日本語でわかる最新の海外医学論文|page:943

急性虚血性脳卒中、迅速なt-PA開始を支持する新たなエビデンス/JAMA

 急性虚血性脳卒中患者の治療では、発症から組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)による血栓溶解療法の開始が迅速であるほど、良好な転帰が達成されることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJeffrey L Saver氏らの検討で示された。これまでに、急性虚血性脳卒中に対するt-PAの静脈内投与の効果は時間依存性であることが、無作為化臨床試験で示唆されている。一方、発症からt-PA投与開始(onset to treatment:OTT)までの時間が転帰に及ぼす影響を評価するには、いまだに症例数が十分でないため、臨床的知見の一般化可能性は確定的ではないという。JAMA誌2013年6月19日号掲載の報告。

新種のMERSコロナウイルスの院内ヒト間感染を確認/NEJM

 重篤な肺炎を引き起こす新種の中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome; MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)の、医療施設内でのヒト間感染の可能性を示唆する調査結果が、サウジアラビア保健省のAbdullah Assiri氏らKSA MERS-CoV調査団により、NEJM誌オンライン版2013年6月19日号で報告された。2003~2004年のSARSパンデミック以降、呼吸器感染症の原因となる2種類の新規ヒトコロナウイルス(HKU-1、NL-63)が確認されているが、いずれも症状は軽度だった。一方、2012年9月、世界保健機構(WHO)に重篤な市中肺炎を引き起こす新種のヒトコロナウイルス(β型)が報告され、最近、MERS-CoVと命名された。現在、サウジアラビアのほか、カタール、ヨルダン、英国、ドイツ、フランス、チュニジア、イタリアでヒトへの感染が確認されているが、感染源などの詳細は不明とされる。

小児てんかん患者、最大の死因は?

 米国・ルリー小児病院(シカゴ)のAnne T. Berg氏らは、小児てんかん患者の死因とリスクについて検討を行った。その結果、神経障害または脳の基礎疾患を有するてんかんの場合は一般人口に比べて死亡率が有意に高いこと、発作関連の死亡よりも、むしろ肺炎または他の呼吸器疾患による死亡のほうが多いことを報告した。Pediatrics誌オンライン版2013年6月10日号の掲載報告。

コーヒー・紅茶の摂取量と原因別の死亡率の関係~人種によって異なる?

 コーヒーや紅茶の摂取量と死亡率は逆相関することが示唆されているが、原因別の死亡率との関係はあまりわかっていない。米国マイアミ大学のHannah Gardener氏らは、コーヒーや紅茶の摂取量と原因別の死亡率(血管関連、血管関連以外、がん、すべての原因)との関係を、多民族集団ベース研究であるNorthern Manhattan Studyでプロスペクティブに検討した。この調査では、人種によりコーヒー摂取量と血管関連死との関係が異なることが示唆された。Journal of Nutrition誌オンライン版2013年6月19日号に掲載。

イブルチニブ、再発・難治性CLLで高い長期寛解率を達成/NEJM

 ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブ(ibrutinib、国内未承認)は、再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療において高い有用性を示す可能性があることが、米国・オハイオ州立大学のJohn C. Byrd氏らの検討で明らかとなった。BTKはB細胞受容体シグナル伝達系の主要コンポーネントで、腫瘍微小環境との相互作用を誘導し、CLL細胞の生存や増殖を促進するとされる。イブルチニブはBTKを阻害する経口薬で、正常T細胞には有害な影響を及ぼさないという特徴を持ち、CLL、SLLを含む第I相試験で有望な安全性と抗腫瘍効果が確認されている。NEJM誌オンライン版2013年6月19日号掲載の報告。

乳児の急性細気管支炎治療、アドレナリン吸入は食塩水吸入と同程度/NEJM

 乳児の急性細気管支炎の治療について、ラセミ体アドレナリン(商品名:ボスミン)吸入は、食塩水吸入よりも有効でなかったことが示された。一方で、吸入治療戦略に関して、固定スケジュールよりも必要に応じて行うオンデマンド吸入が優れていると考えられることも明らかになった。ノルウェー・オスロ大学病院のHavard Ove Skjerven氏らが、多施設共同無作為化試験の結果、報告した。乳児の急性細気管支炎は大半はRSウイルスが原因で、入院率が高く換気補助を必要とし、致死的なこともある。治療では気管支拡張薬の使用は推奨されておらず、食塩水吸入の治療が行われることが多いが、吸入治療の効果の可能性については、薬剤の種類、投与の頻度に関するコンセンサスは得られていないのが現状であった。NEJM誌2013年6月13日号掲載の報告より。

5-HT1A受容体が精神科薬物治療で注目されている

 スペイン・バルセロナ バイオメディカル研究所のPau Celada氏らは、新たな精神疾患の治療薬開発にあたって注目されているセロトニン5-HT1Aの合理的根拠と研究の現状について報告した。冒頭、著者は精神疾患の治療薬の現状について、「現代社会において精神疾患は、多額の経済損失をもたらしている。一方で、薬物治療は、いまだ至適とは言い難い状況にある」と指摘している。CNS Drugsオンライン版2013年6月12日号の掲載報告。

慢性疼痛に対し認知行動療法をベースにした疼痛自己管理プログラムが有効

 慢性疼痛に対してしばしば認知行動療法が行われているが、オーストラリア・シドニー大学のMichael K. Nicholas氏らは、認知行動療法をベースとした疼痛自己管理(pain self-management:PSM)プログラムが高齢の慢性疼痛患者において、少なくとも短期的には有効であることを無作為化試験により明らかにした。Pain誌2013年6月号(オンライン版2013年2月26日号)の掲載報告。

