日本語でわかる最新の海外医学論文|page:142

院内心停止、心肺蘇生時間1分ごとの患者転帰との関連/BMJ

 米国・ピッツバーグ大学の大久保 雅史氏らは、院内心停止に関する大規模レジストリの後ろ向きコホート研究において、心肺蘇生時間1分ごとの患者アウトカムの時間依存確率を定量化し、生存および良好な神経学的アウトカムの確率は心肺蘇生時間とともに低下し、それぞれ心肺蘇生時間39分および32分時点で1%未満であることを明らかにした。心肺蘇生時間と患者転帰との関連性は、院内心停止患者については十分に調査されていなかった。著者は、「今回の結果は、蘇生チーム、患者、およびその代理人に、最初の自己心拍再開を待っている患者が、さらなる心肺蘇生を受けた場合に、良好なアウトカムが得られる客観的確率を提供するものである」とまとめている。BMJ誌2024年2月7日号掲載の報告。

ジャディアンス、慢性腎臓病で国内製造販売承認(一部変更)取得/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムおよび日本イーライリリーは2024年2月9日付のプレスリリースで、SGLT2阻害薬ジャディアンス錠10mg(一般名:エンパグリフロジン)について、日本ベーリンガーインゲルハイムが、慢性腎臓病に対する効能・効果および用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を、厚生労働省より取得したことを発表した。  慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎障害を示す所見や腎機能の低下が慢性的に持続する疾患である。死亡や心筋梗塞、脳卒中、心不全などの心血管疾患のリスクファクターであり、進行すると末期腎不全に至り、透析療法や腎移植術が必要となることもある。慢性腎臓病の治療目的は、腎機能の低下を抑え末期腎不全への進行を遅らせること、および心血管疾患の発症を予防することである。

ニボルマブ、切除不能な進行・再発上皮系皮膚悪性腫瘍の効能追加承認/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは2024年2月9日、小野薬品が、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。  今回の承認は、慶應義塾大学病院主導の下、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍患者を対象に、ニボルマブの有効性および安全性を検討した医師主導治験(NMSC-PD1試験:KCTR-D014)の結果に基づいたもの。  同試験における中央判定奏効率は19.4%(6/31例、95%信頼区間:7.5〜37.5)を示し、主要評価項目を達成した。同試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、既報と同様であった。 

コロナ感染拡大への祝日の影響、東京と大阪で大きな差

 祝日は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播に影響を及ぼしたのだろうか。京都大学のJiaying Qiao氏らが2020~21年の4都道府県のデータを数理モデルで検討したところ、祝日がCOVID-19伝播を増強したこと、またその影響は都道府県によって異なり、大阪で最も大きく東京で最も小さかったことが示唆された。Epidemiology and Health誌オンライン版2024年1月22日号に掲載。  本研究では、2020年2月15日~2021年9月30日における北海道、東京、愛知、大阪の4都道府県におけるCOVID-19発症と流動性のデータを収集し、祝日の感染頻度の増加を評価した。推定された実効再生産数と、調整前後の流動性、祝日、非常事態宣言を関連付けるモデルを作成した。必須の入力変数として祝日を含めた最も適合性の高いモデルを、祝日がない場合の有効再生産数の反事実を計算するために使用した。

高齢統合失調症患者の死亡リスクに対する薬物療法の影響

 人口の高齢化に伴い、統合失調症の罹患においても高齢者の有病率が増加しており、これまで以上に薬剤選択の重要性が増している。現在、高齢統合失調症患者に関するエビデンスが不足していることから、台湾・Far Eastern Memorial HospitalのJia-Ru Li氏らは、向精神薬の使用量および累積投与量が高齢統合失調症患者のすべての原因および原因別の死亡リスクに及ぼす影響を調査するため、コホート研究を実施した。Pharmaceuticals (Basel, Switzerland)誌2024年1月8日号の報告。  対象は、統合失調症と診断された高齢者6,433例。5年間のフォローアップ調査を実施した。抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、鎮痛薬/睡眠薬の用量(低用量群、中用量群、高用量群)に関連する死亡リスクを、各用量群と投与なし群とで比較を行った。各用量群におけるすべての原因による死亡率および特定の原因による死亡率を比較するため、Cox回帰を生存分析に用いた。特定の向精神薬の投与量を変数とし、それに応じて共変量を調整した。

