日本語でわかる最新の海外医学論文|page:175

問題飲酒につながる仕事の特性

 日本では近年、問題飲酒(依存・乱用などの有害な飲酒やアルコールに関連した問題)が増加している。1,500人以上の地方公務員を5年間追跡した結果、男性では職位が低い人やシフト勤務の人、女性では仕事のパフォーマンスの自己評価が低い人ほど、問題飲酒につながりやすいことが明らかとなった。また、男女とも、週に3回以上や1回に2合以上の飲酒が、問題飲酒と関連していた。富山大学学術研究部医学系の茂野敬氏らによる研究であり、「Industrial Health」に5月15日掲載された。

脳梗塞発症後4.5時間以内、reteplase vs.アルテプラーゼ/NEJM

 発症後4.5時間以内の脳梗塞急性期患者において、90日後の良好な機能的アウトカムに関してreteplaseのアルテプラーゼに対する優越性が示された。中国・首都医科大学のShuya Li氏らRAISE Investigatorsが、同国62施設で実施した第III相無作為化非盲検非劣性試験「Reteplase versus Alteplase for Acute Ischemic Stroke trial:RAISE試験」の結果を報告した。アルテプラーゼは脳梗塞急性期再灌流療法の標準的な薬剤であるが、それに代わる血栓溶解薬としてreteplaseをアルテプラーゼと比較した有効性が第II相試験で示されていた。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。

家族性アルツハイマー病、APOE3Chヘテロ接合体も発症遅延に関与/NEJM

 常染色体優性遺伝性アルツハイマー病に関連するPSEN1E280A変異保因家系において、アポリポ蛋白E3クライストチャーチ変異体(APOE3Ch)を1コピー有するヘテロ接合体保有者では認知機能障害の発症が遅いことを、米国・ハーバード大学医学大学院のYakeel T. Quiroz氏らがレトロスペクティブコホート研究で明らかにした。アポリポ蛋白EをコードするAPOEとプレセニリン1をコードするPSEN1の変異はアルツハイマー病のリスクを変化させる。著者らは先行研究にて、PSEN1E280A変異による常染色体優性遺伝性アルツハイマー病患者において、APOE3Chを2コピー有するホモ接合体患者における認知機能障害の発症遅延を報告していた。NEJM誌2024年6月19日号掲載の報告。

メトホルミンに追加すべき薬剤はSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬それともSU薬?(解説:住谷哲氏)

GRADE(Glycemia Reduction Approaches in Diabetes: A Comparative Effectiveness Study)研究は、メトホルミン単剤で血糖管理目標を達成できない患者に追加する血糖降下薬としてインスリン(グラルギン)、SU薬(グリメピリド)、GLP-1受容体作動薬(リラグルチド)またはDPP-4阻害薬(シタグリプチン)の有用性を比較検討したランダム化比較試験である。その結果は、HbA1c低下作用はグラルギンとリラグルチドが他の2剤に比べて優れており、体重減少効果はリラグルチドが最も優れていた。

心臓植込み電気デバイスの革新的一歩 ーモジュール式リードレスペーシング除細動システムー(解説:高月誠司氏)

本邦では1968年ペースメーカー、1996年に植込み型除細動器が保険収載された。これらは静脈内にリードを留置するシステムであるが、リードには断線や感染のリスクがあり、植込み遠隔期のリード抜去はリスクを伴う。そのため経静脈リードのないシステムが開発されてきた。2016年に皮下植込み型除細動器(SICD)、2017年にはリードレスペースメーカーが保険収載されたが、どちらも血管内にリードを留置しないシステムである。ただしSICDは、心室頻拍に対する抗頻拍刺激ができない、徐脈性不整脈に対するペーシングができないという限界があった。SICDとリードレスペースメーカーを組み合わせて植え込み、通信させて使うことにより、SICDの欠点をカバーするのが、モジュラー通信リードレスペーシング・除細動器システムである。MODULAR ATP研究では、本システムのfeasibilityが報告された。151例が6ヵ月のフォローアップ期間を完了し、ワイヤレスデバイスの通信成功率は98.8%であった。151例の患者のうち147例(97.4%)が2.0V以下のペーシング閾値を有しており、抗頻拍ペーシングによる頻拍停止率は61.3%であった。本研究では平均年齢60歳という比較的若い患者群に植え込まれたが、リードレスペースメーカーの電池寿命時の対応など課題もあるが、心臓植込み型電気デバイスにおける画期的な進歩と考える。

