日本語でわかる最新の海外医学論文|page:707

てんかん重積状態への低体温療法は有益か/NEJM

 痙攣性てんかん重積状態の患者に対し、標準治療に加えて低体温療法を行うことで神経保護効果が得られるのか。フランス・ベルサイユ総合病院のStephane Legriel氏らが多施設共同非盲険無作為化試験を行った結果は、90日アウトカムについて有意な差は認められないというものであった。低体温療法の抗てんかん作用および神経保護効果は、動物モデル試験で認められ、ヒトにおいても超難治性てんかん重積患者にアジュバント療法として用いられている。さらに、これまで脳梗塞や脳出血、脳外傷といったてんかん重積状態の基礎的疾患において、神経保護治療としての検証が行われているが、結果は概して否定的なものであった。NEJM誌2016年12月22日号掲載の報告。

統合失調症はがんになりにくいといわれていたが

 ほぼ一世紀の間、統合失調症患者におけるがんの罹患率は、一般人より低いといわれてきた。しかし、ここ10年間で、がんと統合失調症との関係は明確ではなくなってきている。台湾・台北市病院のL Y Chen氏らは、若者や中年の統合失調症患者におけるがんリスクを調査した。Epidemiology and psychiatric sciences誌オンライン版2016年11月21日号の報告。

2歳未満の中耳炎、抗菌薬投与期間を短縮できるか/NEJM

 生後6~23ヵ月の急性中耳炎乳幼児において、抗菌薬の投与期間を短縮した場合の予後は標準治療と比較して良好とはいえず、有害事象の発現率低下や抗菌薬耐性の出現率低下も認められなかった。米国・ピッツバーグ大学医療センターのAlejandro Hoberman氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照第IIb相試験の結果を報告した。急性中耳炎の小児で抗菌薬の投与期間を制限することは、抗菌薬耐性リスクを低下させ得る戦略と考えられているが、これまで臨床試験でその効果は確認されていなかった。NEJM誌2016年12月22日号掲載の報告。

腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱へのメッシュ手術の安全性/Lancet

 スコットランドで行われた地域住民対象のコホート研究において、腹圧性尿失禁に対しては、長期転帰のさらなる調査が必要ではあるもののメッシュ手術の使用が支持され、一方、前膣壁脱および後膣壁脱に対しては単独で最初の修復として行う場合、メッシュ手術による一次脱修復は推奨されないことが示された。また、骨盤臓器脱の修復に関しては、経膣および経腹メッシュ手術はいずれも、経膣非メッシュ手術との比較において有効性および合併症は同程度であった。英国・NHS National Services ScotlandのJoanne R Morling氏らは、「今回の結果は、明確に支持できる特定の骨盤臓器脱修復術はないことを示すものである」と結論している。腹圧性尿失禁および骨盤臓器脱に対するメッシュを用いた経膣的修復術は、長期的な有効性や術後合併症に関するエビデンスが乏しく、その安全性が懸念されていた。Lancet誌オンライン版2016年12月20日号掲載の報告。

妊娠中のコーヒー摂取、子供のADHDへの影響は

 妊娠中のカフェイン摂取や長期的なアウトカム(子供の神経行動など)を評価した研究は、まだ不十分であり、研究結果は一貫していない。ブラジル連邦大学のBianca Del-Ponte氏らは、妊娠中の母親のカフェイン摂取とその子供が11歳時のADHDとの関連を評価するため検討を行った。BMJ open誌2016年12月5日号の報告。

高齢者のロービジョンケアへのリハビリ併用効果

 視覚機能が低下したロービジョン(LV)高齢者を対象に、基本的なデバイス使用のLVケア介入と、そこにリハビリテーションを併用する介入(LVR)の有用性を、無作為化臨床試験で比較検討した結果が報告された。結果は、LVRの有効性が顕著だったのは最良矯正遠見視力(BCDVA)が20/63~20/200の患者においてのみであることが示されたという。

第3世代TKIの登場と肺がん再生検の現状

 EGFR-TKIはEGFR活性変異陽性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の1次治療薬である。しかし、初期の効果にもかかわらず、1~2年で耐性が発現し病勢進行にいたる。その耐性の60%を占める新たな変異は790Mをも標的とする第3世代EGFR-TKIオシメルチニブが本邦でも登場した。この新たなTKIの適正な使用には再生検などによるT790Mの特定が必要である。本邦の再生検では、経気管支組織による採取が一般的だが、腫瘍病巣へ到達の困難さや、侵襲性などにより、その成功率は制限される。

多発性硬化症、抗CD20抗体ocrelizumabで再発率低下/NEJM

 多発性硬化症再発患者において、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体ocrelizumabはインターフェロンβ-1aよりも、疾患活動性および進行を有意に抑制することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のStephen L Hauser氏らによる、2つの第III相国際多施設共同無作為化試験OPERAIとOPERAIIの結果で、NEJM誌オンライン版2016年12月21日号で発表された。多発性硬化症にはB細胞が関与していることが知られる。ocrelizumabはCD20+B細胞を選択的に減少する作用を有している。

