日本語でわかる最新の海外医学論文|page:721

リアルワールドの成績はどう読み解くべき?

 無作為化比較試験(RCT)の結果を基に承認された薬剤が、実臨床でも開発試験と同様の成績が得られるかを確認するためのリアルワールド・エビデンス。その特性や限界、結果を読み解く際の注意点について、井上 博氏(富山県済生会富山病院 院長/富山大学名誉教授)が、6月8日都内にて、バイエル薬品株式会社主催の会合で講演した。

“テレヘルス”は第4の医療になりうるか/BMJ

 心血管疾患高リスクの患者に対しデジタル医療技術を駆使した“テレヘルス(telehealth)”による介入は効果があるのか。英国・ブリストル大学のChris Salisbury氏らが、プラグマティックな多施設共同無作為化試験を行った結果、エビデンスベースに基づくテレヘルスでも臨床的効果は小さく、平均リスクの全体的改善には結び付かなかったことが示された。ただし、一部の心血管リスク因子や健康行動、またケアサポート・アクセスの患者認識について改善が認められたという。慢性疾患の増大で、低コストでケア提供を拡大するための新たな医療供給や自己管理サポートの方法が必要とされている。政策立案者の間では、テレヘルスの利用拡大が有効な策になると楽観視されているが、テレヘルス介入効果のエビデンスはあいまいで、リアルワールドでの効果のエビデンスはほとんど示されていないのが現状だという。BMJ誌オンライン版2016年6月1日号掲載の報告。

検診マンモグラフィの読影順序が読影の精度に関係するか(解説:矢形 寛 氏)-548

マンモグラフィを読影する際に問題となるのが、見落としと拾い過ぎである。基本的な読影能力はもちろんであるが、読影時の集中力によっても左右されるかもしれない。本報告は、マンモグラフィが読影の順序によって、精度が変わるかどうかを検証したものである。

うつ病の寛解率、職業で差があるか

 うつ病は、仕事のストレスにより悪化し、職場における障害の主な原因である。有効な治療を行っても、最初の治療で寛解する患者は全体の3分の1に過ぎず、約半数は治療に反応しない。職業レベルは、一般集団における健康アウトカムの確かな予測因子であるといわれている。イタリア・ボローニャ大学のLaura Mandelli氏らは、大規模国際サンプルを用い、うつ病の治療反応と職業レベルの潜在的な関連について調査した。European neuropsychopharmacology誌オンライン版2016年5月19日号の報告。

深部静脈血栓症後の弾性ストッキング、2年以上が理想的/BMJ

 近位深部静脈血栓症(DVT)患者に対する弾性ストッキングによる圧迫療法(ECS)は、2年以上が理想的であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学のG C Mol氏らが多施設単盲検非劣性無作為化試験OCTAVIAの結果、報告した。1年治療群の2年治療群に対する非劣性が認められなかったという。ECSはDVT患者の血栓後症候群予防のために用いられるが、至適期間は明らかではない。現行ガイドラインでは、24ヵ月間の使用としているが、最近の試験で、この現行戦略に疑問符を呈し、より短期間とする提案がなされていた。BMJ誌オンライン版2016年5月31日号掲載の報告。

Ozanimodの潰瘍性大腸炎に対する寛解および維持療法の有用性(解説:上村 直実 氏)-547

潰瘍性大腸炎に関しては5-アミノサリチル酸、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤、血球成分除去療法など、さまざまな治療が寛解導入および寛解維持を目的として使用されており、最近では腸内フローラの調整を目的とした抗生物質や便移植の有用性も報告されている。

喘息様症状、COPD増悪に影響せず

 喘息様症状を有するCOPD患者は、適切な治療の下では良好な臨床経過をたどることが、北海道大学医学部の鈴木 雅氏により報告された。American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌オンライン版2016年5月25日号掲載の報告。  COPD患者の中には、喘息の臨床的診断こそつかないものの、喘息様症状を有する患者が存在する。しかし、こうした喘息様症状とCOPDが重複する病態の臨床的意義は明確ではない。本研究では、北海道COPDコホート研究による10年間の追跡結果を用いて、適切な治療を行った場合に喘息様症状がCOPD患者の臨床経過にどのような影響をもたらすのかを評価した。

「バースデー・ブルー」で自殺が1.5倍に:大阪大学

 誕生日に自殺が増える「バースデー・ブルー」の仮説が日本人にも当てはまることを裏付ける統計結果が発表された。大阪大学の松林 哲也氏と米国・シラキュース大学の上田 路子氏は、1974~2014年に自殺や事故(交通事故、転落事故、溺死、窒息死など)により死亡した日本人207万3,656人の死亡記録をポアソン回帰分析を用いて検討した。その結果、自殺や事故による死亡者数が他の日と比べて誕生日に多いことが明らかになった。Social Science & Medicine誌オンライン版2016年4月29日号掲載の報告。

父母両方の喫煙で出生時の低身長リスクが増大

 両親の喫煙が出生アウトカムに及ぼす影響を調査した結果、母親の喫煙は出生時の体重および身長と有意に関連し、両親とも喫煙していた場合、低身長のリスクが増加することが、岡山県立大学の井上 幸子氏らの研究で明らかになった。Journal of public health誌オンライン版2016年5月24日号に掲載。

カテーテル関連尿路感染症への国家的予防プログラム/NEJM

 米国で国家的プロジェクトとして行われているカテーテル関連尿路感染症(UTI)の予防介入プログラムが、成果を挙げていることが、米国・ミシガン大学のSanjay Saint氏らにより報告された。全体で発生率比は14ポイント低下し、また集中治療室(ICU)以外の部門では、カテーテル関連UTIの発生低下のみならず尿カテ自体の利用も有意に減少したことが認められたという。NEJM誌2016年6月2日号掲載の報告。

急性内科疾患への長期抗血栓療法は有効?/NEJM

 Dダイマー高値の急性内科疾患患者に対し、経口抗Xa薬のbetrixaban長期投与とエノキサパリン標準投与について比較検討した結果、有効性に関する有意差は認められなかった。英国キングス・カレッジ・ロンドンのAlexander T. Cohen氏らが国際多施設共同二重盲検ダブルダミー無作為化試験「APEX」の結果、報告した。急性内科疾患患者は、静脈血栓症(VT)の長期的リスクを有するが、抗血栓療法の適切な継続期間については明らかになっていない。NEJM誌オンライン版2016年5月27日号掲載の報告。

感情変動は食事にどの程度影響するのか

 感情のシグナルに反応しての食物摂取は、不健康な食事の摂取と関連しているといわれている。米国・セント・ボナベンチャー大学のGregory J Privitera氏らは、肥満やうつ病において、低/高カロリー食品を選択できるビュッフェスタイルを利用した場合に、食物摂取に差を生じるかを検討した。Journal of health psychology誌オンライン版2016年5月20日号の報告。

パブコメ募集「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」

 日本老年精神医学会は6月8日、都内で開いたプレスセミナーにおいて、「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」の改訂に当たり、2回目のパブリックコメントの募集を行うと発表した。コメントは学会ホームページ上で受け付けており、募集期間は6月13日午後~27日(最終日は17時まで)となっている。