日本語でわかる最新の海外医学論文|page:577

ウィーニング困難患者、非侵襲的換気への切り換えは有用か/JAMA

 自発呼吸トライアルに失敗し人工換気を必要とする患者において、早期に抜管して行う非侵襲的換気は、人工換気から離脱するまでの期間を短縮しないことが示された。英国・ウォーリック大学のGavin D. Perkins氏らによる無作為化試験「Breathe試験」の結果で、JAMA誌2018年11月13日号で発表された。先行研究で、侵襲的人工換気からのウィーニングが難しい成人患者において、非侵襲的換気が早期離脱を容易とする可能性が示唆されていたが、その効果について、ICU入室患者集団では確認されていなかった。

ネットワークメタ解析で評価した帯状疱疹ワクチンの有効性と安全性(解説:小金丸博氏)-959

帯状疱疹は、神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化でおこる皮膚感染症である。一生涯で4分の1の人が発症するリスクがあり、発症者の3分の2は50歳以上である。高齢になるほど罹患率や死亡率が上昇し、帯状疱疹後神経痛といった日常生活に支障を来す合併症もあるため、ワクチンによる予防が推奨される。帯状疱疹を予防するためのワクチンには、弱毒生ワクチンとアジュバント組換え型サブユニットワクチンの2種類がある。多くの先進国では50歳以上の成人に対して弱毒生ワクチンが導入されているが、70歳以上では有効性が低下することや、免疫不全者に対して接種できないなどの問題点があった。近年になって、カナダ、米国、ヨーロッパ、日本で新しいワクチンであるアジュバント組換え型サブユニットワクチンが認可されてきているが、弱毒生ワクチンとアジュバンド組換え型サブユニットワクチンの有効性をhead-to-headで直接比較した研究はない。

小児のアトピー性皮膚炎、慢性化の関連因子が判明

 小児のアトピー性皮膚炎(AD)の慢性化に関する因子はよくわかっていない。デンマーク・コペンハーゲン大学のSunna Thorsteinsdottir氏らは、ADに関与する既知の遺伝子変異、父親の喘息およびADの既往、社会的地位の高さ、診断時のHanifin & Rajka診断基準の基本項目と小項目、ならびに発症時の重症度が、13歳まで持続したADに関連していることを明らかにした。著者は、「これらの所見は、個々の患者で疾患の経過を評価するための臨床診療に適用可能である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年11月14日号掲載の報告。

長期ベンゾジアゼピン使用者における認知症リスク~メタ解析

 ベンゾジアゼピン(BDZ)と認知症リスクに関する報告には、相反するエビデンスが存在する。中国・四川大学のQian He氏らは、BDZの長期使用と認知症リスクとの関連を調査するためにメタ解析を行った。Journal of clinical neurology誌オンライン版2018年10月26日号の報告。  2017年9月までの関連文献をPubMed、Embaseデータベースよりシステマティックに検索を行った。文献検索は、BDZの長期使用と認知症リスクとの関連を分析した観察研究にフォーカスした。プールされた率比(RR)および95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて評価した。結果のロバスト性は、サブグループ解析および感度分析で確認した。

アテゾリズマブ+CBDCA+nab-PTX、進行肺がん1次治療でPD-L1発現によらずPFS延長(IMpower130)/ESMO2018

 StageIV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるカルボプラチンとnab-パクリタキセルの併用療法へのPD-L1阻害薬アテゾリズマブの上乗せ効果を検討した第III相IMpower130試験の結果、アテゾリズマブ併用群でPD-L1発現状態にかかわらず、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが発表された。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、AUSL della Romagna-RavennaのFederico Cappuzzo氏が発表した。

拡張型心筋症の治療は回復後中止してよいか/Lancet

 症状および心機能が回復した拡張型心筋症患者では、薬物療法を中止すべきか否かが問題となる。英国・王立ブロンプトン病院のBrian P. Halliday氏らは、治療を中止すると再発のリスクが高まるとの研究結果(TRED-HF試験)を示し、Lancet誌オンライン版2018年11月11日号で報告した。拡張型心筋症患者のアウトカムはさまざまで、多くは良好な経過をたどる。回復した患者における治療中止を前向きに調査したデータはないため、専門家のコンセンサスは得られておらず、明確な推奨を記載したガイドラインはないという。

薬剤師主導の介入で、高齢者への不適正処方が改善/JAMA

 薬剤師の主導による教育的介入により、高齢者への不適正処方が、通常治療に比べて抑制されるとの研究結果が、カナダ・モントリオール大学のPhilippe Martin氏らが実施したD-PRESCRIBE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年11月13日号に掲載された。北米では、高齢の外来患者において、不適正処方率が高い状況が続いているという。不適正処方は、薬剤による有害事象、転倒、認知機能障害、緊急入院のリスクの増大を招く可能性がある。

