日本語でわかる最新の海外医学論文|page:760

CTO再灌流、生存率改善はみられないものの、バイパス術施行を有意に減らす

 慢性完全閉塞(CTO)に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)の成功率は、術者の経験の蓄積、デバイスや手技の改善により向上している。とくに薬剤溶出ステント(DES)の登場によって、ベアメタルステントに比べて再狭窄発生や再灌流療法の再施行が減少し、複雑なCTOに対するPCI施行が容易になった。これまでにも、CTOに対する再灌流療法によって、症状の改善、左室駆出率の改善、バイパス術の減少などが報告されているが、生命予後の改善に関しては一定した結果が得られていない。韓国のグループが、DESのみを用いたPCIによる研究結果をJACC Cardiovascular Interventions 誌オンライン版2016年2月25日号で発表した。

スーグラほかSGLT2阻害薬は高齢者に安全か

 3月3日、アステラス製薬株式会社は、「本邦の高齢者におけるSGLT2阻害薬の安全性と有効性」と題し、演者に横手 幸太郎氏(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学講座 教授)を招き、プレスセミナーを開催した。講演では、65歳以上の高齢者7,170人を対象としたSGLT2阻害薬イプラグリフロジン(商品名:スーグラ)錠の大規模調査「STELLA-ELDER」の中間報告も行われた。  はじめに、2型糖尿病をメインにその概要や機序が説明された。わが国の糖尿病患者は、疫学推計で2,050万人(2012年)と予想され、この5年間で予備群といわれている層が減少した半面、糖尿病と確定診断された層は増加しているという。血糖コントロールについては、さまざまな治療薬の発売もあり、2002年と2013年を比較すると、2型糖尿病患者のHbA1cは7.42%から6.96%へと低下している。しかしながら、患者の平均BMIは24.10から25.00と肥満化傾向がみられる。

妊婦の体重増加に関する国際基準が完成/BMJ

 英国・オックスフォード大学のLeila Cheikh Ismail氏らは、INTERGROWTH-21stプロジェクト「胎児発育追跡研究(Fetal Growth Longitudinal Study:FGLS)」のデータを用い、妊娠中の体重増加量について国際基準を作成した。現在利用されている妊娠中の体重増加のガイドラインやチャートは、特定の国の研究から得られたもので、研究方法などに違いがあるため適正な体重増加量にも差があり、コンセンサスが得られていなかった。BMJ誌オンライン版2016年2月29日号掲載の報告。

ANGPTL4、LPL、SVEP1遺伝子変異は冠動脈疾患と関連/NEJM

 アンジオポエチン様タンパク質 4をコードしているANGPTL4の機能喪失型遺伝子変異キャリアは、非キャリアと比較してトリグリセライド値が有意に低く、同変異体が冠動脈疾患の予防と関連していることを、米・マサチューセッツ総合病院のNathan O. Stitziel氏らが大規模なゲノムワイド解析を行い、明らかにした。冠動脈疾患の発症にはリポ蛋白リパーゼ(LPL)経路が重要な役割を担っており、この経路を治療により調整することで冠動脈疾患の予防につながる可能性がある。近年、冠動脈疾患リスクに影響を及ぼす低頻度コード変異体が発見され、冠動脈疾患の治療や予防のターゲットとして注目されている。NEJM誌オンライン版2016年3月2日号掲載の報告。

急性双極性うつ病に対する非定型抗精神病薬の信頼性は

 双極性障害(BD)に関連する混合性の特徴を伴う急性うつ病の治療における第2世代抗精神病薬(SGA)の使用を支持するエビデンスは乏しく、不明確である。そのような中、米国・コロンビア大学のMichele Fornaro氏らは、混合特徴を伴う急性BDのうつ病治療に対するSGAを調査した研究のシステマティックレビューと予備メタ解析を行った。International journal of molecular sciences誌2016年2月号の報告。

FDA、パルボシクリブのHR+ HER2-転移乳がんへの適応拡大を承認

 米ニューヨーク州ニューヨーク発、ファイザー社は2016年2月19日、米国食品医薬品局(FDA)が、転移乳がん治療薬パルボシクリブ(商品名:IBRANCE)125mgカプセルの適応拡大を承認したと発表。これまでの適応症に加え、内分泌療法後に疾患が進行したホルモン受容体陽性・ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HR+HER2-)転移乳がんに対するフルベストラントとの併用治療の承認を取得した。

テロのストレスがもたらす心血管イベント増加:フランス

 2015年1月7日朝に起こった「シャルリー・エブド事件」は、3日間のパリにおけるテロ攻撃の幕開けとなった。その際、地元メディアは、攻撃の詳細な報道に、彼らのプログラムの大部分を割いた。Francesco Della Rosa氏らは、感情的なストレスが心血管関連入院の増加を引き起こすと仮定し、トゥールーズ(フランス)における2015年1月の胸痛ユニットの状況を分析した。Archives of Cardiovascular Diseases Supplements誌2016年1月号の掲載報告。

離婚と脳卒中リスク~日本人5万人のデータ

 婚姻状態の変化と心血管疾患リスクの関連についての知見は一貫しているが、脳卒中リスク、とくに脳卒中のサブタイプ別にみた研究はほとんどない。大阪大学の本庄かおり氏らが婚姻状態の変化(離婚)と脳卒中リスクとの関連について検討した結果、これらには正の相関が認められ、その相関は生活環境や雇用状況により変化することが示された。Stroke誌オンライン版2016年3月1日号に掲載。

