日本語でわかる最新の海外医学論文|page:576

とうとうCONSENSUS試験が古典になる日が来るのか?(解説:絹川弘一郎氏)-966

今年のAHAは豊作であった。Late breakingでDECLARE試験の発表があり、そしてsacubitril/バルサルタン(ARNi:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)の新たなエビデンスがこのPIONEER-HF試験1)で加わった。2014年にARNiがACE阻害薬とのRCT(PARADIGM-HF試験)2)でHFrEFの予後を改善することが示されたのは衝撃であり、1987年CONSENSUS試験3)以来王座を死守してきたACE阻害薬の牙城が崩れたかに思えた。しかし、FDAの認可基準はあくまでもRAS阻害薬を含むGDMTを4週間以上施行してなお心不全症状の残ったHFrEF患者に対するACE阻害薬またはARBからの切り替え、というものであり、de novoの患者に最初から投与することはできなかった。

双極性障害に併存する不安障害の治療

 不安障害は、双極性障害患者において最もよく認められる併存疾患である。米国・パデュー大学のCarol A. Ott氏は、不安障害の治療に関して、現時点での情報をまとめた。The Mental Health Clinician誌2018年11月1日号の報告。  不安障害の治療に関する主なまとめは以下のとおり。 ・併存する不安障害の診断は、双極性障害の症状重症度に有意な影響を及ぼし、自殺念慮のリスクを上昇させ、心理社会的機能やQOLを低下させる可能性がある。 ・CANMAT(Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments)タスクフォースは、2012年に治療法の推奨事項を公表しており、併用治療薬として、特定の抗けいれん気分安定薬と第2世代抗精神病薬を選択肢として挙げている。 ・セロトニン作動性抗うつ薬は、ほとんどの不安障害の治療に対して第1選択薬とされているが、双極性障害患者では問題となることがある。

HPV陽性中咽頭がん、セツキシマブvs.標準レジメン/Lancet

 低リスクHPV陽性中咽頭がんに対して、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンと比較して毒性低下のベネフィットは示されず、腫瘍コントロールに関しては重大な損失をもたらすことが示された。英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らによる第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「De-ESCALaTE HPV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。HPV陽性中咽頭がんの発生は急速に増大しており、とくに若年成人を急襲している。セツキシマブは、標準治療のシスプラチンの毒性を低下しde-escalationな放射線併用療法を可能にするものとして提案されたが、この戦略の有効性に関して無作為化試験に基づくエビデンスはなかった。

不健康な生活様式が重なると女性の糖尿病リスク5倍以上に/BMJ

 交替制の夜勤労働と不健康な生活様式はいずれも2型糖尿病のリスクと関連し、これらが併存すると、個々の要因を単独に有する場合に比べリスクが相加的に高くなることが、米国の女性看護師を対象とする調査の解析で示された。中国・華中科技大学のZhilei Shan氏らが、BMJ誌2018年11月21日号で報告した。交替制の夜勤労働者は不健康な生活様式の頻度が高いとする報告は多い。また、交替制夜勤労働と不健康な生活様式は、いずれも2型糖尿病のリスクを増大させることが知られている。

Harmony Outcomes試験はGLP-1受容体作動薬のポジショニングに調和をもたらしたのか?(解説:住谷哲氏)-965

GLP-1受容体作動薬を用いた心血管アウトカム試験(CVOTs)はこれまでにELIXA(リキシセナチド)、LEADER(リラグルチド)、SUSTAIN-6(セマグルチド)、そしてEXSCEL(weeklyエキセナチド)の4試験が報告されているので本試験が5試験目になる。これまでの試験の結果についてはすでにメタ解析が報告されており1)、おそらく週1回製剤albiglutideによる本試験を加えた5試験のメタ解析の結果が近日中に報告されると思われる。来年には同じく週1回製剤であるデュラグルチドのREWINDの結果が報告される予定であり、すべての試験を合わせると参加患者は合計50,000人以上になり1つのデータベースを形成すると言ってよい。

