日本語でわかる最新の海外医学論文|page:671

脳卒中リスク、ビタミンC摂取と反比例

 日本人における食事での抗酸化ビタミンの摂取と脳卒中発症の関連についてJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)で検討したところ、非喫煙者においてビタミンC摂取と脳卒中全体および脳梗塞発症との逆相関が認められた。European journal of clinical nutrition誌オンライン版2017年7月12日号に掲載。

限局性前立腺がん長期転帰、手術 vs. 経過観察/NEJM

 限局性前立腺がん患者に対する手術は経過観察と比べて、全死因死亡や前立腺がん死亡率を有意に低下しない。米国・ミネアポリス退役軍人(VA)ヘルスケアシステムのTimothy J. Wilt氏らが、患者731例を約20年間追跡した無作為化試験の結果、明らかにした。手術群は経過観察群と比べて有害事象の発現頻度が高かったが、病勢進行や追加治療のリスクが有意に低く、それらの大半が限局性または無症候性の生化学的進行であった。先行研究で、限局性前立腺がんで手術を受けた患者と経過観察のみを行った患者の死亡率について有意差がないことが明らかになっていたが、非致死的健康アウトカムや長期死亡に関しては不明なままであった。NEJM誌2017年7月13日号掲載の報告。

高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点

 日本老年医学会は7月20日に「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS-HT2017)」を発表した。本ガイドラインでは、日常診療で生じる問題に基づいてClinical Question(CQ)を設定しており、診療における方針決定をするうえで、参考となる推奨を提示している。  高齢者においては、生活習慣病管理の目的は脳血管疾患予防だけでなく、生活機能全般の維持という側面もあるため、フレイルや認知症などの合併症を考慮したガイドラインが重要と考えられている。そのため、高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、治療介入によるアウトカムを認知症や日常生活活動(ADL)に設定して行われたシステマティックレビューが基盤となっている。以下にその概略を紹介する。

公園や緑地が少ないとうつ病になりやすいのか

 公園や緑地が精神衛生上、有益な効果をもたらすとのエビデンスが増加しているが、ほとんどの研究において、特定または小さな地域に限定されている。韓国・ソウル大学のKyoung-Bok Min氏らは、公園や緑地が成人のうつ病や自殺の指標リスクと関連しているかを調査した。International journal of public health誌2017年7月号の報告。

抗うつ薬無効のうつ病患者、次の一手は?/JAMA

 抗うつ薬治療が奏効しない大うつ病性障害(MDD)患者を対象とした、抗うつ薬の切り替え療法(bupropion単独療法)と追加療法(bupropionまたはアリピプラゾール)の効果を比較する無作為化試験において、アリピプラゾール追加療法が切り替え療法よりも、12週間の治療中の寛解率の尤度が、わずかだが統計的に有意に増大したことが示された。米国・退役軍人(VA)コネチカット・ヘルスケアシステムのSomaia Mohamed氏らによる検討で、結果について著者は「アリピプラゾールも効果サイズは小さく、有害事象が認められる。費用効果などを含むさらなる検討を行い、このアプローチの真の有用性を明らかにする必要がある」と述べている。MDD患者のうち、第1選択の抗うつ薬で寛解に至るのは3分の1未満であり、残る患者には大半のガイドラインで、代替治療として切り替えや追加が推奨されている。JAMA誌2017年7月12日号掲載の報告。

健康的な生活で妊娠高血圧症候群後の高血圧リスク低下/BMJ

 女性の妊娠高血圧症候群(HDP)後の慢性高血圧症のリスクは、健康的な生活習慣を順守すれば明らかに低減することが可能であり、とくに健康的な体重の維持が重要であることが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSimon Timpka氏らによる、看護師健康調査II(Nurses' Health Study II:NHS II)の観察研究の結果で、BMJ誌2017年7月12日号で発表された。これまでの研究で、HDP歴のある女性は慢性高血圧症や心血管疾患のリスクが高いことが示されている。一方で、一般集団において、健康的な生活習慣は慢性高血圧症を低減可能なことが示唆されていた。

inotuzumab ozogamicin、CD22+前駆B細胞性ALLに欧州で承認

 米国ファイザー社は2017年6月30日、inotuzumab ozogamicinが「再発または難治性のCD22陽性前駆B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)」の成人患者に対する単剤療法として欧州委員会より承認を受けたことを発表した。今回の適応には、フィラデルフィア染色体陰性(Ph-)だけでなく、同陽性(Ph+)の再発または難治性の前駆B細胞性ALLも含まれている。Ph+のCD22陽性前駆B細胞性ALLの場合、少なくとも1種類以上のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療が奏効しなかった成人患者を適応とする。

質の高い食事は本当に死亡リスクを低下させる/NEJM

 12年にわたる食事の質の改善は、死亡リスクの低下と確実に関連している。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMercedes Sotos-Prieto氏らが、看護師健康調査(Nurses' Health Study:NHS)および医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study:HPFS)を基に解析し、明らかにした。これまでの研究で、食事の質を改善することにより、全死亡あるいは心血管疾患による死亡のリスクが低下することは示唆されていたが、長期的な食事の質の変化と死亡リスクとの関連を評価した研究はほとんどなかった。NEJM誌2017年7月13日号掲載の報告。