統合失調症に対する2種類の長時間作用型注射剤抗精神病薬の併用療法

 統合失調症患者のうち、複数の治療に対し抵抗性を示す患者の割合は、最大で34%といわれている。継続的かつ適切な治療が行われない場合、再発、再入院、抗精神病薬による薬物治療の効果低減、副作用リスクの上昇を来す可能性が高まる。統合失調症患者のコンプラインアンスを向上させ、臨床アウトカムやQOLの改善に対し、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の有用性が示唆されており、治療抵抗性統合失調症患者に対しては、2種類のLAI抗精神病薬を同時に投与することが推奨されている。イタリア・University of Campania Luigi VanvitelliのSalvatore Cipolla氏らは、統合失調症またはその他の精神病スペクトラム障害患者に対する2種類のLAI抗精神病薬併用に関する利用可能なエビデンスのレビューを行った。Brain Sciences誌2024年4月26日号の報告。

アトピー性皮膚炎の症状を改善するレブリキズマブ発売/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎の治療薬である抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース)を2024年5月31日より販売を開始した(製造販売承認日は2024年1月18日、薬価収載日は2024年4月17日)。このレブリキズマブの販売に合わせて、都内で「アトピー性皮膚炎患者さんの抱えるアンメットニーズおよび新たな選択肢」をテーマにメディアセミナーを開催した。  セミナーでは、皮膚科専門医によるアトピー性皮膚炎の現状と課題、患者さんの意識調査の結果、レブリキズマブの臨床試験について説明が行われた。

転移乳がんへのCDK4/6阻害薬+内分泌療法の効果、HER2ゼロと低発現で解析(PALOMA-2、PALOMA-3)

 CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用は、転移を有するHR+/HER2-乳がんに対する1次治療として推奨されているが、HER2低発現とHER2ゼロのそれぞれに対する効果は不明である。今回、米国・Duke University School of MedicineのHuiyue Li氏らが、PALOMA-2試験とPALOMA-3試験の2次解析で、HR+でHER2低発現またはHER2ゼロの転移乳がんにおけるCDK4/6阻害薬と内分泌療法併用の有効性を評価したところ、HER2低発現患者で無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が認められた。一方、HER2ゼロ患者では、前治療の内分泌療法で進行した患者では有意なPFS改善が認められたが、1次治療では有意ではなかった。eBioMedicine誌2024年6月10日号に掲載。

AIを用いた血液検査で肺がんを早期発見

 人工知能(AI)により、血液中のセルフリーDNA(cfDNA)と呼ばれるDNA断片のパターンに基づいて肺がんリスクのある人を特定できることが、新たな研究で示された。論文の共著者で、米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターのVictor Velculescu氏は、「われわれは、医師の診察室で実施可能な簡便な血液検査を手に入れた。この検査により、CT検査で確認すべき肺がんの潜在的な兆候が認められるかどうかが分かる」と話している。研究の詳細は、「Cancer Discovery」に6月3日掲載された。  世界保健機関(WHO)によると、肺がんは世界で最も死亡率の高いがんである。肺がんリスクの高い人では、CTによる肺がん検診を毎年受けることで、まだ治療可能な段階の早期がんを発見でき、がんによる死亡を防ぐことが可能になる。米国予防医療専門委員会(USPSTF)は、喫煙歴がある50〜80歳の人に対し、肺がん検診を年に1回受けることを推奨しているが、実際に毎年、検診を受けているのはそのうちの6〜10%であるという。Velculescu氏は人々が検診を敬遠する理由として、予約から受診までにかかる時間の長さと低線量CT検査での放射線被曝を挙げている。