脳梗塞、70歳未満なら180分で再開通できれば9割転帰良好

 急性期脳梗塞に対する血行再建治療では、若年で再開通までの時間が短いほど転帰がよく、とりわけ70歳未満ならば180分未満で再開通できれば、9割で良好な転帰が得られる。大阪大学医学部附属病院の藤堂 謙一氏らは、こうした結果をRESCUE Japan Registry2のデータを用いた解析で明らかにした。2018年11月22日~24日、仙台で開催された日本脳神経血管内治療学会で発表した。  解析は、2014年10月から2017年1月に46施設で登録された急性脳主幹動脈閉塞2,399例のうち、緊急血行再建治療を実施しTICI(Thrombolysis In Cerebral Infarction)スコア2b以上の有効再開通を獲得した1,094例を対象に行われた。70歳未満、70歳以上80歳未満、80歳以上の各年齢層において、最終確認から再開通までの時間カテゴリごと(180分未満、180分以上240分未満、240分以上)の転帰を比較。3ヵ月後のmRS (Modified Rankin Scale)2以下を転帰良好とし、性別、発症前mRSスコア、NIHSSスコア、ASPECTS(またはDWI-ASPECTS、pc-ASPECTS)、心房細動の有無、搬入時血圧・血糖値で調整し、転帰良好に対する再開通遅延(1カテゴリ遅延)のオッズ比を算出した。

統合失調症患者に対するベンゾジアゼピン使用と肺炎リスク

 統合失調症患者では、ベンゾジアゼピンの投与量や使用頻度が一般集団よりも高い。台湾・台北市立連合医院のSheng-Yun Cheng氏らは、統合失調症患者におけるベンゾジアゼピン使用と肺炎発症リスクとの関連を調査するため、ネステッド・ケース・コントロール研究を実施した。Psychopharmacology誌2018年11月号の報告。  台湾の全民健康保険研究データベースを用いて、2000~10年の統合失調症コホートより3万4,929例を抽出した。統合失調症コホート内より、肺炎患者2,501例およびマッチした対照群9,961例(比率1:4)を抽出した。ベンゾジアゼピン使用は、薬剤、治療期間、1日投与量で分類した。ベンゾジアゼピン使用と肺炎リスクとの関連性は、条件付きロジスティック回帰モデルを用いて分析した。

サルコペニア嚥下障害は誤嚥性肺炎などの入院が引き金に

 元気だったはずの高齢者が、入院後に低栄養で寝たきりになるのはなぜか。2018年11月10、11日の2日間、第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会が開催された。2日目に行われた「栄養の視点からみたサルコペニア・フレイル対策」のシンポジウムでは、若林 秀隆氏(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科)が「栄養の視点からみたサルコペニアの摂食嚥下障害対策」について講演した。  “嚥下障害があり、食べられないから低栄養になる”という流れはごく普通である。若林氏は、「低栄養があると嚥下障害を来すことがあり、これはリハビリテーションだけでは改善することができない。つまり、栄養改善が要」と、本来とは逆ともとれる低栄養のメカニズムについて解説した。

ピーナッツアレルギーに有効な新経口免疫療法薬/NEJM

 開発中のピーナッツ由来の生物学的経口免疫療法薬AR101は、高度ピーナッツアレルギーの小児・若年者において、プラセボと比較し試験終了時の食物負荷試験で用量制限を要する症状を伴わず高用量のピーナッツ蛋白の摂取が可能となり、ピーナッツ曝露中に発現する症状の重症度が低下することが認められた。米国・エモリー大学医学校のBrian P. Vickery氏らが、AR101の有効性と安全性を検証した第III相試験「Peanut Allergy Oral Immunotherapy Study of AR101 for Desensitization:PALISADE」の結果を報告した。ピーナッツアレルギーは、生命を脅かすこともある、予測不能なアレルギー反応のリスクがあるが、現状では承認された治療選択肢はない。NEJM誌2018年11月18日号掲載の報告。