中間期乳がん、生殖細胞系列遺伝子変異と関連/JAMA Oncol

 検診と検診の間にみつかる乳がんは中間期乳がんと呼ばれ、検診でみつかる乳がんより臨床病理学的特徴が悪く、予後も不良である。これまで中間期乳がんと生殖細胞系列遺伝子変異との関連は研究されていないことから、今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJuan Rodriguez氏らが中間期乳がんと検診発見乳がんの識別に生殖細胞系列タンパク質切断型変異体(PTV)を適用できるかどうか検討した。JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月25日号に掲載。  この研究は、スウェーデンでマンモグラフィ検査を受けている40~76歳の女性で、2001年1月~2016年1月に乳がんと診断された全女性と、年齢をマッチさせた対照を対象としたもの。乳がん患者については2021年まで生存について追跡し、34の乳がん感受性遺伝子の生殖細胞系列PTVをターゲットシークエンシングにより解析した。

パンデミック中、妊娠合併症と出産の転帰の一部が悪化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、妊娠合併症と出産の転帰の一部は悪化していたことが判明した。日本の100万件以上の出産データを調査した結果、パンデミックにより妊娠高血圧や胎児発育不全、新生児の状態などに影響が見られたという。獨協医科大学医学部公衆衛生学講座の阿部美子氏らによる研究結果であり、「Scientific Reports」に11月29日掲載された。  パンデミックによる影響については国際的にも多く研究されており、死産の増加や妊産婦のメンタルヘルスの悪化などが報告されてきた。しかし、パンデミックの状況や国・地域の制限レベルなどにより、その影響は異なるだろう。日本でのパンデミックと妊娠や出産の転帰に関しては検討結果が限られており、日本全国レベルでの大規模な研究が必要とされていた。

乳がん検診、異型検出後の罹患リスクは?/BMJ

 乳がん検診で異型を伴う病変が検出された場合、その後の短期間において、マンモグラフィ検査を毎年行うことは有益ではないことが、英国・ウォーリック大学のKaroline Freeman氏らによる検討で示された。悪性か否かが不明の異型を伴う乳房病変が検出された場合、乳がんの長期リスクが3~4倍増加する可能性が示されている。英国、欧州、米国のガイドラインでは、異型部位を吸引式乳房組織生検(VAB)または手術で切除し、画像サーベイランスを行うことが推奨されている。しかし、画像サーベイランスを5年間にわたり毎年行うことについてはエビデンスがなく、期間、頻度、妥当性が議論の的となっていた。なお、今回の結果について著者は、「長期的リスクについてさらなるエビデンスが必要である」と述べている。BMJ誌2024年2月1日号掲載の報告。

小児・思春期の2価コロナワクチン、有効性は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する2価mRNAワクチンについて、小児・思春期(5~17歳)へのSARS-CoV-2感染および症候性COVID-19に対する保護効果が認められることが示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のLeora R. Feldstein氏らが、3つの前向きコホート試験に参加した約3,000例のデータを解析し報告した。米国では12歳以上については2022年9月1日から、5~11歳児については同年10月12日から、COVID-19に対する2価mRNAワクチンの接種を推奨しているが、その有効性を示す試験結果は限られていた。著者は、「今回示されたデータは、小児・思春期へのCOVID-19ワクチンの有益性を示すものである。対象となるすべての小児・思春期は、推奨される最新のCOVID-19ワクチン接種状況を維持する必要がある」と述べている。JAMA誌2024年2月6日号掲載の報告。

「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」開催/厚労省

 2024年3月8日(金)、「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が会場+オンライン(Zoom ウェビナー)のハイブリット方式で開催される。2024年4月より医師に対する時間外労働の上限規制が適用開始となり、医学生や若手医師に、医師の働き方の実情、医師の働き方改革の内容と趣旨・目的、関係する法令などを周知することが重要となっている。本シンポジウムでは、実際に医学部設置大学において講義を行った医師による講義実例の紹介や、弁護士・大学教員・医学生とのパネルディスカッションが行われ、医師の働き方改革の趣旨などを医学生や若手医師に伝える意義、その効果的な方法について考える。