心房細動をどこまで追いかけるか?(解説:香坂俊氏)-960

 心房細動(AF)が塞栓性脳梗塞の原因であることは広く知られている(最近は国家試験でもよくこの内容が出題される)。そして、脳梗塞ハイリスク患者(CHADSスコア 2点以上など)に抗凝固療法を行うと、その発症を60~70%(!)カットできることも知られている。このことを踏まえて、心房細動を早期に見つけようという動きが世界的に盛んになっている。従来からの心筋梗塞や脳梗塞の予防というと、血圧を下げる、コレステロールを下げる、運動する、などという項目が並ぶことが多かった。が、汎用性は高いものの、これらの内容でカットできるイベント発症リスクは10~20%程度であり、この数値と比べるとハイリスクAF症例に対する抗凝固療法の強さは際立つ。

在宅フレイル患者、6割に眼科的問題

 オランダ・アムステルダム自由大学のRuth van Nispen氏らは、訪問看護師(home healthcare nurse)によって在宅医療を受けた、在宅フレイル高齢者の眼科スクリーニングを調査した。その結果、対象者の60%が眼科的問題を抱えており、その多くは眼科医に認識されていたものの、20%超の患者は眼科的問題について医師らに認識されていなかった。著者は、「訪問看護師による基本的な眼科スクリーニングは、年齢に関連した視力低下の負担を減らす有用な手段となり、回避可能な失明を削減し、WHOのVISION 2020イニシアチブに貢献する可能性がある」と述べている。また、「重要な健康アウトカムは、視覚障害を有することと明らかな関連はなく、むしろ一般的な健康問題と関連していると考えられる」とも結論付けている。Acta Ophthalmologica誌オンライン版2018年10月27日号掲載の報告。

統合失調症の世界的な疫学と負担

 世界の疾病負荷(global burden of disease:GBD)研究より、統合失調症による疾患推定の詳細、疫学、負荷を導き出すことができる。オーストラリア・クイーンズランド大学のFiona J. Charlson氏らは、年齢、性別、年、すべての国における統合失調症の推定有病率、推定負荷についてGBD 2016において報告を行った。Schizophrenia bulletin誌2018年10月17日号の報告。  統合失調症に関連する有病率、発症率、寛解率および/または超過死亡率を報告した研究を特定するため、システマティックレビューを行った。20の年齢層、7つの大都市、21の地域、195の国と地域における統合失調症の有病率を特定するため、包含基準を満たした研究の推定値は、GBD 2016で用いられたベイズ・メタ解析ツールに入力された。統合失調症の急性および慢性状態の疾患推定値は、性別、年齢、年、地域に特有の有病率の掛け合わせや、これらの状態で経験した障害を代表して2つの障害の重み付けにより導いた。

CABGでのグラフト採取、内視鏡下 vs.切開法で長期転帰に差なし/NEJM

 冠動脈バイパス術(CABG)における静脈グラフト採取法について、切開採取と内視鏡下採取で主要有害心血管イベント(MACE)に有意差は確認されなかった。米国・VAボストン・ヘルスケアシステムのMarco A. Zenati氏らが、CABGにおける切開/内視鏡下静脈グラフト採取法の長期臨床アウトカムを評価した多施設共同無作為化試験(Randomized Endovein Graft Prospective trial:REGROUP試験)の結果を報告した。伏在静脈グラフトは、CABGで最も一般的であるが、静脈グラフト採取法の長期アウトカムへの影響はこれまで十分に明らかにはされていなかった。NEJM誌オンライン版2018年11月11日号掲載の報告。

ART未治療HIV-1感染患者へのドルテグラビル+ラミブジン/Lancet

 抗レトロウイルス療法(ART)歴のないHIV-1感染成人患者において、ドルテグラビル+ラミブジンによる48週間の治療は、ガイドラインで推奨される3剤レジメンに対して非劣性であることが検証された。アルゼンチン・ブエノスアイレス大学のPedro Cahn氏らによる多施設共同無作為化二重盲検非劣性第III相試験「GEMINI-1」および「GEMINI-2」の結果で、忍容性プロファイルは類似しており、著者は「2剤レジメンはHIV-1感染患者の初回治療として支持される」とまとめている。2剤レジメンは、現在の標準治療である3剤以上を併用するレジメンと比較して、長期にわたる薬物曝露やARTの毒性を減少させる可能性があると考えられていた。Lancet誌オンライン版2018年11月9日号掲載の報告。

有給休暇とうつ病リスクとの関連

 米国は、労働者の有給休暇取得を保証していない唯一の先進経済国である。実証研究によると、有給休暇は幸福感やストレスと関連しているといわれているが、有給休暇とうつ病との関連性については研究されていない。米国・ノースイースタン大学のDaniel Kim氏は、45~52歳の男女の代表的な労働者3,380例をサンプルとした1979年の全国縦断調査(National Longitudinal Survey of Youth 1979)を用いて、有給休暇の取得がうつ病を予防するかについて検討を行った。Scandinavian journal of work, environment & health誌オンライン版2018年11月7日号の報告。