ITを活用した肥満児のプライマリ共同ケアモデル、効果には疑問/BMJ

 3~10歳の肥満児に対する、一般開業医と体重マネジメント専門サービス(小児科医3人、栄養士2人)による「共同ケアモデル」の介入は、実行可能で有害性はなく、家族と一般医からの評価は高いが、対照群と比較してBMIならびに他のアウトカムを改善しなかったことが明らかになった。オーストラリア・王立小児病院のMelissa Wake氏らが無作為化試験の結果、報告した。同国では、専門的な肥満治療クリニックにアクセスできる肥満児が限られているという。共同ケアモデルはITを駆使したもので、アクセス改善が期待されたが、その有効性は検証されていなかった。BMJ誌オンライン版2013年6月10日号掲載の報告より。

乾癬性関節炎に対するウステキヌマブの有効性と安全性を確認/Lancet

 中等症~重症の尋常性乾癬に対して有効性が示されているウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)は、活動期の乾癬性関節炎に対しても有効であることが示された。イギリス・グラスゴー大学のIain B McInnes氏らが、第3相多施設共同二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。乾癬患者の多くが乾癬性関節炎を呈し、QOLの低下や死亡率増大が認められるが、ウステキヌマブの第2相試験において、症候性症状の改善およびQOLの改善が報告されていた。Lancet誌オンライン版2013年6月12日号掲載の報告より。

重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(108)より-

 インフルエンザは急性熱性ウイルス性疾患であり、自然に軽快することが多いが、一部の患者では肺炎などを合併し、重症化することが知られている。重症インフルエンザ患者に対してエビデンスの存在する治療方法はないが、WHOのガイドラインでは、パンデミック2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症の重症例や鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症に対して、オセルタミビル(商品名:タミフル)の高用量投与や治療期間の延長を考慮すべきと述べられている。

脱毛症の男性は前立腺がんの発症リスクも高いのか?

 男性型脱毛症(AGA)は遺伝性で年齢に強く依存し、男性ホルモンのアンドロゲンがその発症に重要な役割を担っていると考えられている。米国・クリーブランドクリニックのAline Amoretti氏らは、AGAと前立腺がんは類似のリスク因子を有しており関連性があると考えられるとして、そのエビデンスを調べるシステマティックレビューとメタ解析を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年6月号(オンライン版2013年2月8日号)の掲載報告。

せん妄はレビー小体型認知症のサイン?!

 英国・ニューカッスル大学のEmma Vardy氏らは、せん妄と認知症各タイプとの関連について調べた結果、レビー小体型認知症との結びつきが高い可能性があることを報告した。せん妄は、認知症においては共通してみられ、認知症リスクの増大との関連が知られる。しかし、特定タイプの認知症リスクを増大するのかについては不明であった。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2013年5月31日号の掲載報告。

尿道カテーテル抜去時の抗菌薬予防的投与、短期入院患者ではベネフィットがある/BMJ

 入院患者の尿道カテーテル抜去時の抗菌薬予防的投与について、カテーテルを受けていた期間が短期の患者については同投与をしたほうがベネフィットがあることを、米国・ワシントン大学のJonas Marschall氏らがメタ解析の結果、報告した。著者は、「患者がベネフィットを受けるかを見極めて投与を行えば、抗菌薬予防的投与の不利益(副作用、コスト、耐性菌の発生)は軽減できうる」と述べている。BMJ誌オンライン版2013年6月11日号掲載の報告より。

小児がんサバイバー、成人後の転帰の実態が明らかに/JAMA

 小児がんを克服した成人は、慢性疾患の有病率が90%以上に上り、多くの未診断の問題を抱えており、その割合は高齢になるほど増加する傾向にあることが、米国・セントジュード小児研究病院のMelissa M. Hudson氏らの検討で明らかとなった。小児がんの既往歴のある成人は、がん治療関連の有害な転帰のリスクを抱えるとされる。これら小児がんサバイバーにおける成人後の全身的な慢性疾患の罹患状況に関して、包括的な調査はこれまで行われていなかったという。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。

混合診療で人工膝関節全置換術の予後は変わるのか?

 シンガポールには、日本と似たような国民に公的医療の提供を保障する、強制加入と補助金で運営する国民皆保険制度がある。一方で、公立病院であっても、外科医の選択や個室など保険対象外のオプションを選択することも可能となっている。シンガポール総合病院のHamid Rahmatullah Bin Abd Razak氏らは、これまで同制度に関連した検討がなかった、人工膝関節全置換術(TKA)の予後に対する医療費補助の影響についてレトロスペクティブに検討した。Orthopedics誌2013年6月1日号の掲載報告。

【ご案内】ヘルスケアリーダーシップ研究会「IHL2013」説明会

 NPO法人 ヘルスケアリーダーシップ研究会(IHL)は、2013年7月20日(土)に、9月からスタートする第5期の説明会を開催する。IHLは、「ヘルスケアに関わる者として、自分の価値観(死生観・医療観)を持ち、強い意志のもと、人々の共感を得ながら、社会の変革と創造を推進することができるリーダーを輩出する」ことをミッションとしたNPO法人で、「セミナー活動」「研究会活動」「キャリア支援」の3つを活動の柱としている。