日本語でわかる最新の海外医学論文|page:570

ダコミチニブ、EGFR変異陽性NSCLCに国内承認/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2019年1月8日、「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」の効能・効果で、EGFR-TKIダコミチニブ(商品名:ビジンプロ錠15mg、同45mg)の製造販売承認を取得した。  ダコミチニブの有効性と安全性は、ダコミチニブとゲフィチニブを直接比較した国際共同第III相ARCHER1050試験の結果により確認された。盲検下での独立中央判定(BICR)の評価による無増悪生存期間中央値は、ダコミチニブ群では14.7ヵ月、ゲフィチニブ群では9.2ヵ月で、ダコミチニブ群はゲフィチニブ群と比べ、優れた改善を示した。また、全生存期間中央値は、ダコミチニブ群では34.1ヵ月、ゲフィチニブ群では26.8ヵ月であった。

mFOLFIRINOXが膵がん術後補助療法に有望/NEJM

 転移を有する膵がんの術後補助療法において、フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチンによる併用化学療法(修正FOLFIRINOX[mFOLFIRINOX])はゲムシタビン(GEM)療法に比べ、全生存期間が有意に延長する一方で、高い毒性発現率を伴うことが、フランス・ロレーヌ大学のThierry Conroy氏らが実施した「PRODIGE 24-ACCORD 24/CCTG PA 6試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。膵がんの治療では、手術単独の5年生存率は約10%と低く、術後補助療法ではGEM(日本ではS-1のエビデンスもある)が標準治療とされるものの、2年以内に69~75%が再発する。転移を有する膵がんの1次治療では、従来のFOLFIRINOXはGEMに比べ、全生存期間を延長することが知られている。

リナグリプチンのCARMELINA試験を通して血糖降下薬の非劣性試験を再考する(解説:住谷哲氏)-991

eGFRの低下を伴う腎機能異常を合併した2型糖尿病患者における血糖降下薬の選択は、日常臨床で頭を悩ます問題の1つである。血糖降下薬の多くは腎排泄型であるため腎機能に応じて投与量の調節が必要となる。DPP-4阻害薬の1つであるリナグリプチンは数少ない胆汁排泄型の薬剤であり、腎機能に応じた投与量の調節が不要であるため腎機能異常を合併した患者に投与されることが多い。これまでにDPP-4阻害薬の安全性を評価した心血管アウトカム試験CVOTにはサキサグリプチンのSAVOR-TIMI 53、アログリプチンのEXAMINE、シタグリプチンのTECOSが発表されている。リナグリプチンの安全性を評価した本試験の報告により、DPP-4阻害薬の安全性を評価したすべてのCVOTが出そろったことになる。本試験の最大の特徴は、リナグリプチンが胆汁排泄型であることに基づいて、これまで報告されたCVOTの中で最多の腎機能異常合併2型糖尿病患者を組み入れた点にある。

高血圧の定義、現状維持であれば1万人あたり5人の脳心血管イベントが発症するという警鐘(解説:桑島巖氏)-989

2017年に発表された米国ACC/AHA高血圧ガイドラインでは、高血圧基準がJNC7に比べて、収縮期、拡張期とも10mmHg下がり130/80mmHgとされた。この定義変更はSPRINT研究の結果を大幅に取り入れたものであるが、果たしてこの新しい高血圧基準をアジア住民に当てはめた場合、どの程度が脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患から免れるのであろうか。その課題に対する答えを示したのがこの論文である。本論文は、韓国国民健康保険サービスに参加した20~39歳までの約250万人について2006年から10年間追跡し、その間に発生した4万4,813件の脳血管障害、脳心血管死についてACC/AHA定義に従って分析したものである。