デュラグルチドのREWIND試験は1次予防の壁を越えるか

 米国・イーライリリー・アンド・カンパニーは、2型糖尿病治療薬デュラグルチド(商品名:トルリシティ)の国際共同試験「REWIND試験」において、主要心血管イベント(MACE※)の発現率を有意に減少させたことを発表した。  対象患者の7割は1次予防例で、GLP-1受容体作動薬では初めて、1次予防例を含む幅広い2型糖尿病患者における心血管(CV)イベントへの影響を評価した試験といえる。

妊娠中の有害なライフイベントと5歳時のADHD症状との関連

 妊娠中の有害なライフイベントの経験は、子供のADHDと関連があるといわれているが、家族性交絡の影響はよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMina A. Rosenqvist氏らは、妊娠中の有害なライフイベントが、子供のADHD症状と関連しているかを明らかにするため、家族性の要因について検討を行った。Journal of Child Psychology and Psychiatry誌オンライン版2018年10月27日号の報告。

高齢者への不適正処方、入院の影響は/BMJ

 高齢者にとって入院は、潜在的な不適正処方の独立関連因子であることが明らかになった。また、不適正処方は、患者の特性にかかわらず入院前より退院後のほうが、増える傾向があることも示されたという。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のTeresa Perez氏らが、アイルランドの一般診療所の診療録を基に縦断研究を行い明らかにしたもので、BMJ誌2018年11月14日号で発表した。著者は、「結果は、高齢者における不適正処方に入院が及ぼす潜在的な悪影響を、考慮し解消する必要性を示すものだった」と述べ、「入院が高齢者の不適正処方にどのような影響を及ぼしているのか、また入院の潜在的有害性を最小限とする方法を明らかにすることが重要である」とまとめている。

SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

 SGLT2阻害薬は、アテローム動脈硬化性心血管疾患や心不全の既往にかかわらず、心不全による入院や腎疾患進行リスクを低減するベネフィットがあることが示された。主要有害心血管イベントリスクについては、ベースライン時にアテローム動脈硬化性心血管疾患が認められた場合に限り、低減効果が認められた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のThomas A. Zelniker氏らが、システマティックレビューとメタ解析を行い明らかにし、Lancet誌オンライン版2018年11月9日号で発表した。SGLT2阻害薬の心血管および腎アウトカムへの特異的効果の程度や、不均一性がベースライン特性に基づくものかどうかは明らかになっていなかった。

HFpEFの治療はいまだ闇の中(解説:絹川弘一郎氏)-958

LVEFの保たれた心不全、HFpEFにはEF低下例とは異なり、生命予後をはじめとした予後を改善する薬剤が知られていない。高齢者に多いHFpEFであるゆえ、とくに長生きしなくても再入院を予防できればいいのでは、または運動耐容能が保たれればいいのでは、などとも考えられてきており、エンドポイントも工夫してさまざまな臨床研究が行われているが、いまだ解決の糸口が見えない。このINDIE-HFpEF試験1)は亜硝酸ナトリウムを吸入させて運動耐容能が改善するかをみたものである。硝酸薬は冠動脈病変のある患者や心不全症例でLVEDPを低下させるが、そのメカニズムは静脈系血管拡張による前負荷軽減と動脈系血管拡張による後負荷がバランスした時に過度な血圧低下なく、症状改善に結びつく。一方で、NOのように肺血管をメインに拡張するような薬剤を左心不全症例に使用すると、肺動脈圧は低下するものの肺血流はむしろ増加して肺うっ血を悪化させる。HFpEFでは血管拡張薬は後負荷軽減が心拍出量増加に寄与する部分が少なく、PAWPを低下させるだけの前負荷軽減がたちまち低心拍出につながる場合が多く、これは要するに拡張期圧容積関係が急峻であるため、極端に血行動態が振れることを意味している。このHFpEFの急峻な拡張期圧容積関係は虚血の際の拡張機能障害とは異なり、直接改善させられる薬剤は知られていない。

ALK陽性肺がんに、第3世代ALK-TKIロルラチニブ発売/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2018年11月20日、「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果で、ロルラチニブ(商品名:ローブレナ錠25mg、同100mg)を発売した。  ALK陽性肺がん治療は2012年のザーコリの発売以降、合計3剤のALK阻害剤が上市され、治療選択肢が広がっている。一方で、遺伝子の耐性変異により既存薬で効果が得られなくなるといった治療上の課題が存在していた。

高齢者のフレイル予防には口腔ケアと食環境整備を

 外来栄養指導は医師の指示があった患者だけ…という状況が変わり始めている。2018年11月10、11日の2日間において、第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会が開催された。2日目に行われた「栄養の視点からみたサルコペニア・フレイル対策」のシンポジウムでは、本川 佳子氏(東京都健康長寿医療センター研究所口腔保健と栄養)が「地域在住高齢者の食品摂取多様性とフレイル重症度との関わり」について講演した。