日本語でわかる最新の海外医学論文|page:718

未治療の緑内障への眼圧降下治療は視野を改善するか

 未治療の緑内障患者において、眼圧降下治療の開始によって視野はどのような影響を受けるのだろうか。スウェーデン・ルンド大学のBoel Bengtsson氏らは、前向き無作為化研究を行い、眼圧降下治療を開始した緑内障患者における視野の変化に、無治療の患者との間で有意な差は観察されなかったことを報告した。

家族性高コレステロール血症、親子への検診は有効か/NEJM

 プライマリケア診療での定期予防接種時に、親子に家族性高コレステロール血症(FH)のスクリーニングを実施することは可能であり、有効であることが、英国・ロンドン大学クィーンメアリー校のDavid S Wald氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年10月27日号に掲載された。遺伝性の若年性心血管疾患の高リスク者を同定するために、親子へのFHのスクリーニングが提唱されているが、有効性に関するデータは少ないという。

一般開業医でも不眠症治療を効果的に行うためには

 睡眠障害は、一般的な問題であるが、一般開業医(GP)を受診した患者における睡眠障害の有病率に関する研究は限られている。既存の心理的、身体的疾患に併発する睡眠障害の有病率は、一般集団と比較し、高い可能性がある。ノルウェー・Haukeland University HospitalのBjorn Bjorvatn氏らは、GP患者における不眠症(DSM-IV基準)の有病率、睡眠薬の使用を推定し、有病率が性別や年齢に依存するかどうかを評価した。Family practice誌オンライン版2016年10月27日号の報告。

T790M変異陽性NSCLCに対するオシメルチニブの有効性:AURA2試験

 オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)は、EGFR-TKI耐性およびT790M変異に対する強力かつ不可逆的なEGFR–TKIである。この研究は、既存のEGFR-TKIによる前治療後に増悪したT790M変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるオシメルチニブの有効性および安全性を評価した第II相試験AURA2の中間解析。Lancet Oncology誌オンライン版2016年10月14日号の掲載の報告。

心臓CT検査は冠動脈造影に代わり得るか/BMJ

 冠動脈疾患が疑われる患者への心臓CT検査は、冠動脈造影の施行率を抑制して診断率を改善するとともに、入院期間を短縮し、放射線被曝量や長期的なイベントを増加させないため、冠動脈造影の安全なゲートキーパーとなる可能性があることが、ドイツ・シャリテベルリン医科大学のMarc Dewey氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年10月24日号に掲載された。従来、閉塞性冠動脈疾患の最終診断は冠動脈造影で行われる。同時にステント留置が可能、CABGの計画が立てられるといった利点があるが、診断率が低いとのエビデンスがあり、過剰施行の可能性が指摘されている。CTは、正確で非侵襲的な選択肢とされるが、非定型的な胸痛のため冠動脈疾患が疑われ、冠動脈造影の適応となる患者におけるリスクおよび利点は知られていないという。

統合失調症患者の性格で予後を予測

 臨床症状や患者背景は、統合失調症における機能レベルやQOLを予測する。しかし、統合失調症のQOLや全体的な機能に対する性格特性の影響を検討した研究は少ない。性格特性は発症以前の特性であり、統合失調症発症を予測可能である。米国・ヴァンダービルト大学のCaitlin Ridgewell氏らは、性格特性と神経症および外向性とQOL、機能性における、個別的で付加的な影響を検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2016年10月13日号の報告。

軽度認知障害とうつの併存は認知症リスク大

 軽度認知障害(MCI)の高齢者は、認知症に進行するリスクが有意に高い。国立長寿医療研究センターの牧迫 飛雄馬氏らが、MCIの地域在住高齢者が認知症を発症する危険因子を検討したところ、MCIとうつ症状が併存すると認知症発症リスクがより高いことがわかった。Journal of Alzheimer's disease誌2016年10月18日号に掲載。

GLP-1アナログ製剤で乳がんリスクは増大するか/BMJ

 英国のプライマリケアデータベースを用いたコホート研究の結果、GLP-1アナログ製剤の使用と乳がんリスク上昇との関連性は確認されなかった。カナダ・Jewish General HospitalのBlanaid M Hicks氏らが、2型糖尿病患者の乳がん発症リスクとDPP-4阻害薬あるいはGLP-1アナログ製剤の使用との関連を解析し、報告したもの。GLP-1アナログ製剤のリラグルチドでは、無作為化試験においてプラセボと比較し乳がん発症が多くみられたことが報告されていたが、この安全性について分析する観察研究は、これまでなかった。著者は、「検討では、使用期間2~3年ではリスク上昇が観察されたが、GLP-1アナログ製剤使用患者の乳がん検出率が一時的に増加したためと考えられる。ただし、発がんプロモーターの影響を排除することはできない」と述べている。BMJ誌2016年10月20日号掲載の報告。

off-pump CABG vs.on-pump CABG、5年後も有意差なし/NEJM

 off-pump冠動脈バイパス術(CABG)は、on-pump CABGと比較して5年後の死亡・脳卒中・心筋梗塞・腎不全・再血行再建術の複合アウトカムに差はなく、両手法の有効性や安全性が同等であることが示された。カナダ・マクマスター大学のAndre Lamy氏らが、CABG Off or On Pump Revascularization Study(CORONARY)試験の最終結果を報告した。CORONARY試験では、off-pump CABGとon-pump CABGとで、30日後および1年後のいずれも臨床アウトカム(死亡・脳卒中・心筋梗塞・腎不全)に有意差はないことが報告されていた。NEJM誌オンライン版2016年10月23日号掲載の報告。

