日本語でわかる最新の海外医学論文|page:150

妊娠高血圧腎症予防のCa補充、低用量vs.高用量/NEJM

 妊娠中のカルシウム補充について、低用量(500mg/日)は高用量(1,500mg/日)に対し、妊娠高血圧腎症のリスクに関して非劣性を示したことが、インドとタンザニアでそれぞれ行われた無作為化試験の結果で示された。また、早産のリスクに関して、インドの試験では非劣性であったが、タンザニアの試験では同様の所見は示されなかったという。インド・St. John's Research InstituteのPratibha Dwarkanath氏らが報告した。世界保健機関(WHO)は、妊娠高血圧腎症のリスク軽減のため、食事からのカルシウム摂取量が少ない住民集団の妊婦に対して、1日1,500~2,000mgのカルシウムを3回に分けて補充するよう推奨している。しかし、服薬アドヒアランスへの懸念と複雑な投与計画に伴う高コストのプログラムのために、現状では高用量カルシウム補充を実施している国は数ヵ国にとどまるという。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

初発統合失調症の臨床症状改善とBMIとの関連

 統合失調症患者は、一般集団と比較し、肥満の有病率が高いことが知られている。これまでの研究では、統合失調症患者における体重増加は、抗精神病薬に対する治療反応と関連していることが報告されている。しかし、統合失調症患者のBMIと治療効果との関連は依然としてよくわかっていない。中国・北京大学のXiaofang Chen氏らは、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者におけるベースライン時のBMIと抗精神病薬治療による臨床症状改善効果との関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者のベースライン時のBMIは、その後の陰性症状改善と関連している可能性が示唆された。Frontiers in Pharmacology誌2023年11月9日号の報告。

ビタミンDは高齢者の風邪を減らせるか、RCTで検証

 毎日のビタミンD補給がビタミンD欠乏症において急性呼吸器感染症のリスクを低下させたという報告がある一方で、異なる集団・条件下で行われた試験では無効という結果が報告されている。米国・ハーバード大学医科大学院のCarlos A. Camargo氏らは、ビタミンDとオメガ3脂肪酸の補給に関する無作為化二重盲検プラセボ対照試験(VITAL)のデータを用いて高齢者の上気道感染症リスクに対するビタミンD補給の影響を評価した。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2023年12月19日号への報告。

母親と子どもの誕生月が同じことが多いのはなぜ?

 フランスとスペインの1000万件以上の分娩データを解析した結果、親と子などの肉親の誕生月は特定の月に集中し、また、親と子の間だけでなくきょうだい間でも誕生月が同じケースは、想定されるよりも多いことが明らかになった。アルカラ大学(スペイン)の疫学者であるAdela Recio Alcaide氏らによるこの研究の詳細は、「Population Studies」に12月13日掲載された。  Alcaide氏らは、スペインの1980〜1983年(210万1,497件)と2016〜2019年(151万817件)の全出生データと、フランスの2000〜2003年(322万1,741件)と2010〜2013年(319万9,344件)の全出生データを収集して分析した。出生データには、親や最も年齢が近いきょうだいのデータも含まれていた。

不規則な入眠覚醒サイクルは認知症リスクを上昇させる?

 入眠と覚醒のサイクルがひどく不規則な人では、より規則的な人に比べて認知症の発症リスクが高い可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。モナシュ大学(オーストラリア)のMatthew Pase氏らによるこの研究結果は、「Neurology」1月23日号に発表された。  Pase氏は、「健康的な睡眠に関する推奨では、1日7~9時間の睡眠時間を確保することばかりに重点が置かれ、規則正しい睡眠スケジュールを維持することはあまり重視されていない」と指摘。「われわれの研究結果は、認知症リスクを回避するために規則正しい睡眠が重要な要素となることを示唆するものだ」と同大学のニュースリリースで述べている。

マスクにアロマシールを貼るとメンタルにも好影響

 香りのするシール(アロマシール)をマスクに貼ると、息切れなどの症状が軽くなり、メンタルヘルスにも良い影響が生じることが、無作為化二重盲検比較試験の結果として報告された。星薬科大学の湧井宣行氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に11月16日掲載された。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、マスクを着用する機会が増加した。マスク着用時に8割以上の人が息苦しさや暑苦しさなどのストレスを感じていると報告されている。COVID-19の感染抑止にマスクが有効であったことが示されたことから、パンデミック終息後にも他の呼吸器感染症のリスク低減のために、引き続きマスク着用が推奨される傾向が続くと考えられ、着用時のストレス対策の重要性が増している。

公平な再入院を達成している病院の特徴は?/JAMA

 公平性は医療の質の本質的な領域である。米国・コロンビア大学のKatherine A. Nash氏らは、米国のメディケア・メディケイドの運営主体Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)が開発した臨床アウトカムの公平性を評価する2つのDisparity Methodsを用いた研究を行い、公平な再入院を達成している病院は少数派であり、公平な再入院が行われていない病院とは明らかに異なる特徴が認められることを明らかにした。具体的には、公平な再入院が行われている病院では黒人患者の数が少なかったという。著者は、「従来型のアウトカム評価では、黒人患者の受け入れが少ない病院に報酬を与える可能性があり、病院レベルでの不公平さが構造的人種差別の役割を強化する可能性がある」とし、「公平な再入院を実現するには、リスクのある患者の病院間の分布に、ばらつきがあることを考慮しなければならない」と述べ、不公平を助長しない慎重な政策設計の必要性を提言している。JAMA誌2024年1月9日号掲載の報告。