日本のプライマリケアにおけるベンゾジアゼピン適切処方化への取り組み

 日本において、プライマリケアにおける質の向上(QI)に対する取り組みは、まだまだ十分とはいえない。QIにおいて重要な領域の1つとして、ベンゾジアゼピンの適切な処方が挙げられており、高齢化人口の増加が顕著なわが国においてとくに重要である。地域医療振興協会の西村 正大氏らは、日本のプライマリケアクリニックにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZRAs)の処方中止に対する医療提供者へのQIイニシアチブの実現可能性について検討を行った。BMC Primary Care誌2024年1月24日号の報告。  調査対象は、2020~21年にBZRAs処方中止イニシアチブに参加した日本の準公立クリニック11施設および医療提供者13人。クリニック規模に応じて層別化し、参加施設を診療監査のみまたは診療監査とコーチングの実施の2群にランダムに割り付けた。診療監査のため、2つのBZRAs関連指標を参加施設に提示した。QIの活動をサポートするため、毎月コーチングミーティングをWebベースで実施した。9ヵ月間の実施後、半構造化インタビューにより、内容分析を用いてテーマを特定した。特定されたテーマを整理し、実装研究のための統合フレームワーク-CFIR-を用いて、主要な要素を評価した。

新型コロナワクチンの国内での有効性評価、VERSUS研究の成果と意義

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの有効性を評価するため、VERSUSグループは国内の13都府県の医療機関24施設で2021年7月から継続的に「VERSUS研究」を行っている。本研究は、新型コロナワクチンの国内での有効性を評価し、リアルタイムにそのデータを社会に還元することを目的としている。今後はCOVID-19のみならず、新たな病原体やワクチンを見据えたネットワークを整備・維持していく方針だ。VERSUS研究のこれまでの成果と意義について、2024年1月20日にウェブセミナーが開催された。長崎大学熱帯医学研究所呼吸器ワクチン疫学分野の森本 浩之輔氏と前田 遥氏らが発表した。なお、BA.5流行期のワクチン有効性の結果は、Expert Review of Vaccines誌2024年1~12月号に論文掲載された。

フィネレノンの効果の多くはアルブミン尿抑制作用が媒介

 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンによる腎転帰および心血管転帰改善効果の多くは、アルブミン尿抑制作用が媒介した結果であることを示唆するデータが報告された。米インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に12月5日掲載された。  フィネレノンは、慢性腎臓病(CKD)患者や2型糖尿病患者のアルブミン尿抑制という他覚所見の改善とともに、心腎イベント発生リスクを低下させ、転帰を改善し得ることが報告されている。ただし、心腎イベント抑制効果に対して、アルブミン尿抑制作用がどの程度関与しているのかは明らかにされていない。Agarwal氏らは、同薬の第3相臨床試験として実施された2件の研究のプールされたデータを用いた媒介分析を行い、この点を検討した。

「肉なし」食生活でコロナリスクが4割低下?

 植物性食品をベースにした食生活は、血圧の低下、血糖コントロールの改善、体重減少など、さまざまな健康上の利点と関連付けられているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患リスクを低減させる可能性もあることが、新たな研究で明らかになった。この研究では、植物性食品をベースにした食生活により、COVID-19罹患リスクが39%低下する可能性が示されたという。Hospital das Clinicas FMUSP(ブラジル)のJulio Cesar Acosta-Navarro氏らによるこの研究結果は、「BMJ Nutrition Prevention and Health」に1月9日掲載された。