高齢者への抗精神病薬投与、中止までの期間を解析

 ニュージーランドや全世界で適応可能なコンセンサスガイドラインでは、統合失調症や長期間の治療が必要とされる重度の精神症状を有する精神疾患でない限り、抗精神病薬の曝露期間は12週間を超えないことが推奨されている。しかし、第2世代抗精神病薬(SGA)の初回中止までの期間(time-to-first discontinuation:TTFD)について、高齢者における実臨床の情報は限られている。ニュージーランド・オタゴ大学のHenry C Ndukwe氏らは、65歳以上のSGA新規処方患者におけるTTFD、アドヒアランス、持続性を比較した。Journal of clinical psychopharmacology誌2016年12月号の報告。

高血圧に関する川柳・標語 2017年版を募集 【日本高血圧学会/日本高血圧協会からのご案内】

 日本高血圧学会と日本高血圧協会は2016年12月1日から、2017年版の「高血圧」に関する川柳と標語の募集を開始する。同企画は、日本高血圧学会と日本高血圧協会の共同企画で、一般市民の血圧と健康に関する意識を高める目的で、昨年度より毎年の恒例企画として展開されている。川柳・標語のお題はともに「高血圧」で、減塩・減量・運動などの生活習慣、医師・患者関係、家族関係、社会風刺などユーモアやウイットに富んでインパクトのある、多くの人に親しまれる作品が集まることが期待される。

冠動脈手術時のトラネキサム酸はアウトカムを改善するか/NEJM

 合併症リスクのある冠動脈手術患者に対し、トラネキサム酸を投与しても、死亡や血栓性合併症のアウトカムは改善しない。トラネキサム酸を投与した群では、プラセボ群に比べ、大出血や再手術を要する心タンポナーデのリスクは減少したものの、痙攣発生率は増大が示された。オーストラリア・モナシュ大学のPaul S. Myles氏らが行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、明らかにした。トラネキサム酸は、冠動脈手術の際に出血リスクを減少することは知られていたが、アウトカムを向上するかどうかは不明だった。また、トラネキサム酸の持つ血栓形成促進性や痙攣誘発性効果についての懸念も指摘されていた。NEJM誌オンライン版2016年10月23日号掲載の報告。

安定期COPDへの長期酸素療法の効果/NEJM

 安静時または運動時に中等度酸素飽和低下が認められる慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対し、長期酸素療法を行っても、初回入院または死亡までの期間延長にはつながらなかった。COPD増悪率やCOPD関連入院率についても、低減効果は示されなかった。米国・コロラド大学のRichard K. Albert氏らの「Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group」が、738例を対象に行った無作為化比較試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2016年10月27日号で発表した。これまで同患者に対する長期酸素療法の効果は明らかになっていなかった。

難治性てんかんに対するレベチラセタムの評価:群馬大

 レベチラセタムは、良好な忍容性を有しており、さまざまな発作型やてんかん症候群に対し有効な薬剤である。しかし、MRI所見や知的障害の有無に基づいた、子供の難治性てんかんに対するレベチラセタムの有効性を評価した研究はなかった。群馬大学の村松 一洋氏らは、子供の難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有効性、安全性を評価した。Brain & development誌オンライン版2016年10月13日号の報告。

進行期パーキンソン病への期待の一手

 10月27日、アッヴィ合同会社は、進行期パーキンソン病治療薬レポドパ、カルビドパ水和物(商品名:デュオドーパ配合経腸用液)の発売を受け、都内でプレスセミナーを開催した。セミナーでは、パーキンソン病診療の現状のほか、患者さんが疾患による日常生活の不便さや将来への不安などを語った。

網膜中心動脈閉塞の発症に大気汚染が関連

 網膜中心動脈閉塞(CRAO)の発症に、環境大気汚染が関連していることが示唆された。台湾・国立陽明大学のHui-Chen Cheng氏らが行った地域住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、とくに糖尿病、高血圧患者および65歳以上の高齢者では、大気汚染とCRAO発症リスク増加との間に有意な関連が認められたという。Ophthalmology誌オンライン版2016年10月13日号掲載の報告。

LDL-C低下に関与する遺伝子変異は2型糖尿病のリスク増加と関連(解説:小川 大輔 氏)-606

脂質異常症の治療としてスタチン薬が動脈硬化性疾患の予防のために用いられることが多いが、これまでにスタチン薬の使用は体重増加や2型糖尿病の新規発症と関連することが報告されている。一方、LDLコレステロールトランスポーターNiemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)の阻害薬であるエゼチミブの糖代謝に対する影響については不明である。今回、LDLコレステロールの低下に関与するNPC1L1遺伝子の変異と2型糖尿病の発症リスク増加との関連が報告された。

認知症のための学部医療教育強化

 伝統的な医療教育である期間限定の臨床ローテーションで得られた経験は、長期的条件、医療システムの発展により、多くの場合うまくいかない。学生の長期間配置、接触の継続性、慢性疾患について学ぶ機会、患者の経験を可能とするlongitudinal integrated clerkshipsやsenior mentor programmesが求められる。英国・Brighton and Sussex Medical SchoolのSube Banerjee氏らは、認知症に対する2年間の学際的教育プログラムの開発、提供についてレビューした。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2016年10月10日号の報告。