日本語でわかる最新の海外医学論文|page:733

双極性障害で高率にみられる概日リズム睡眠障害:東医大

 最近の研究によると、双極性障害(BD)と概日リズム睡眠障害との間に病態生理学的関連が認められることが示唆されている。しかし、BD患者における概日リズム睡眠・覚醒障害(CRSWD)の有病率を明らかにした研究はなかった。東京医科大学の高江洲 義和氏らは、BD患者におけるCRSWDの有病率と関連する要因を調査した。PLOS ONE誌2016年7月21日号の報告。

“身体不活動”が世界の大きな経済負荷に/Lancet

 罹患率や早期死亡率だけではなく、身体不活動(physical inactivity)はかなりの経済負荷を招いていることが、オーストラリア・シドニー大学のDing Ding氏らによる検討の結果、明らかにされた。著者は、「本報告は、世界中で非伝染性疾患を減らすための包括的戦略の一部として、定期的な身体活動の促進を優先すべき根拠となるものだ」と述べている。世界的に広がっている身体不活動は、慢性疾患の拡大および早期死亡に関連しているとされる。これまで疾病負荷については多数の報告がある一方、身体不活動の経済負荷について世界レベルでの定量化はされていなかった。Lancet誌オンライン版2016年7月27日号掲載の報告。

前立腺全摘除術、ロボット支援腹腔鏡 vs.開腹手術/Lancet

 ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術vs.開腹恥骨後式前立腺全摘除術のアウトカムを直接比較する第III相無作為化試験の術後早期12週時点の結果が発表された。オーストラリア・Royal Brisbane & Women's Hospital(RBWH)のJohn W Yaxley氏らによる検討で、機能的アウトカムについて有意差はみられなかったという。著者は、さらなる長期追跡が必要であるとしたうえで、「中間解析の時点では、患者は手術アプローチではなく、信頼を寄せている気心が通じた経験豊かな執刀医の選択を優先することを推奨する」と述べている。これまで両手術アプローチを比較した試験のデータはなかった。Lancet誌オンライン版2016年7月26日号掲載の報告。

高プロラクチン血症、アリピプラゾール切り替えと追加はどちらが有効か

 高プロラクチン血症は、抗精神病薬の悪影響として重要な問題でありながら、しばしば見逃されている。いくつかの研究によると、アリピプラゾールへの切り替えや追加により、抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症が改善することが報告されている。しかし、これら2つの治療法の有効性、安全性を直接比較した報告はなかった。韓国・NHIC Ilsan HospitalのHui Woo Yoon氏らは、高プロラクチン血症に対するアリピプラゾールの切り替えと追加の効果について比較検討を行った。Clinical neuropharmacology誌オンライン版2016年7月19日号の報告。

転移性脳腫瘍の放射線治療、認知機能を維持するには/JAMA

 1~3個の転移性脳腫瘍を有するがん患者では、定位放射線照射(SRS)単独はSRS+全脳照射(WBRT)に比べ認知機能の悪化割合が低いことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul D Brown氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年7月26日号に掲載された。SRSが適応となる転移性脳腫瘍では、SRS施行後にWBRTを加えると腫瘍コントールが改善するが、認知機能の低下を招くため、脳転移の治療におけるWBRTの役割について議論が続いている。

肥満外科手術の骨折リスク、術前も術後も高い/BMJ

 肥満外科手術患者は術前も術後も骨折リスクが高いことが、カナダ・ケベック州CHU研究センターのCatherine Rousseau氏らによる検討の結果、明らかにされた。年齢・性別で適合した肥満者と非肥満者を対照群としたコホート内症例対照試験の結果による。また、発生部位も特定され、術前は肥満に関連した骨折だったが術後は骨粗鬆症にみられる骨折パターンに変化していた。胆膵路転換術(biliopancreatic diversion)を受けた人では明らかな骨折リスクが認められたことも判明、胃バイパス手術(Roux-en-Y gastric bypass)、スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy)については断定的な結果は得られなかったという。BMJ誌オンライン版7月27日号掲載の報告。

てんかん患者の運動、その利点と障害とは

 てんかん患者の運動に関する利点と障害について、定量的手段を用いた研究は行われている。しかし、定性的調査を用いての個人的経験の検討は不十分である。英国・ローハンプトン大学のSarah S Collard氏らは、経時的にてんかん患者の運動についてのナラティブを提示し、てんかん患者の運動に対する心理社会的影響をさらに理解するための報告を行った。Epilepsy & behavior誌2016年8月号の報告。

10~30代での飲酒が精巣胚細胞腫瘍リスクに

 精巣胚細胞腫瘍(TGCT)の病因についてこれまでのデータから、出生後の環境や生活習慣が関与する可能性が示唆されている。今回、米国ワシントン大学のMary L Biggs氏らが集団ベースの症例対照研究で調べた結果、青年期や成人期の飲酒がTGCTリスクの増加に関連する可能性があることが示唆された。International journal of cancer誌オンライン版2016年7月30日号に掲載。