ATTR心アミロイドーシス、acoramidisが予後を改善/NEJM

 トランスサイレチン型(ATTR)心アミロイドーシス患者において、acoramidisの投与により、全死因死亡、心血管関連入院および心機能と身体機能の要素を含む4段階の階層的主要アウトカムがプラセボより有意に改善し、有害事象は両群で類似していた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJulian D. Gillmore氏らが、第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of AG10 in Subjects with Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy:ATTRibute-CM試験」の結果を報告した。ATTR心アミロイドーシスは、単量体がミスフォールドされたトランスサイレチン(TTR)の心臓への蓄積が特徴である。acoramidisは四量体TTRの解離を阻害する高親和性TTR安定化薬で、ex vivoでは異なる投与間隔の全体で90%以上の安定化をもたらし、第II相試験で有効性が確認されていた。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

口腔健康状態が誤嚥性肺炎の入院期間に影響/東京医科歯科大

 誤嚥性肺炎などでは、転帰に患者の口腔健康状態が関係することがよく知られている。それでは、その影響がさらにどのように作用するのであろうか。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の山口 浩平氏らの研究グループは、誤嚥性肺炎高齢患者の入院時口腔健康状態が院内転帰に及ぼす影響を前向きコホート研究で実施し、結果を報告した。口腔健康状態の悪い患者の入院期間は長くなる可能性があるというものだった。European Geriatric Medicine誌オンライン版2024年1月12日号の報告。

外科手技に着想を得たレシピ集公開/ゲティンゲ

 ゲティンゲは1月11日付のプレスリリースにて、外科手技に着想を得た「The Heart Surgeon's Cookbook―心臓血管外科医のレシピ集―」の公開を発表した。この料理本は心臓血管外科・胸部外科医のNirav Patel氏とニューヨークのミシュラン二つ星レストランAskaの創設オーナーFredrik Berselius氏のコラボレーションによるもので、本書を通じ、心臓血管外科医のスキルの高さに焦点を当て、心臓血管外科における人材育成の課題を啓発することを目的としている。  料理本に含まれる9つのレシピでは、外科医の手技やメンタルコントロールの向上効果を狙った手術室外で取り組める意外性と遊び心のある訓練法が提案されている。各レシピは、精緻な切開、狭い箇所への注入、縫合、解剖、反復など、繊細な手先の動きと集中力を試す内容となっている。

LGBTQ患者の診療、困った経験は?/医師1,000人アンケート

 わが国にはLGBTQの人は3~10%程度いるとされている。「患者のほとんどが高齢者のためLGBTQは関係ない」と思われるかもしれないが、高齢者にもLGBTQの人は存在し、日常接している患者さんの中にも少なからずLGBTQ患者がいると考えられる。CareNet.comでは、会員医師1,029人を対象に、LGBTQ患者の診療経験に関するアンケートを実施した。その結果、多くの医師が今後の対応の必要性を認識しているものの、現状では診療体制が不十分であることが多く、今後の診療に影響が生じかねないケースもあったことが明らかになった(2023年12月25日実施)。

日本人双極性障害外来患者における離婚の予測因子

 双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返すことを特徴とする精神疾患であり、社会的障害を引き起こすことが知られている。さらに、双極性障害は、離婚や家族のサポートを失うリスクを高め、予後を悪化させる可能性が明らかとなっている。しかし、リアルワールドにおける双極性障害患者の離婚の予測因子に関するエビデンスは限られている。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人双極性障害患者における離婚の予測因子を特定するため、調査を行った。その結果から、日本人双極性障害患者における離婚の予測因子として、ベースライン時の年齢が若い、BMIが低いことが特定された。Annals of General Psychiatry誌2023年12月12日号の報告。

スマートウォッチが子どもの隠れた不整脈を検出

 Connor Heinzさんは12歳のときから動悸を感じるようになったが、医師はその原因究明に苦慮していた。Connorさんが装着していた心臓のモニタリングデバイスは使い心地が悪く、また、不整脈が起こる頻度は数カ月間に1回程度だったため、問題を特定することが難しかったのだ。Connorさんの心臓の問題が何なのか、主治医には見当がついていたが、それを確かめたいと考えていた。そこで主治医は、Connorさんに母親のスマートウォッチを付けてもらうことにした。研究グループによると、小児の心疾患の診断に役立てることを目的としたスマートウォッチの使用は、心臓専門医の間で急速に普及しつつあるという。

