日本語でわかる最新の海外医学論文|page:978

SSRIの短期治療、うつ症状改善に先立ち正常化する扁桃体機能

 SSRIなどの抗うつ薬は、うつ病患者の行動や神経の評価指標である感情プロセスを改善させる。しかし、それが臨床変化の前に起こるのか、結果として起こるのか明らかではなかった。英国・Warneford病院のGodlewska BR氏らは、うつ病患者へのSSRIの短期治療の影響を調査し、抑うつ症状の改善に先立ち扁桃体機能活性が正常化されることを明らかにした。Psychological Medicine誌2012年12月号の掲載報告。

e-ラーニングEBM課程は研修医の知識やスキル向上に有用/JAMA

 臨床でのEBM教育について、世界保健機構(WHO)がWHO Reproductive Health Library(RHL)に組み込み提供しているe-ラーニングEBM課程は、低中所得国(LMIC)の臨床医の高い知識とスキルに結び付いていることが、WHO政策研究・国際協力部門のRegina Kulier氏らにより報告された。医療現場にEBM診療を文化として根付かせるためには、EBM教育を臨床に組み込む必要があるが、低中所得国では、EBM教育を受けた指導医が不足しており、EBM教育のための時間も確保されておらず、また自発的に学びたくても英語以外のデータベースへアクセスできる環境が整備されていないのが現状だという。JAMA誌2012年12月5日号掲載より。

プライマリ・ケアでのCOPD患者の自己管理・定期管理vs.通常ケア、長期ベネフィットは?/BMJ

 プライマリ・ケアでの慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のマネジメントについて、総合的自己管理や定期管理と、通常ケア(患者の判断で受診)とを比較した無作為化試験の結果、総合的自己管理や定期管理は通常ケアと比べて、QOLや効果の実感に関して長期的なベネフィットが示されなかったことが、オランダ・Radboud大学のErik W M A Bischoff氏らにより報告された。プライマリ・ケアでは特に、COPDに対して周到で効果的なマネジメント戦略が必要とされる。しかし、著者らは、ガイドラインに即した定期管理の効果には疑問の声もあり、総合的自己管理プログラムのベネフィットは示されているが、プライマリ・ケアでの効果は明らかではないとして本検討を行った。BMJ誌2012年12月1日号(オンライン版2012年11月28日号)掲載より。

血小板機能検査はやるだけ無駄:VeryfyNowは不要

 ケアネットでは、11月3~7日に開催されたAHA(米国心臓協会)学術集会での注目演題を速報した。その一つとして、ex vivoの血小板活性簡易測定キット(VerifyNow)が抗血小板療法の用量調整に対する有用性について報じたが、この発表に対する後藤 信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授)のコメントを得たため合わせて掲載する。

第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析

 初回エピソードの統合失調症スペクトラム障害の治療では、早期治療の選択が重要である。米国・ザッカーヒルサイド病院のJian-Ping Zhang氏らは統合失調症スペクトラム障害患者における第一世代抗精神病薬(FGAs)と第二世代抗精神病薬(SGAs)の有効性および忍容性をメタアナリシスにより比較検討を行った。The international journal of neuropsychopharmacology / official scientific journal of the Collegium Internationale Neuropsychopharmacologicum (CINP)誌オンライン版2012年12月3日号の報告。

ロタウイルス胃腸炎の世界的な季節性パターンを明らかにするには?

 米国疾病管理予防センター(CDC)のManish M. Patel氏らは、ロタウイルス胃腸炎発生の世界的な季節性パターンの分布図作成を目的に、ワクチンが広く導入される以前の発生に関する報告論文をレビューした。しかし、統一的な説明が可能である季節性のパターンは認められず、国の所得レベルが多少ではあるが、他の因子よりも季節性疾患であることを示す予測因子であることが明らかになったという。

中間期乳がん患者の予後、マンモスクリーニング未実施乳がん患者と同程度/BMJ

 中間期乳がん患者の予後は、マンモグラフィスクリーニング未実施の乳がん患者と同程度であることが明らかにされた。米国・ハーバード公衆衛生大学院のMette Kalager氏らが、住民ベースの観察コホート研究の結果、報告した。先行研究では、無作為化試験または観察研究いずれにおいても、とりわけサンプルサイズが100例以下と小さく結果は限定的であった。本検討では、7,100余名の被験者を対象とし評価が行われた。BMJ誌2012年12月1日号(オンライン版2012年11月16日号)掲載より。

ステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎、シクロスポリンかインフリキシマブか/Lancet

 ステロイド抵抗性の急性重症潰瘍性大腸炎(UC)患者の治療について、シクロスポリンとインフリキシマブの有効性と安全性を比較したオープンラベル無作為化対照試験が、フランス・Haut-Leveque病院のDavid Laharie氏らにより行われた。両薬剤は、ステロイド静注療法が効かない急性重症UCに対して、大腸切除の回避を可能とする救急治療法である。しかし、どちらが有効または安全であるのか無作為化試験は行われておらず、ガイドラインにもステータスは明記されていなかった。Lancet誌2012年12月1日号(オンライン版2012年10月10日号)の掲載報告。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(38)〕 大規模臨床試験結果の比較が臨床家に与えるインパクトとは?