膵臓がんの治療ワクチン、初期段階の臨床試験で有望な結果

 膵臓の腫瘍は、その90%以上に悪性度を高める可能性のあるKRAS遺伝子の変異があるとされるが、この変異を有する膵臓がんに対し、実験段階にある治療ワクチンが有効である可能性が、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍学准教授のShubham Pant氏らが実施した小規模な臨床試験で示された。現時点では「ELI-002 2P」と呼ばれているこのワクチンは、KRAS変異を有する固形がんを標的にするものだという。ELI-002 2Pを製造するElicio Therapeutics社の資金提供を受けて実施されたこの試験の詳細は、「Nature Medicine」に1月9日掲載された。

検診以外で発見の非浸潤性乳管がん、浸潤性病変・乳がん死の長期リスク高い/BMJ

 検診以外で発見された非浸潤性乳管がん(DCIS)の女性は、診断後少なくとも25年間は、一般集団の女性と比較して浸潤性乳がんや乳がん死のリスクが高く、検診でDCISが検出された女性に比べ長期的なリスクも高いことが、英国・オックスフォード大学のGurdeep S. Mannu氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月24日号に掲載された。  本研究は、検診以外で検出されたDCISにおける浸潤性乳がんと乳がん死の長期的なリスクの評価を目的に、一般集団の女性と検診でDCISと診断された女性を比較する住民ベースのコホート研究である(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。

遺伝性血管性浮腫、CRISPR-Cas9ベースの生体内遺伝子編集治療が有望/NEJM

 遺伝性血管性浮腫の治療において、NTLA-2002の単回投与は、血漿中の総カリクレイン濃度を強固に、用量依存性で恒久的に減少させ、重度の有害事象は観察されないことが、ニュージーランド・Auckland City HospitalのHilary J. Longhurst氏らによる検討で示された。遺伝性血管性浮腫はまれな遺伝性疾患で、予測不能な重度の浮腫発作を引き起こす。NTLA-2002は、CRISPR-Cas9に基づく生体内遺伝子編集治療で、カリクレインB1をコードする遺伝子(KLKB1)を標的とする。研究の成果は、NEJM誌2024年2月1日号で報告された。

アルコール依存症の治療期間に応じた薬物療法の有用性~ネットワークメタ解析

 アルコール依存症やアルコール使用障害では、再発が多くみられることから、減酒治療をできるだけ長期間にわたり実施する必要がある。しかし、これまでのレビューでは治療期間が考慮されておらず、減酒治療が適切に評価されていない可能性がある。岡山済生会総合病院の小武 和正氏らは、アルコール依存症またはアルコール使用障害の患者における減酒薬物療法の有効性と安全性を治療期間に応じて評価するため、本研究を実施した。Addiction (Abingdon, England)誌オンライン版2024年1月3日号の報告。  15種類の薬剤を評価したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。2021年5月までに公表された研究をMEDLINE、Embase、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov、ICTRPより検索した。アウトカムは、多量飲酒日(HDD)、総アルコール摂取量(TAC)、有害事象、禁酒日数とした。

肺がんコンパクトパネル、細胞診検体の精度は?

 2023年1月26日に遺伝子パネル検査「肺がん コンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム」(肺がんコンパクトパネル)の一部変更申請が承認された。従来、4遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、MET)のマルチコンパニオン診断検査として用いられていたが、今回の承認により3遺伝子(BRAF、KRAS、RET)が追加され、7遺伝子が対象となった。その肺がんコンパクトパネルについて、細胞診検体(液体検体)を用いた遺伝子検査の精度を検討した結果が、國政 啓氏(大阪国際がんセンター 呼吸器内科)らによって、Lung Cancer誌オンライン版2月3日号で報告された。本研究において、気管支生検鉗子洗浄液の検体では、組織検体で検出された遺伝子変異との一致率が94.9%と高率であった。

グラム陰性菌血症への抗菌薬、早期経口スイッチの効果は?

 抗菌薬は多様な疾患に処方されており、経口投与は点滴投与と比較して医療者・患者負担が少ないが、その効果に違いはあるのか。合併症のないグラム陰性菌血症の患者を対象に、抗菌薬を早期に経口投与に切り替えた場合と静脈内投与を継続した場合の90日死亡リスクを比較した研究結果が発表された。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のSandra Tingsgard氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2024年1月23日号に掲載された。