PAP療法は、睡眠時無呼吸症の心血管リスクを改善したのか/JAMA

 睡眠時無呼吸に対する陽圧呼吸(PAP)療法は、無治療あるいは偽治療(sham)と比較し、心血管イベントや死亡のリスクを低減しないことを、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のJie Yu氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果として報告した。睡眠時無呼吸(閉塞性および中枢性)は、有害な心血管リスク因子と関連しており、心血管疾患のリスクを増加させることが観察研究で示されている。PAP療法は、持続陽圧呼吸(CPAP)と適応補助換気(ASV)のどちらでも睡眠時無呼吸の症状を緩和するが、心血管転帰および死亡との関連性はこれまで不明であった。JAMA誌2017年7月11日号掲載の報告。

敗血症に対する初期治療戦略完了までの時間と院内死亡率の関係(解説:小金丸 博 氏)-700

敗血症は迅速な診断、治療が求められる緊急度の高い感染症である。2013年に米国のニューヨーク州保健局は、敗血症の初期治療戦略として“3時間バンドル”プロトコールの実施を病院に義務付けた。“3時間バンドル”には、(1)1時間以内に広域抗菌薬を投与すること、(2)抗菌薬投与前に血液培養を採取すること、(3)3時間以内に血清乳酸値を測定すること、が含まれる。さらに収縮期血圧が90mmHg未満に低下していたり血清乳酸値が高値の場合は、“6時間バンドル”として急速輸液(30mL/kg)や昇圧剤の投与、血清乳酸値の再測定を求めている。これらの初期治療戦略が敗血症の予後を改善するかは、まだ議論のあるところだった。

【JSMO2017見どころ】緩和・支持療法

 2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。

双極性障害に対するアジュバント介入~メタ解析

 双極性障害は世界的障害の要因トップ10に位置する疾患であり、高い医療コストがかかっている。これまでの研究では、心理療法と併用した気分安定薬による治療は、有意な再発率低下や入院率低下をもたらすことが示唆されている。しかし、科学的根拠に基づき十分に検討されていない心理社会的介入がある。オーストリア・グラーツ医科大学のTanja Macheiner氏らは、双極性障害患者に対するアジュバント心理社会学的介入の有効性を評価した。Journal of affective disorders誌オンライン版2017年6月27日号の報告。

加齢黄斑変性リスク、骨髄増殖性腫瘍患者で上昇

 デンマーク・コペンハーゲン大学のMarie Bak氏らによるコホート研究の結果、骨髄増殖性腫瘍(MPN)患者は加齢黄斑変性(AMD)のリスクが高いことが確認された。著者は、「全身性炎症がAMDの発症に関与している可能性が支持された」とまとめている。先行研究で、AMDのリスクは、全身性炎症により高まることが示唆されており、MPNでは慢性の免疫修飾が起きていることから、AMDのリスクが高いのではないかと推測されていた。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年6月22日号掲載の報告。

高濃度乳房における超音波検査の有効性/乳癌学会

 マンモグラフィによる乳がん検診では、高濃度乳房で診断精度が低下することが問題視されている。一方、超音波検査は乳房構成に影響されずに腫瘍を描出できるため、マンモグラフィの弱点を補完できるものとして期待される。高濃度乳房の多い若年者(40代女性)の診断性向上を目指し、J-START試験が行われている。このJ-START試験の宮城県におけるコホートを解析した結果が、第25回日本乳癌学会学術総会において、東北大学 乳腺内分泌外科・東北医科薬科大学 乳腺・内分泌外科の鈴木 昭彦氏により発表された。

ベンゾジアゼピン服用による死亡リスク増大の真相は/BMJ

 ベンゾジアゼピン系薬の服用について、服用開始6ヵ月の全死因死亡リスクは増大しないことが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのElisabetta Patorno氏らが、ベンゾジアゼピン系薬服用者約125万例と、高次元傾向スコアでマッチさせた非服用者を対象に行った試験で明らかにしたもので、BMJ誌2017年7月6日号で発表した。これまでに、ベンゾジアゼピン系薬の服用は、短期間であっても、死亡リスクが3~4倍に増大するというエビデンスが発表されていたが、それを否定する結果となった。なお、サブグループ解析では、服用開始12ヵ月、48ヵ月の死亡リスクや、65歳未満の患者の死亡リスクなどについては、4~9%のわずかな増大が認められている。

emicizumab、血友病A患者の出血リスクを87%低減/NEJM

 12歳以上の第VIII因子インヒビター保有の血友病A患者に対し、開発中のバイスペシフィック抗体emicizumab(ACE910)の週1回皮下投与は、年間出血イベントリスクを87%低減したことが報告された。ドイツ・ボン大学病院のJohannes Oldenburg氏らが、14ヵ国43ヵ所の医療機関を通じて行った第III相非盲検無作為化試験「HAVEN 1」の結果で、NEJM誌オンライン版2017年7月10日号で発表した。emicizumabは、第IX因子と第X因子を結び付けることで、血友病A患者に不足しており止血に必要な第VIII因子の機能を修復する。小規模ではあったが第I相試験で、インヒビター保有の有無を問わず血友病A患者において、出血の抑制効果が確認されており、今回の第III相試験では、第VIII因子インヒビター保有患者に対する週1回の予防投与を評価した。

アルツハイマー型認知症のセントラルドグマ(解説:岡村 毅 氏)-699

アミロイドが蓄積した無症候高齢者では、将来の認知機能低下が起きやすいことが報告された。将来MMSE得点は低下し、CDRのSum of Boxesは上昇し、ロジカルメモリも低下し、MCIへの進展も多く、FDG-PETでの代謝異常が進行し、海馬は萎縮し、脳室が拡大する。神経学の、そして人類の歴史において重要な論文である。