画像認識技術を応用し薬剤一包化を監査/富士フィルム

 富士フイルム株式会社は、一包化された薬剤の名称と数量を自動的に判定し、調剤薬局などでの薬剤師の監査業務をサポートする一包化監査支援システム「PROOFIT 1D(プルーフィット ワンドース)」を、2019年1月11日より富士フイルム富山化学株式会社(社長:岡田 淳二)を通じて発売する。  昨今、高齢化に伴って慢性疾患が増え、一回に服用する薬剤が多くなる中、薬剤の飲み忘れや飲み間違いを防止するために、薬剤の一包化ニーズが高まっている。現在、薬剤師には、健康被害を防ぐため、薬剤を渡す時に、薬剤の種類や数量に間違いがないかを確認する監査業務が義務付けられている。しかし、一包化された薬剤の監査業務では、薬剤師が一包ごとに薬剤の種類と数量を目視で確認しているため、大きな作業負荷がかかる。今後、在宅医療における服薬支援・指導など、地域での薬剤師の役割期待が拡大する中で、目視のみならず、システムも活用して、薬剤の監査業務の効率性をより高めていきたいというニーズがますます高まっている。

アトピー性皮膚炎にtapinarofクリームは有効

 アトピー性皮膚炎(AD)に対する安全かつ有効な局所治療が必要とされている。米国・PRA Health SciencesのJohnny Peppers氏らは、青年期および成人のADに対しtapinarof(GSK2894512 cream)は有効で忍容性が良好であることを、第II相無作為化用量設定試験で明らかにした。著者は、「大規模な臨床試験で確認する必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2019年1月号(オンライン版2018年7月3日号)掲載の報告。

職場におけるうつ病予防のための心理学的および教育的介入効果~メタ解析

 うつ病予防に対する心理学的および教育的介入は、小~中程度の効果があるといわれている。しかし、職場における効果については、あまり知られていない。スペイン・マラガ大学のJuan Angel Bellon氏らは、職場におけるうつ病予防のための心理学的および教育的介入効果を評価するため、無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。Scandinavian Journal of Work, environment & health誌オンライン版2018年11月30日号の報告。

脳梗塞/TIAへのクロピドグレル併用、ベストな投与期間は/BMJ

 高リスク一過性脳虚血発作(TIA)または軽症虚血性脳卒中の発症後24時間以内のクロピドグレル+アスピリンの抗血小板薬2剤併用療法は、1,000人当たりおよそ20人の脳卒中再発を予防できることが示された。また、2剤併用投与の中断は、21日以内に行い、できれば10日以内に行うのが、最大のベネフィットを享受かつ有害性を最小とできることも示唆されたという。中国・四川大学のQiukui Hao氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果で、BMJ誌2018年12月18日号で発表された。

急性期の軽症脳梗塞と高リスクTIAに対するクロピドグレルとアスピリンの併用療法はいつまで続けるか?(解説:内山真一郎氏)-990

軽症脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)は重症脳梗塞を含む心血管イベントを続発する危険性が大きい。これらの患者では抗血小板療法の有効性が証明されているが、多くのガイドラインではアスピリンの単剤療法を推奨している。中国で行われたCHANCE試験ではクロピドグレルとアスピリンの併用療法がアスピリンの単剤療法より優れていることが示された。また、欧米で行われたPOINT試験でも、この併用療法が単剤療法より脳梗塞再発予防に優れていたが、出血も増加した。本研究では、これら2件の二重盲検比較試験とこれら以前に行われたFASTER試験で同定された1万447例のデータを対象にメタ解析を行った。

SGLT2阻害薬は動脈硬化性疾患を合併した2型糖尿病には有用かもしれないが日本人では?(解説:桑島巖氏)-988

今、2型糖尿病の新規治療薬SGLT2阻害薬の評価が医師の間で大きく分かれている。一方は積極的に処方すべしという循環器科医師たち、もう一方は慎重であるべきという糖尿病治療の専門医師たちである。自らの専門の立場によって分かれる理由は、このレビューを読み込むとよくわかる。そして一般臨床医は個々の症例にどのように処方すべきか、あるいは処方すべきでないかが理解できる内容である。このレビューはSGLT2阻害薬に関して、これまでに発表された3つの大規模臨床試験、EMPA-REG、CANVAS Program、DECLARE-TIMI58を結果について独立した立場から俯瞰し、レビューした論文である。

