日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1000

長期の睡眠薬服用、依存形成しない?!

 常用している睡眠薬を急激に減量・中断すると、睡眠薬の服用前よりも強い不眠が出現することがある。このような症状を「反跳性不眠」という。反跳性不眠や退薬症候は睡眠薬の投与を中止する上での弊害となり、漫然と投与を継続する要因となりうる。Roehrs氏らは、慢性的な睡眠薬の投与が反跳性不眠・退薬症候に与える影響を前向きプラセボ対照試験にて検討した。J Psychopharmacol 誌2012年8月号の報告。

南相馬市立総合病院“初”初期研修医として

亀田総合病院・南相馬市立総合病院 初期研修医 木村 和秀  2012年8月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 7月1日から8月3日まで、南相馬市立総合病院で、相双地区で初めて初期研修医として1ヶ月間研修を行った。 そこで体験したこと、出会った人々、考察した事を、この後に続く研修医のためにまとめると共に、山積した問題を解決し得る知恵を持った方々と共有するために、ここに発表したい。

乳房温存術を受けた女性の5人に1人が再手術

 英国では乳房温存術(BCS)を施行された女性の5人に1人が再手術を受けており、非浸潤性乳がんの再手術率は浸潤性病変の約2倍に達することが、英国王立外科医師会のR Jeevan氏らの調査で示された。英国では毎年約4万5,000人の女性が乳がんと診断され、その半数以上がBCSを施行されるという。とくに非浸潤性乳がんは術前に病変を局在化するのが困難なため、BCSでは腫瘍を完全に切除できない可能性があり、その場合は再度BCSを行うか、乳房切除術が施行される。BCS施行後の再手術に関する研究は少なく、施行率は17~68%とされ大きなばらつきがみられる。BMJ誌2012年8月11日号(オンライン版2012年7月12日号)掲載の報告。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(7)〕 はたして運動療法は慢性心不全患者に潜む「うつ症状」を改善しえるのか?

 慢性心不全はその病態が重症になれば心拍出量の低下から「労作時の息切れ」や「全身倦怠感」など、うつ病とよく似た症状が出現する。また慢性心不全の治療は根治することがなく長期にわたり、患者は塩分コントロールによる食事制限や飲水量制限が厳しく科せられることが多く、抑うつ状態となる場合も少なくない。実際、慢性心不全患者の20~40%にうつ病が合併するという報告がなされている。

成人T細胞白血病リンパ腫におけるモガムリズマブ欧米第2相臨床試験開始

 協和発酵キリン株式会社は23日、治療経験のある成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を対象としたモガムリズマブ(一般名、開発コード: KW-0761)の欧米第2相臨床試験を開始したことを発表した。モガムリズマブは、ATLを対象疾病とした希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を、米国食品医薬品局および欧州委員会から受けている。

うつ病の予測因子は青年期の「腹痛」?

 うつ病患者の多くは身体症状を訴える。しかし、この身体症状がうつ病によって発現するのか、それとも身体症状のためにうつ病を発症するのか、ほとんどわかっていない。また、従来の研究において、機能的・物理的な身体症状に関する住民ベースの長期縦断研究が不足しているとの指摘がある。Bohman氏らは15年にわたる調査により、うつと身体症状の関係を明らかにし、うつ病の発症の危険因子を検討した。BMC Psychiatry誌オンライン版2012年7月27日号の報告。

血漿HDL-C高値、心筋梗塞のリスクを低下させない可能性が

 血漿HDLコレステロール(HDL-C)値の上昇が、必ずしも心筋梗塞のリスクを低減しない可能性があることが、米国・ペンシルバニア大学のBenjamin F Voight氏らの検討で明らかとなった。血漿HDL-C高値は心筋梗塞のリスク低減と関連するとされるが、その因果関係は不明である。遺伝子型は、減数分裂時にランダムに決定され、非遺伝子的な交絡因子の影響を受けず、疾患過程の修飾も受けないことから、バイオマーカーと疾患の因果関係の検証にはメンデル無作為化(mendelian randomization)解析が有用だという。Lancet誌2012年8月11日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。

