわる重大なサイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に結合し、受容体との相互作用を妨げる抗ヒトTSLPモノクローナル免疫グロブリンG2λとして開発中である。今回の結果について著者は「アレルギー性喘息患者における、アレルゲン誘発性の気道反応および持続性気道炎症に、TSLPが重要な役割を果たしていることが確認された。抗TSLP抗体薬が臨床的価値を有するかは確認できなかったが、所見は、さらなる検討を行い、喘息コントロール不良の患者へのAMG157の作用機序と有益性調査の実施を支持するものである」とまとめている。NEJM誌2014年5月29日号(オンライン版2014年5月20日号)掲載の報告より。

徴候と症状と心不全の入院歴でHFpEFは定義できない―ナトリウム利尿ペプチド上昇で定義したHFpEFにはスピロノラクトンが有効である可能性(コメンテーター:原田 和昌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(207)より-

左室駆出率が保持された症候性心不全(HFpEF)の有効な治療薬はまだない。抗アルドステロン薬のスピロノラクトンは、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の予後を改善することからガイドラインで推奨されている。

マグネシウム摂取と脳内NMDA受容体の関与が明らかに

 これまで、うつ病の一因としてマグネシウム(Mg2+)の1日摂取量の減少が示唆されており、前臨床試験において食事性マグネシウム摂取の制限(MgR)により、うつ病様行動を増強させることが実証されていた。オーストリア・ウィーン大学医学部のMaryam Ghafari氏らは、マウス実験の結果、MgRは脳内のGluN1を含むNMDA受容体複合体を変化させることを報告した。Brain Structure and Function誌オンライン版2014年5月8日号の掲載報告。