ROS1融合遺伝子陽性NSCLC、repotrectinibが有望/NEJM

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、repotrectinibはROS1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療歴を問わず、持続的な臨床活性を示したことが、米国・スローンケターリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが行った第I/II相試験(「TRIDENT-1試験」)で示された。有害事象は主にグレードが低く、長期の投与に適するものであった。ROS1融合遺伝子陽性NSCLCの治療に承認されている初期世代のROS1 TKIは、抗腫瘍活性を有するが、耐性が生じ、頭蓋内活性が最適とはいえない。repotrectinibは、前臨床試験においてROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性がんに対する活性が示された次世代のROS1 TKIであり、研究グループは承認申請のため本検討を行った。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

米国透析施設の新たな支払いモデル、人種・経済格差の影響は?/JAMA

 米国のメディケア・メディケイドの運営主体Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS)は2021年1月1日、米国内の透析施設の30%をランダムに選択し、在宅透析の利用、腎移植待機リストへの登録や移植の受領に基づき経済的インセンティブ(賞与もしくは罰金)を与える支払い方法「末期腎不全治療選択(ETC)モデル」を導入した。背景には、人種や社会経済的状況により、在宅透析導入や移植受領などに格差がみられたことがある。先行研究で、同モデル導入による在宅透析利用の増加の報告(全成人透析導入患者において)や変化なしという報告(66歳以上の従来メディケア受給者において)があるが、腎不全治療の公平性に対する影響については検討されていなかった。今回、米国・ブラウン大学のKalli G. Koukounas氏らは、透析施設を透析導入患者の社会的リスクで層別化し、ETCモデル導入初年度のパフォーマンススコアと罰金を評価した。JAMA誌2024年1月9日号掲載の報告。

鎮咳薬不足、増えた手間や処方優先患者は?/医師1,000人アンケート

 後発医薬品メーカーの不祥事などで医薬品供給不安が続いているなか、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの流行が鎮咳薬不足に追い打ちをかけている。昨年9月には厚生労働省が異例とも言える「鎮咳薬(咳止め)・去痰薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」の通知を出し、処方医にも協力を仰いだことは記憶に新しい。あれから3ヵ月が経ち、医師の業務負担や処方動向に変化はあったのだろうか。今回、処方控えを余儀なくされていることで生じる業務負担や処方を優先する患者の選び方などを可視化すべく、『鎮咳薬の供給不足における処方状況』について、会員医師1,000人(20床未満:700人、20床以上:300人)にアンケート調査を行った。

HR+HER2-進行乳がん、パルボシクリブ+タモキシフェンが治療選択肢に/ファイザー

 ファイザーは1月15日付のプレスリリースにて、パルボシクリブの添付文書が改訂されたことを発表した。ホルモン受容体(HR)陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の進行または転移乳がん患者へのパルボシクリブとタモキシフェン併用投与の有効性と安全性を検討した第III相試験(PATHWAY試験)の結果に基づくもので、これにより、パルボシクリブとタモキシフェンとの併用が新たな治療選択肢となる。  パルボシクリブはこれまで、レトロゾールまたはフルベストラントとの併用投与の成績に基づいて承認されており、タモキシフェンとの併用における有効性や安全性は確立されていなかった。またアジア地域では欧米に比べ、全乳がんのうち閉経前乳がんの占める割合が多く、治療選択肢が十分でない状況があった。

新型コロナJN.1が世界の主流株に、高い伝播力と免疫回避能/東大医科研

 2023年12月時点で、オミクロン株BA.2.86の子孫株であるオミクロン株JN.1が世界各地で流行を拡大し、JN.1は世界保健機関(WHO)により「注目すべき変異株(VOI)」に分類されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らによる研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」の研究で、JN.1は、これまで主流の1つだったXBB系統のEG.5.1より高い伝播力(実効再生産数)を有し、自然感染やワクチン接種により誘導される中和抗体に対しても高い回避能を有していることが認められた1)。本結果は、The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年1月3日号に掲載された。

朝食摂取とうつ病との関係

 うつ病は、食生活、社会的因子、生活習慣といった多くの要因と関連しており、重大かつ患者数が多い、世界的な公衆衛生上の問題である。中国・吉林大学のFengdan Wang氏らは、朝食の摂取、食事性炎症指数(DII)とうつ病との関連を評価し、朝食の摂取がうつ病に及ぼす影響に対しDIIがどのように関与しているかを調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年12月7日号の報告。  対象は、2007~18年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した2万1,865例。朝食の摂取、DII、うつ病との関連の分析には、二項ロジスティック回帰分析と媒介効果分析を用いた。食事による炎症は、DIIに従い炎症誘発性食と抗炎症性食に分類した。

脂質異常症に対する遠隔栄養指導の効果は対面と同等

 脂質異常症の患者に対する管理栄養士によるオンラインでの栄養指導は、対面での指導と同等の効果があるとする研究結果が報告された。米ミシガン大学のShannon Zoulek氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Lipidology」に11月17日掲載された。  オンラインによる遠隔医療は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって急速に普及した。その後、COVID-19は収束したが、引き続き遠隔医療を利用する患者が少なくない。本研究が行われたミシガン大学の心臓病予防のための栄養プログラムでは、2022年時点において受診者の約5人に1人が遠隔での指導を希望している。ただし、これまでのところ、脂質異常症に対する栄養指導の効果が、対面と遠隔で異なるのかどうかは十分検討されておらず、Zoulek氏らはその点を観察研究により検証した。