双極性障害、再入院リスクの低い治療はどれか

 気分安定薬(MS)による抗精神病薬補助療法が再発予防につながるとされる概念は、双極性障害(BD)患者における少数の自然主義的研究により支持されている。イスラエル・テルアビブ大学のEldar Hochman氏らは、MS(リチウムまたはバルプロ酸)単独療法または非定型、定型抗精神病薬補助療法により退院した双極性障害I型の躁病患者における1年間の再入院率を比較した。Bipolar disorders誌2016年12月号の報告。

アルツハイマーの認知機能低下、冠動脈疾患で加速

 冠動脈疾患(CHD)がアルツハイマー病(AD)における認知機能低下を加速させるかどうかを、ドイツ・ボン大学のMarkus Bleckwenn氏らがプライマリケアでの前向き縦断的コホート研究で検討したところ、CHDは晩期発症型の高齢認知症患者における認知機能低下に有意に影響を及ぼすことが認められた。心血管疾患の予防が認知症の進行に影響するかもしれない。The British journal of general practice誌オンライン版2016年12月19日号に掲載。

新たな人工膵臓システム、日常生活下で有用/Lancet

 1型糖尿病成人患者への新たな連続血糖測定(CGM)付きインスリンポンプの安全性と有用性について、自由生活下で検討した多施設共同無作為化クロスオーバー比較試験の結果が発表された。米国・ボストン大学のFiras H El-Khatib氏らが検討したのは、iPhone 4SとG4 Platinum CGMを連動させた人工膵臓システムで、体格の情報のみで初期化し、インスリンおよびグルカゴンを自動投与する。既存のセンサー増強型インスリンポンプとの比較において、カーボカウントの食事療法を要することなく優れた血糖コントロールを達成したことが示された。CGM付きインスリンポンプについて、これまで、自宅で自由に生活しながらという設定で安全性・有効性を調べる臨床試験は行われていなかった。Lancet誌オンライン版2016年12月20日号掲載の報告。

飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸による置換は冠動脈疾患リスクを低下させる!(解説:島田 俊夫 氏)-631

私たちは、炭水化物、脂肪、タンパク質と少量のミネラル、ビタミンを摂取することによりエネルギーを獲得している。しかしながら、炭水化物の過剰摂取と運動不足が糖尿病・肥満の主要因になっている。糖質制限は治療上重要だが、適切な供給カロリーを維持するためには炭水化物以外の栄養素からエネルギーを獲得することが必要となる1)。1g当たりの産生カロリーは、炭水化物4kcal、脂肪9kcal、タンパク質4kcalのエネルギーを産生する。単純計算から、糖質制限食は代替エネルギーを脂肪またはタンパク質から取らざるを得ない。

認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化

 認知症とせん妄の精神症状が合併すると、せん妄の診断は複雑化する。シンガポール・Tan Tock Seng病院のJennifer Abengana氏らは、認知症に合併したせん妄(DSD)患者において、BPSDの有無によりせん妄の発現および転帰の差異について検討を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年12月5日号の報告。

まるでゾンビ映画? NYの集団薬物中毒の原因物質とは/NEJM

 街はゾンビ映画の1シーンのようだった…2016年7月12日朝、米国ニューヨーク市ブルックリン地区で発生した薬物の過剰摂取によると思われる33人の集団中毒について、ニューヨークタイムズ紙は目撃者の証言として、こう伝えた。調査を行ったカリフォルニア大学サンフランシスコ校のAxel J Adams氏らは、中毒の原因物質として合成カンナビノイドAMB-FUBINACAを同定し、今回、NEJM誌オンライン版2016年12月14日号で報告した。近年、米国では新たな精神活性物質が、乱用薬物クラスとして急速に成長、活発化しているという。

母親のジカウイルス感染時期と児の先天性異常リスク/JAMA

 米国のジカウイルス感染妊婦の胎児および乳幼児の6%に、ウイルス感染関連の先天性異常を認め、感染が妊娠初期の場合は11%に上り、とくに脳異常や小頭症が多いことが、米国疾病対策予防センター(CDC)のMargaret A Honein氏らUS Zika Pregnancy Registry Collaborationの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2016年12月15日号に掲載された。妊娠初期のジカウイルス感染妊婦の胎児/乳幼児における小頭症のリスクは、仏領ポリネシアのデータでは約1%、ブラジル・バイア州では1~13%と報告されている。2009~13年に米国で実施されたジカウイルス感染がない妊婦の調査では、小頭症の発症率は生児出産1万人当たり約7件であったが、感染妊婦におけるリスクの程度は知られていなかった。

2つの抗精神病薬持効性注射剤、その違いを分析

 安定期統合失調症患者に対するアリピプラゾール400mg月1回製剤(AOM400)とパリペリドンパルミチン酸(PP)の改善を評価した、28週間無作為化オープンラベル直接比較試験(QUALIFY)について、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のSteven G Potkin氏らが、機能的アウトカムに関する多次元的評価を実施した。その結果、AOM400はPPと比較し、良好な改善を示し、より多くの患者が試験終了後、就労可能であることが示唆された。The international journal of neuropsychopharmacology誌オンライン版2016年12月8日号の報告。