コントロール不良の糖尿病へのデグルデク+リラグルチド vs.グラルギン増量/JAMA

 インスリン グラルギンとメトホルミンによる治療中でコントロール不良の2型糖尿病患者に対し、インスリン デグルデク/リラグルチド治療はインスリン グラルギン増量治療と比べて、26週時点の評価でHbA1c値の低下値について非劣性が確認され、2次解析によりその値が有意に大きかったことが確認された。米国・テキサス大学のIldiko Lingvay氏らが、2型糖尿病患者557例について行った第III相無作為化非盲検比較試験の結果、示された。JAMA誌2016年3月1日号掲載の報告。

冠動脈疾患リスク、ANGPTL4阻害遺伝子キャリアでは低い/NEJM

 ヒト遺伝子研究の解析から、アンジオポエチン様4(ANGPTL4)不活性変異体は良好な脂質プロファイルと関連し、同キャリアは非キャリアに比べ、冠動脈疾患リスクが低いことが判明した。米国・Regeneron Genetics CenterのFrederick E. Dewey氏らが、4万2,930人のデータを解析した結果で、NEJM誌オンライン版2016年3月2日号で発表した。また、マウスとサルを対象としたAngptl4モノクローナル抗体の影響を調べた試験でも、同様の効果が認められたという。

アルツハイマー病の今後の治療戦略予測

 アルツハイマー病は、最もよく見られる進行性の神経変性疾患である。コリン作動性機能障害は主要な病理学的変化の1つであり、コリン作動性ニューロンの枯渇は、βアミロイドプラークや神経原線維変化といった十分に確立された毒性によって引き起こされる。コリン作動性機能障害は、アセチルコリンの合成と放出の減少の結果であり、ムスカリン性およびニコチン性のコリン作動受容体の機能を変化させる。また、コリン作動性変化、アミロイドβ産生やタウのリン酸化と2つの主要なアルツハイマー病の病理的特徴との間には直接的な相関が同定されている。イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学のAnnamaria Confaloni氏らは、コリン作動性受容体の活性を調節できる新たなアロステリックやbitopicリガンドの同定を検討した。さらに、脳内で薬物を送達する薬物送達(drug delivery)法(ナノ粒子、リポソームなど)が、毒性や潜在的な副作用を低減するかも検討した。Current pharmaceutical design誌オンライン版2016年2月15日号の報告。

非STEMIに多段階PCIは必要か?:SMILE試験

 冠動脈完全血行再建術の非ST上昇心筋梗塞患者(以下、NSTEMI)における役割はいまだ明らかにはなっていない。この研究では、多枝冠動脈病変を有するNSTEMI患者に対する、単段階経皮的冠動脈インターベンション(以下、1S-PCI)と多段階の経皮的冠動脈インターベンション(以下、MS-PCI)という、2種類の冠動脈完全血行再建戦略の心血管・脳血管主要有害イベントの長期的結果を比較した。

処方率上位を伝えるレター、不要な抗菌薬処方削減に効果/Lancet

 英国一般医(GP)の不要な抗菌薬処方を減らす方法として、処方率の高い上位20%のGPに対し、英国主席医務官(England's Chief Medical Officer)名で、上位に位置していることを知らせるレター送付が有効であることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMichael Hallsworth氏らが、プラグマティックな試験を行い報告した。著者は、「低コストで全国規模の抗菌薬処方の削減が可能であり、抗菌薬管理プログラムに追加する価値があるものだ」と結論している。Lancet誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。

0.01%アトロピンによる近視治療、白人でも忍容性と有効性を確認

 近視の進行を予防する最も有効な治療はアトロピンとされているが、調節麻痺作用と散瞳作用のため二重焦点眼鏡の使用が必要となり、現実的な選択肢とはなっていない。また、アトロピンの効果には、色素が濃いアジア人種の眼と白色人種の眼とで違いがあることがよく知られている。アイルランド・Dublin Institute of TechnologyのJames Loughman氏らは、白色人種における低用量アトロピンの安全性について評価した。

血清尿酸値と心血管疾患死亡率の関係はJ字型

 アジア人における血清尿酸値と心血管疾患との関係を調査するために、大阪大学のWen Zhang氏らはEvidence for Cardiovascular Prevention from Observational Cohorts in Japan(EPOCH-JAPAN研究)のデータを用いて、日本における大規模なプール解析を実施した。その結果、血清尿酸値と心血管疾患死亡率との間にJあるいはU字型の関係が示唆された。また、日本人男女とも、血清尿酸値の最高五分位で心血管疾患の死亡率増加と関連していた。Journal of atherosclerosis and thrombosis誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。

スタチンは心臓手術後の急性腎障害を予防するか/JAMA

 スタチン未治療、既治療を問わず、心臓手術を受ける患者への周術期の高用量アトルバスタチン(商品名:リピトールほか)投与は、術後の急性腎障害(AKI)リスクを低減しないことが判明した。米国・ヴァンダービルト大学のFrederic T. Billings IV氏らが、二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、明らかにした。全体では有意差はないものの、投与群でリスクの増大が認められ、スタチン未治療患者では開始により有意なリスク増大が示された。スタチンについては、AKI発症機序に影響を及ぼす可能性が示されており、最近のいくつかの観察研究の解析報告で、スタチン既治療患者で心臓手術後のAKIリスク低減が報告されていた。ただし、それらの解析は検証が十分なものではなかった。JAMA誌2016年3月1日号掲載の報告より。

双極性障害治療、10年間の変遷は

 過去10年間メンタルヘルスケアにおいて、双極性障害と診断された患者の処方パターンや変化を明らかにするため、デンマーク・コペンハーゲン精神医学センターのLars Vedel Kessing氏らは、集団ベースおよび全国データを用いて検討した。さらに、国際的ガイドラインからの勧告と調査結果との関係も検討した。Bipolar disorders誌オンライン版2016年2月18日号の報告。