肥大型閉塞性心筋症へのアルコール中隔アブレーションの長期成績【Dr.河田pick up】

 症候性の肥大型閉塞性心筋症(HOCM)患者に対する非薬物療法としては、外科的中隔心筋切除術とアルコールによる中隔アブレーション(経皮的中隔心筋焼灼術;PTSMA)が挙げられる。外科的中隔心筋切除術はPTSMAに比べて成功率が高く、効果が現れるのも早い。一方PTSMAは開心術に比べると低侵襲ではあるが、冠動脈解離、房室ブロックや心室性不整脈を起こす可能性があり、若年者では外科的中隔心筋切除術のほうが好まれる。しかしながら、PTSMA後の長期的な効果や成績に関する報告は少ない。症例数が豊富なドイツのグループから、PTSMA後の長期成績が報告された。Angelika Batzner氏らによるJournal of American College of Cardiology誌12月号掲載の報告。

加齢黄斑変性、酸化LDLと関連なし

 血清中の酸化低密度リポタンパク質(酸化LDL)は、加齢黄斑変性(AMD)の発症または悪化において統計学的に有意な関連は認められないことが示された。米国・ウィスコンシン大学マディソン校のRonald Klein氏らが、ビーバーダム眼研究(BDES:Beaver Dam Eye Study)のデータを解析、報告した。Ophthalmology誌オンライン版2018年12月17日号掲載の報告。  BDESは、1988年にウィスコンシン州ビーバーダム市在住の43~84歳の住民を対象とする前向き観察研究として開始された。研究グループは、血清中の酸化LDLとAMDとの関連を調べる目的で、BDESにおいて1988~2016年に約5年間隔で行われた6回の調査期のうち1回以上の調査期に診察を受けた4,972例から、50%(2,468例)を無作為に抽出し、各調査期に保管された凍結検体についてELISA法を用いて酸化LDLを測定した。1人が複数回の調査期に診察を受けているため、合計6,586件の結果が含まれている。

仕事のストレスとベンゾジアゼピン長期使用リスクとの関連

 ストレスを伴う仕事とベンゾジアゼピン長期使用との関連について、フランス・パリ第5大学のGuillaume Airagnes氏らが調査を行った。American Journal of Public Health誌オンライン版2018年11月29日号の報告。  フランスの人口ベースCONSTANCESコホートへ2012~16年に参加した男性1万3,934例、女性1万9,261例を対象に、日々の仕事を調査し、ストレス頻度の評価を行った。ベンゾジアゼピン長期使用は、drug reimbursement administrativeレジストリを用いて検討を行った。ベンゾジアゼピン長期使用のオッズ比(OR)の算出には、性別で層別化し、年齢、教育、地理的剥奪指標(area deprivation index)で調整し、ロジスティック回帰を行った。職業グレード、職場ストレス、うつ病、健康状態自己評価、アルコール使用障害を、追加の層別化変数とした。

地域別の脳卒中生涯リスク、東アジアで39%/NEJM

 2016年において世界全体の25歳以降の脳卒中生涯リスクは、男女ともに約25%であり、同リスクは地理的ばらつきがみられ、東アジア、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパで高率であった。米国・ワシントン大学のGregory A. Roth氏らGBD 2016 Lifetime Risk of Stroke Collaboratorsが、1990年と2016年の脳卒中生涯リスクについて調べ明らかにした。脳卒中生涯リスクは、限られた選択的集団で算出されているが、研究グループは、主要疾患有病率の包括的な研究データを用いて、地域別、国別、および世界全体レベルでの推算を行った。NEJM誌2018年12月20日号掲載の報告。

ソラフェニブが進行・難治性デスモイド腫瘍に高い有効性/NEJM

 進行性、再発性または症候性のデスモイド腫瘍の患者において、ソラフェニブは無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、持続性の奏効をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMrinal M. Gounder氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。デスモイド腫瘍(侵襲性線維腫症とも呼ばれる)は、あらゆる解剖学的部位に発生し、腸間膜、神経血管構造、臓器に浸潤する可能性のある結合組織腫瘍であり、標準治療は確立されていない。ソラフェニブは、複数の標的を持つ受容体チロシンキナーゼ阻害薬であり、レトロスペクティブな解析では、デスモイド腫瘍に対し安全に投与可能であり、奏効率は25%と報告されている。