EPAとアスピリン、単独/併用の大腸腺腫予防効果は?/Lancet

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)もアスピリンも、大腸腺腫を有する患者割合の低下と関連していなかった。英国・リーズ大学のMark A. Hull氏らが、EPAとアスピリンの単独または併用投与の大腸腺腫予防効果を検証した、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「seAFOod Polyp Prevention trial」の結果を報告した。EPAとアスピリンはともに、大腸がんの化学的予防に関するproof of concept試験で、有効性と優れた安全性プロファイルが示されていた。Lancet誌オンライン版2018年11月19日号掲載の報告。

過剰処方の解消に薬剤師が一役買った(解説:折笠秀樹氏)-964

薬剤の過剰投与はポリファーマシーとも呼ばれ、日本でも社会問題になっている。とくに、高齢者で問題が大きい。なぜ問題かというと、過剰投与によってさまざまな有害事象が生じるからである。極論としては、薬剤の過剰投与が死因の上位にあるという意見も聞かれる。欧米では「ビアーズ(Beers)基準」が作られ、使用を避けるべき薬剤の一覧表が示されている。薬とお酒を掛けて「Beers」、ビール基準と洒落たのかとも思ったけど、実は「Beers」とは提唱した人の名前らしい。

免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとnab-PTXの併用は未治療の進行/転移性乳がんの予後を改善する(解説:矢形寛氏)-962

乳がん領域での免疫チェックポイント阻害薬の有効性に関する初のP3 RCTの報告である。化学療法は腫瘍抗原の放出と免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を高めるようであり、とくにタキサンはToll様受容体の活性化と樹状細胞の活動性を促進するため、併用効果が期待されてきた。本試験ではnab-PTXとヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブの併用効果が検証され、追跡期間約1年でPFSの有意性が示された。また、PD-L1が免疫染色にて腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上発現がみられるものは、より有効性があるようであった。Grade3以上のアテゾリズマブに関連する有害事象はとくにないようであった。OSはmarginalであったが、症例数の設定とTNBCという一般的に予後が短い特殊な集団であることを考えると、OSへの寄与も十分見込めるのではないかと考えられる。

ローランドてんかんに対するレベチラセタムと従来薬の有効性比較

 レべチラセタム(LEV)はカルバマゼピン(CBZ)やバルプロ酸ナトリウム(VPA)と比較して、良性ローランドてんかんにおけるローランド発射(RD)を抑制する効果が優れていることが、山梨大学の金村 英秋氏らの研究によって明らかになった。Seizure誌2018年11月号に掲載。  中心・側頭部に棘波をもつ良性ローランドてんかんは、小児の特発性部分てんかんの1つである。本研究では、小児における非定型進化を予防するためのLEVの有効性を、従来の抗てんかん薬(AED)と比較するために、小児の良性ローランドてんかんにおける発作間脳波(EEG)上のRDの低減における、従来薬であるCBZおよびVPAとLEVの有効性を比較した。

日本人高齢者のうつ病に関連する社会的要因~AGESプロジェクト

 日本人高齢者のうつ病発症を予防するためには、生物学的および心理学的要因を考慮しながら、縦断的データを用いて、うつ病の社会的決定要因を明らかにする必要がある。そのような決定要因の特定は、社会政策を通じて、より積極的な介入を可能にするかもしれない。日本大学の三澤 仁平氏らは、日本人高齢者のうつ病に関連する社会的要因を明らかにし、これに関連する政策的意義を検討するため、本研究を行った。Aging & mental health誌オンライン版2018年11月8日号の報告。

減量後の低炭水化物食、代謝量を増大/BMJ

 低炭水化物ダイエットは、体重減少維持中のエネルギー消費量を増大することが明らかにされた。米国・ボストン小児病院のCara B. Ebbeling氏らが行った無作為化試験の結果で、BMJ誌2018年11月14日号で報告された。エネルギー消費量は、体重の減少とともに低下し、体重再増加を促す要因となるが、この代謝反応に、長期間にわたる食品構成がどのような影響を与えるのかは明らかになっていなかった。今回の検討で示された関連性は、炭水化物-インスリンモデルで一貫性を持ってみられ、著者は「示された代謝効果は、肥満治療の成功を改善する可能性があり、とくにインスリン分泌能が高い人で効果があると思われる」と述べている。