 心房細動の脳卒中・塞栓症予防に関して、続々と開発された新規抗凝固薬は臨床に大きなインパクトを与えている。日本ではワルファリンの処方率までもが増加しており、医療社会において抗凝固薬全体に関する啓蒙活動が広がったというべきであろう。

統合失調症患者の予後は?治療と生存率との関係

 統合失調症は過剰な死亡率や複数疾患の罹患率と関連しており、それは本疾患が心身複合疾患であるため治療が困難であることと関連している可能性が示唆されている。米国・退役軍人省のJack Y Tsan氏らは、レセプトから11種類のガイドライン治療を解析し、それら治療と生存率との関連を評価した。BMC Medicine誌オンライン版2012年11月26日号の掲載報告。

次世代エネルギー、風力発電業界で頻度が増している職業性接触皮膚炎

 スペインのG. Larraga-Pinones氏らは、同国の風力エネルギー産業界(タービン製造現場)で働く労働者の主な皮膚疾患について調査を行った。2010年現在、スペインは中国、アメリカ、ドイツに次ぐ世界第4位の風力エネルギーを生産しており、同国内には風力発電所889ヵ所、1万8,933台のタービンがあり、総電力の16%を賄っている。タービン発電機は主に、デンマーク、ポルトガル、スペイン、ドイツで製造されているが、これまで同分野の職業性皮膚疾患については、ほとんど注目されていなかった。

抗菌薬カテーテル、尿路感染症予防効果の裏付け得られず/Lancet

 入院中のカテーテル関連尿路感染症減少のために、通常のフッ素樹脂製カテーテルと抗菌薬カテーテル(銀コーティングカテーテルまたはニトロフラール溶出型カテーテル)とを比較した検討の結果、銀コーティングカテーテルには症候性の尿路感染症発症に対する効果は認められず、抗菌薬溶出型カテーテルも臨床的意義がある減少は認められなかったことが明らかにされた。英国・ニューカッスル大学のRobert Pickard氏らが多施設共同無作為化試験を行った結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「抗菌薬カテーテルのルーチン使用を支持する裏付けは得られなかった」と結論している。Lancet誌2012年12月1日号(オンライン版2012年11月5日号)掲載より。

難治性白血病に対するポナチニブ、高い治療反応を認める/NEJM

 変異型を含むBCR-ABLを阻害するポナチニブ(ponatinib、AP24534)を、チロシンキナーゼ阻害薬耐性のフィラデルフィア染色体陽性(Ph陽性)の白血病患者に投与すると、高い治療反応が認められることが示された。慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)患者のうち、血液学的完全寛解が認められたのは98%に上った。米国・M.D.アンダーソンがんセンターのJorge E. Cortes氏らが、80人超のチロシンキナーゼ阻害薬耐性の血液腫瘍患者について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2012年11月29日号で発表した。

統合失調症入院高齢患者、アジアでの多剤併用率は50%以上

 アジア各国の協力のもと、東アジアにおける向精神薬処方調査(REAP)が1999年より実施されている。今回、Yu-Tao Xiang氏らはアジア各国における高齢の統合失調症入院患者における抗精神病薬の多剤併用状況と人口統計学的および臨床的相関について検討し、報告を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌2012年12月号掲載。

少量、安全接種が可能な貼付パッチ式のロタウイルスワクチンの可能性

 米国疾病予防管理センター(CDC)のSungsil Moon氏らは、極微針パッチ(microneedle patch)を用いた皮下注射による、ロタウイルスワクチン予防接種の可能性についてマウスを用いた試験で検討を行った。皮下注予防接種(skin immunization)は天然痘や結核など多数の感染症で効果が認められているが、接種が難しい。一方、極微針パッチは、貼付式で接種が容易であり、その点で有望視されている。Vaccine誌オンライン版2012年11月19日号の掲載報告。

左室駆出率保持の心不全へのRAS阻害薬投与は全死因死亡を低下/JAMA

 左室駆出率保持(≧40%)の心不全(HFPEF)患者に対するレニン-アンジオテンシン系(RAS)拮抗薬投与は、全死因死亡率を低下することが明らかにされた。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLars H. Lund氏らが、同国の心不全患者レジストリからHFPEF患者を前向きに追跡し報告した。HFPEFは、左室駆出率低下の心不全(HFREF)と同程度の高い頻度と致死性の可能性を有している。ACE阻害薬またはARB(すなわちRAS阻害薬)の3つの無作為化試験では、主要エンドポイントを達成しなかったが、選択バイアスがかかりパワー不足となった可能性があったことから、研究グループはあらためて、HFPEFの任意抽出集団における前向き研究で、RAS拮抗薬投与により全死因死亡は低下するとの仮説について調べた。JAMA誌2012年11月28日号掲載より。