高齢うつ病患者における抗うつ薬の服薬アドヒアランス

 うつ病は高齢者において多く認められ、その治療にあたっては、抗うつ薬が一般的に使用される。オランダ・フローニンゲン大学のFloor Holvast氏らは、プライマリケアでの高齢うつ病患者における抗うつ薬の服薬アドヒアランスについて調査を行った。Family Practice誌オンライン版2018年11月5日号の報告。  オランダの保健サービス研究機関(Netherlands Institute for Health Services Research:NIVEL)プライマリケアデータベースより、2012年のうつ病と診断された60歳以上の患者を抽出した。初回投与から14日以内に服薬していない場合を「非開始(non-initiation)」、投与量のカバー率が80%未満の場合を「投与量非遵守(suboptimal implementation)」、初回投与から294日以内に中止していた場合を「非持続(non-persistence)」と定義した。初めに、抗うつ薬の非開始、投与量非遵守、非持続の割合を調査した。次いで、共存疾患および慢性的な薬物使用がノンアドヒアランスと関連しているかを、非開始および投与量非遵守を従属変数とした混合効果ロジスティック回帰分析、時間と非持続についてのクラスターCox回帰分析で検討を行った。

非がん性慢性疼痛へのオピオイド、有益性と有害性/JAMA

 非がん性慢性疼痛に対するオピオイド使用は、プラセボとの比較において疼痛および身体機能の改善は統計学的に有意ではあるがわずかであり、嘔吐リスクは増大することが示された。また、オピオイド使用と非オピオイド使用の比較では、低~中程度のエビデンスであるが、疼痛、身体機能に関するベネフィットは同程度であった。カナダ・マックマスター大学のJason W. Busse氏らが、非がん性慢性疼痛のオピオイド使用に関する無作為化試験(RCT)のシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかにした。非がん性慢性疼痛に対するオピオイドの有害性および有益性は、不明なままであった。JAMA誌2018年12月18日号掲載の報告。

米国総合診療医の「時間がない」は本当か/BMJ

 米国のプライマリケアに従事する総合診療医(general practitioner:GP)の「患者との共同意思決定(shared decision making:SDM)や、予防的ケアをする時間がない」という主張について、米国・ミシガン大学のTanner J. Caverly氏らがマイクロシミュレーション試験で調べた結果、これまで広く持たれてきた疑念「GPは貴重な時間を“個人的なケア”の活動に費やしている」ことが確認されたという。著者は、「ひとたび個人的な時間が膨大であることを知らしめれば、プライマリケアの権威者は、増大している臨床的要求に、より多くの個人的な時間を再割当するようGPを“説得する”ための方法を、試しはじめることができるだろう」と述べている。BMJ誌2018年12月13日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

高齢者の肥満診療はどうすべきか

 2018年12月18日に一般社団法人 日本老年医学会(理事長:楽木 宏実氏)は、同会のホームページにおいて『高齢者肥満症診療ガイドライン2018』(作成委員長:荒木 厚氏)を公開した。  本ガイドラインは、同会が作成方針を打ち出している「高齢者生活習慣病管理ガイドライン」、すなわち 「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」「肥満症」のガイドラインの第4弾にあたり、日本肥満学会の協力を得て作成されたものである。作成では既刊の『肥満症診療ガイドライン2016年版』を参考に、認知症・ADL低下の観点から新たにクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、システマティックレビューを実施したものとなっている。

オランザピンの治療反応に対する喫煙やコーヒーの影響

 統合失調症患者におけるオランザピン治療の有効性および安全性に対して、喫煙や大量のコーヒー摂取が及ぼす影響を、セルビア・クラグイェヴァツ大学のNatasa Djordjevic氏らが、遺伝子多型との関連で評価した。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2018年12月4日号の報告。  対象は、30日間オランザピン投与を行った統合失調症患者120例。治療の有効性は、3つの異なる精神医学的尺度を用いて評価し、安全性については、代謝性副作用および錐体外路症状の評価を行った。遺伝子型の判定には、CYP1A2*1C、CYP1A2*1F、CYP1A1/1A2の遺伝子多型、CYP2D6*3、CYP2D6*4、CYP2D6*6を含んだ。