オメガ3脂肪酸、心血管疾患・がんの1次予防効果なし?/NEJM

 n-3脂肪酸サプリメントはプラセボとの比較において、主要心血管イベントやがん発症の低下に結びつかないことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E. Manson氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VITAL試験」の結果、示された。魚介類に含まれるn-3(オメガ3とも呼ぶ)脂肪酸は、心血管疾患やがんリスクを抑制することが、いくつかの観察試験で示されている。しかし、これらリスクが通常の一般集団において、n-3脂肪酸サプリメントにそのような効果があるのかは明らかではなかった。NEJM誌オンライン版2018年11月10日号掲載の報告。

フルベストラント+パルボシクリブはOSも延長しうる(解説:矢形寛氏)-963

フルベストラント+パルボシクリブがフルベストラント単独に比べPFSを延長することはすでに示されている。今回は最終結果ではなく、生存者が40%になったところでの解析である。OSにおいて統計学的有意性はないものの、6.9ヵ月の絶対差が認められた。あらかじめ計画されたサブグループ解析では、過去に内分泌療法の感受性があった患者で、OSに10.0ヵ月の実質的な差がみられた。 本研究における主要評価項目はPFSであり、症例数もPFSを基準として設定しているため、副次評価項目であるOSをみるには絶対数が少ない。しかし、大規模な症例数での臨床試験は困難であり、PFSの有意性をみつつ、少ない症例数からのOSへの影響をみていく必要がある。臨床的感覚でも過去の内分泌療法薬に感受性があった患者での効果はより大きく、その点でも本結果はリーズナブルと思われる。より長期的な観察での生存率への影響をみたい。

新たな免疫CP阻害薬《私を食べて》-さまざまながん腫に対する有用性を示唆(解説:大田雅嗣 氏)-961

NEJM誌11月1日号に「CD47 Blockade by Hu5F9-G4 and Rituximab in Non-Hodgkin’s Lymphoma.」のタイトルで論文が掲載された。スタンフォード大学のWeissmanらのグループの長年にわたる基礎研究が実を結び治療薬として脚光を浴びることとなった。CD47(インテグリン関連蛋白)はマクロファージ、樹状細胞などが介するphagocytosisの調節機能を担う蛋白で種々の細胞表面に発現している。CD47は免疫担当細胞の細胞表面膜の受容体の1つであるSIRPα(signal regulating protein α)のリガンドでもあり、双方の結合によりphagocytosisを抑制する“do not eat me”シグナルを伝達することが判明しており、腫瘍細胞は免疫担当細胞による捕食から身を守るシステムを有している。

日本における非定型抗精神病薬による悪性症候群~医薬品副作用データベース

 慶應義塾大学の安齋 達彦氏らは、日本における非定型抗精神病薬使用に関連する有害事象の悪性症候群に関する報告を評価した。日本の医薬品副作用データベースを用いて、実臨床における非定型抗精神病薬の単剤療法および併用療法での悪性症候群発生について調査を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2018年10月29日号の報告。  1つ以上の非定型抗精神病薬またはハロペリドールの使用に関連する有害な薬物反応報告を分析した。定型抗精神病薬を使用しない非定型抗精神病薬の単剤療法および併用療法、ハロペリドール単剤療法後の悪性症候群発生率のオッズ比を、多重ロジスティック回帰を用いて推定した。

ARTでリスク増、HIV患者の奇異性結核関連IRISの予防には?/NEJM

 抗レトロウイルス療法(ART)は、結核菌感染を併発したCD4低値のHIV感染患者の死亡率を抑制するが、奇異性結核関連免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)のリスクを増加させる。南アフリカ共和国・ケープタウン大学のGraeme Meintjes氏らは、奇異性結核関連IRISの予防にprednisoneの4週間投与が有効であり、重症感染症やがんのリスクの上昇は認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2018年11月15日号に掲載された。奇異性結核関連IRISは、抗結核薬の投与を受けたHIV患者に対し、早期ARTを開始後に発現する結核の再発または新たな炎症所見で特徴付けられる免疫病理学的応答である。観察研究の統合解析では、HIV患者の18%にみられるとされる。