地中海食で女性の全死亡リスクが23%低下

 地中海式ダイエットを遵守している女性は全死亡リスク、がんや心血管疾患による死亡リスクが低く、この関連にはホモシステインなどの低分子代謝物質の多寡が寄与していることが明らかにされた。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のSamia Mora氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月31日掲載された。  地中海式ダイエットは、植物性食品(ナッツ、種子、果物、野菜、全粒穀物、豆類)を中心に、魚、鶏肉、乳製品、卵などのタンパク源とアルコールを適度に取り、油脂類はオリーブオイルから摂取し、赤肉、加工食品、菓子などは控えるという食事スタイル。既に多くの研究によって、地中海式ダイエットが健康リスクの抑制に有用であることが示されているが、全死亡リスクに関する長期間の追跡データは限られている。また、地中海食がどのように健康リスクを抑制するのかというメカニズムの理解はまだ不足している。これらの疑問点を明らかにするためMora氏らは、同院と米ハーバード大学により女性医療従事者対象に行われている疫学研究(Women's Health Study;WHS)のデータを用いた解析を行った。

不定愁訴を改善する介入法をRCTで検証/Lancet

 持続性身体症状(persistent physical symptoms:PPS)を有する成人に対して、自己管理の支援に重点を置き、症状に関する説明を強化した臨床的介入(symptom-clinic intervention)は、複数のPPSの改善をもたらすことが、英国・シェフィールド大学のChristopher Burton氏らが実施したプラグマティックな多施設共同無作為化並行群間比較試験「Multiple Symptoms Study 3:MSS3試験」で示された。先行研究で、複数のPPSを抱える人々は生活の質が低下し、医療を受ける機会も不足していることが示されているが、地域の総合診療医(GP)によるコミュニケーションの強化に重点を置いた介入が、PPSを改善するかは検討されていなかった。Lancet誌2024年6月15日号掲載の報告。

CAR-T療法、2次がん・T細胞リンパ腫のリスクは?/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法では、2次がん、とくにウイルスベクターの組み込みに関連するT細胞腫瘍のリスクが新たな懸念事項となっているが、米国・スタンフォード大学のMark P. Hamilton氏らは、同大学医療センターで2016年以降にCAR-T細胞療法を行った症例について解析し、2次がんはまれであることを明らかにした。「クローンの関連を明確にし、ウイルスベクターのモニタリングに関する枠組みが必要と考えられる」とまとめている。NEJM誌2024年6月13日号掲載の報告。  研究グループは、2016年2月4日~2024年1月15日に、スタンフォード大学医療センターでCAR-T細胞療法を実施した724例(791件)について、2次がんの発生率を調査した。

リウマチ性心疾患に関する知見を改めて見直した研究(解説:野間重孝氏)

本研究の主な目的は、さまざまな国のさまざまな所得水準におけるリウマチ性心疾患(RHD)の発生率と臨床転機の予測因子を明らかにすることにあったが、同時に現在世界をカバーするRHD患者に関するデータの集積が十分になされていないため、そのコホートを構築することでもあった。実際、今回この研究グループは現代のRHD患者に関する最大のコホートを作成することに成功した。もっとも、類似した研究が行われたことがなかったということはなく、実際このジャーナル四天王でも2017年8月に「世界のリウマチ性心疾患死、25年で半減/NEJM」が掲載されている。この研究では132ヵ国のデータ分析が行われており、十分に大きな研究だったといえるだろう。

抗菌薬持続間欠の比較(解説:栗原宏氏)

 βラクタム系抗菌薬は、最小発育阻止濃度以上の時間(time above MIC)が長いほど効果がある時間依存性であり、頻回投与、長時間投与が望ましいとされている。そのため、究極的に持続投与ならばMIC以上の最適な状態が維持され、より高い治療効果が得られるのではないかと推論される。

「糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル2024」発行/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17~19日に東京国際フォーラムなどで開催された。  2024年1月1日に石川県はじめとする北陸地方を襲った「能登半島地震」は記憶に新しい。災害時に糖尿病患者やその家族へのサポートなどはどのようにあるべきであろう。  本稿では「災害時の糖尿病診療支援と糖尿病対策推進会議の活動」より「災害時糖尿病診療マニュアル2024の概要 総論」(講演者:荒木 栄一氏[熊本大学名誉教授/菊池郡市医師会立病院/熊本保健科学大学健康・スポーツ教育研究センター 特任教授])をお届けする。

初発統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤と経口剤抗精神病薬の有用性〜メタ解析

 長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAI)は、慢性期統合失調症患者の再発および入院の予防に対し、経口抗精神病薬(OAP)よりも優れていることが示唆されているが、初発や最近発症した統合失調症、つまり早期段階の統合失調症患者におけるエビデンスは、明確ではない。イタリア・ヴェローナ大学のGiovanni Vita氏らは、早期段階の統合失調症患者の維持療法におけるLAIとOAP治療による中長期の相対的な有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2024年6月2日号の報告。

フラボノイド積極摂取で高血圧患者の死亡リスクが低減

 米国疾病予防管理センター(CDC)の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた前向き試験によって、総フラボノイド摂取量が多いほど高血圧症患者の全死亡リスクが低減するという正の相関関係が認められたことを、中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのKang Wang氏らが明らかにした。Nutrients誌2024年5月20日号掲載の報告。  フラボノイドは天然に存在するポリフェノール化合物で、主にフラバノン、フラボン、フラバノール(フラバン-3-オール)、フラボノール、イソフラボン、アントシアニジンの6つのサブクラスが含まれる。フラボノイド摂取による抗酸化作用や抗炎症作用、血管拡張作用などが報告されており、高血圧症のリスク低減だけでなく、全死亡率、がん関連死亡率、心血管疾患(CVD)関連死亡率の低下にもつながるというエビデンスが増えつつある。しかし、フラボノイド摂取量の増加が高血圧症患者にどのような利益をもたらすかはいまだ不明である。そこで研究グループは、総フラボノイドおよびフラボノイドサブクラスの摂取と全死亡率、がん関連死亡率、CVD関連死亡率との関係を明らかにし、さらに高血圧症患者にとっての至適な摂取量を確立するために調査を行った。

子どものスクリーンタイム削減に親がすべきこととは?

 常にスマートフォン(以下、スマホ)を手にしている子どもに対してフラストレーションを抱えている親にとって心強い研究結果が明らかになった。子どもをスマホやダブレット、テレビなどのスクリーンベースのデバイス(以下、デバイス)から引き離すことは可能なことが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のグループによる研究で示されたのだ。同研究では、食事中や就寝時にデバイスの使用を禁止すること、親自身が適切にデバイスを使用する姿を子どもに見せることの2つの実践が最も効果的であることが示されたという。この研究の詳細は、「Pediatric Research」に6月5日掲載された。

手術前でもGLP-1受容体作動薬の使用は安全?

 オゼンピックやウゴービなどのGLP-1受容体作動薬を使用している患者が、全身麻酔や鎮静を伴う手術の前に同薬を使用すると、胃の中の残存物を手術中に誤嚥し、窒息する危険性があるとして、手術前に同薬を使用することの安全性に対する懸念が高まりつつある。こうした中、そのような危険性はないことを明らかにしたシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が報告された。この研究では、GLP-1受容体作動薬使用患者における胃排出の遅延は36分程度であり、手術中に危険をもたらすほどではないことが示されたという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のWalter Chan氏らによるこの研究結果は、「The American Journal of Gastroenterology」6月号に掲載された。

社会・環境的な逆境的曝露が心臓病、脳卒中のリスクを上昇

 社会的および環境的に逆境的地域に住む人々は、心臓病や脳卒中の発症リスクが高いという研究結果が、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に3月27日掲載された。  米Lahey Hospital & Medical CenterのSumanth Khadke氏らは、社会的および環境的曝露が、心血管リスクに及ぼす複合的な影響について検討した。分析には、2022年のEnvironmental Justice Index(EJI)、socio-environmental justice index(SE-EJI)、米国の国勢統計区の環境負荷モジュールランクが用いられた。