スタチンによるLDL-C低下療法、低リスク集団でも血管イベントを低減

 スタチンによるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、血管イベントの低リスク集団においても主要血管イベント(MVE)の抑制効果を発揮することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)Collaboratorsによる検討で示された。スタチンはLDL-Cを低下させることで血管イベントを予防するが、血管イベントのリスクが低い集団における効果は、これまで明らかにされていなかった。血管疾患の既往歴のない集団は血管イベントの絶対リスクが低いものの、血管イベントの半数以上はこの集団で発生しているため、とくにスタチン治療の1次予防効果は解明すべき重要な課題とされる。Lancet誌2012年8月11日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載の報告。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(6)〕 女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

 急性腎盂腎炎の治療は、原因菌に感受性のある抗生物質を10~14日間投与するプロトコールが、本邦で長らく用いられてきた方法であろう。第一選択の薬剤は培養検査の結果が判明するまで、βラクタムあるいはニューキノロンが選択されるが、院内感染症対策部門の意向も取り入れて選ばれることと思う。

高血圧患者さんの食塩摂取量への意識を高めるiPhone アプリ

 食塩の過剰摂取が血圧上昇と関連していることは古くから知られており、減塩による降圧効果も証明されている。メタアナリシスの結果によると、1gの減塩によって収縮期血圧1mmHgの降圧が期待できる。しかし、6g/日前半まで食塩摂取量を落とさなければ有意な降圧は達成できていない。このことを根拠にわが国では高血圧患者の減塩目標として6g/日未満を推奨している。

デポ剤使用で寛解率が向上!?

 統合失調症治療における最終ゴールである寛解。寛解を目指すため、さまざまな取り組みが行われている。近年、統合失調症治療薬は経口剤だけでなく、持効性注射製剤(LAI)も承認され、多くの患者に使用されるようになってきた。このLAIが寛解にどのような影響を与えるかについて、BMC Psychiatry誌オンライン版2012年8月10日号で報告された。

結腸がん補助化学療法におけるFOLFOXの有効性:Stage IIと高齢者におけるサブ解析

 オキサリプラチンをフッ化ピリミジンに追加した補助化学療法はStage IIIの結腸がん患者の生存率を改善するが、Stage IIおよび高齢患者における補助化学療法にオキサリプラチンを追加することの有用性については意見が分かれている。Christophe Tournigand氏らは、結腸がんの補助化学療法におけるオキサリプラチン/フルオロウラシル/LVの多施設国際共同試験において、フルオロウラシル+LV(FL)とFL+オキサリプラチン(FOLFOX4)に無作為に割り付けられた患者のうち、Stage IIおよび高齢(70~75歳)患者のサブグループ解析を実施。その結果、どちらの患者でも全生存率(OS)と無病生存率(DFS)にはオキサリプラチン追加による有意なベネフィットは認められなかったことを、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2012年8月20日号に報告した。

心臓移植待ち小児の生存率、新たな補助人工心臓で有意に上昇

 心臓移植待機リスト上位に位置する重度心不全の小児に対し、新たに開発設計された体外式補助人工心臓装置は、これまでの体外式心肺補助(ECMO)と比べて有意に高い生存率を示したことが、米国・テキサス小児病院のCharles D. Fraser, Jr.氏らによる前向き試験の結果、報告された。移植までのブリッジ使用可能な機械的循環補助オプションは小児では限られており、唯一の頼みの綱とされていたのがECMOだった。しかし、その使用は重大合併症が起きるまでの10~20日間に限られ、移植までに結びつくのは40~60%という。NEJM誌2012年8月9日号掲載の報告。

活動性関節リウマチに対する新規経口薬のトファシチニブ単独療法

 活動性関節リウマチ患者に対し、新規経口薬のトファシチニブ(開発コードCP-690, 550、本邦では承認申請中)の単剤療法は、プラセボと比較して関節リウマチの徴候・症状を軽減し身体機能を改善することが、米国・Metroplex Clinical Research CenterのRoy Fleischmann氏らによる第3相無作為化試験の結果で示された。NEJM誌2012年8月9日号掲載の報告。トファシチニブは、関節リウマチの標的免疫調節薬および疾患修飾薬として研究されている経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、炎症性サイトカインなどを対象とする現在の関節リウマチ薬とは異なる新しい作用機序の経口薬である。