TAVR後の大動脈弁閉鎖不全症、2つの予測因子/NEJM

 フォンウィルブランド因子(VWF)の高分子量マルチマーの欠損の存在と、アデノシン二リン酸被覆カートリッジの血栓形成による閉塞までの時間(closure time:CT-ADP)の延長は、いずれも経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後の大動脈弁閉鎖不全症(AR)の予測因子であり、術後1年時の死亡率高値と関連していることが明らかとなった。フランス・リール大学病院センターのE. Van Belle氏らが、高分子量VWFマルチマーの評価あるいは血小板機能分析器(PFA-100)を用いた止血のポイントオブケア検査によりTAVR中のARをモニタリングできる、という仮説を検証する目的でコホート研究を行い、結果を報告したもの。大動脈弁狭窄症に対するTAVRを受ける患者の10~20%は術後ARを発症する。TAVR術後ARはただちに修復可能なので術中に検出することが望ましいが、実際には困難で、迅速かつ確実なスクリーニング法の開発が求められていた。NEJM誌2016年7月28日号掲載の報告。

多面的な心血管リスク対策で認知症を防げるか?/Lancet

 無作為に抽出した高齢者において、看護師主導による心血管リスク因子に焦点を絞った多面的な介入は、認知症発症率の減少には至らなかった。オランダ・Academic Medical CenterのEric P Moll van Charante氏らが、The Prevention of Dementia by Intensive Vascular care trial(preDIVA試験)の結果、報告した。先行研究では、心血管リスク因子の改善が認知症を予防する可能性が示唆されていた。今回の研究で介入の効果を確認できなかった理由について著者は、「ベースライン時、すでに軽度の心血管リスクを有し、プライマリケアで高い水準のリスク管理が行われていたことによる」と考察したうえで、未治療の高血圧患者においては介入により臨床的に意味のある効果が得られていることから、「今後は選択された集団で介入の有効性を評価すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月26日号掲載の報告。

日々の適度な身体活動が長時間座位による死亡リスクを抑制/Lancet

 毎日の適度な身体活動(1日約60~75分)は、長時間座位と関連する死亡リスクを排除すると思われることが、英国・ケンブリッジ大学のUlf Ekelund氏らによる男女100万人超のデータをメタ解析した結果、明らかにされた。一方で、同活動はTV視聴時間と関連する死亡リスクについては、低減はするが排除するまでには至らなかった。長時間座位は多くの慢性症状や死亡との関連が示唆されている一方、身体活動が長時間座位による有害作用を減少もしくは排除にまで至るのかは不明であった。著者は、「検討の結果は、とくに長時間座位労働者が増えており、今後パブリックヘルスの推奨が行われていく社会において、身体活動のベネフィットについてさらなるエビデンスを提供するものだった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月27日号掲載の報告。

うつ病への認知行動療法 vs.行動活性化療法/Lancet

 成人うつ病患者に対し、認知行動療法(cognitive behavioural therapy:CBT)よりも簡便な行動活性化療法(behavioural activation:BA)で、CBTに劣らない効果が得られることが、英国・エクセター大学のDavid A Richards氏らによる無作為化対照非劣性試験の結果、明らかにされた。CBTは最もエビデンスに優れた治療だが複雑でコストを要する。今回の結果を踏まえて著者は、「うつ病の効果的な治療は、コストを要せずとも、また高度な訓練を受けた専門家でなくても実施可能なようだ」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月22日号掲載の報告。

糖尿病治療薬の選択と心血管アウトカム(解説:田中 敦史氏/野出 孝一 氏)-574

近年、報告が相次ぐ新規糖尿病治療薬の心血管アウトカム試験は、そのたびに大きな注目を集め、われわれ臨床家・研究者に新たな研究テーマをもたらしている。しかしその一方で、それら欧米での試験結果が、本邦での糖尿病日常診療にどれほどのインパクトを与えているのか、いまだ不透明な部分もある。事実、それらの心血管アウトカム試験では非常に限定的な対象者に対して、ごく短期間で従来治療群との間に非劣性を証明するための試験デザインが組まれており、当該薬剤のポテンシャルを十分に引き出せているのかどうかについては、熟考の余地があるように思われる。とくに過去の一部の試験では、心不全入院のリスクや心血管死、さらには総死亡のリスク増加を証明された薬剤もあり、一度植えつけられたそれらのリスクを払拭するのは容易なことではない。

統合失調症の維持治療では剤形変更を検討すべきか

 抗精神病薬による維持療法について、長時間作用型注射剤(LAI)と経口剤(AMT)における統合失調症患者の主観的ウェルビーイング、薬物に対する姿勢、QOLの違いを実臨床での証拠を提示するために、イタリア・フィレンツェ大学のF Pietrini氏らは検証を行った。European psychiatry誌オンライン版2016年7月18日号の報告。

早期抗レトロウイルス療法によるカップルのHIV-1伝播予防、5年超の効果/NEJM

 性的パートナーの一方でHIV-1感染陽性が認められた場合、すみやかに抗レトロウイルス療法(ART)が行われるようになったのは、HIV-1血清陽性・陰性者カップル間での伝播予防について検討したHPTN(HIV Prevention Trials Network)052試験の中間報告で、96%超の伝播予防効果が報告されたことによる(追跡期間中央値1.7年、2011年5月発表)。同研究について、追跡5年超の解析結果が、米国・ノースカロライナ大学のM.S. Cohen氏らによって発表された。早期治療群のカップル間伝播の低減効果が持続していることが確認されたという。NEJM誌オンライン版2016年7月18日号掲載の報告。