日本語でわかる最新の海外医学論文|page:458

メニューへのカロリー表示が健康や経済にメリット、AHAニュース

 飲食店のメニューにカロリー表示を求める現行の連邦法は、健康的な食事の選択を促し、心血管疾患や糖尿病の患者数の減少に寄与する可能性があるとする研究結果が報告された。このモデリング研究では、人々が飲食店の栄養表示を考慮して注文することによって、2018年から2023年までに心血管疾患を1万4,698件(このうち心血管疾患による死亡は1,575件)、2型糖尿病を2万1,522件回避できると推定された。結果の詳細は米国心臓協会(AHA)が発行する「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月4日オンライン版に発表された。

アロプリノールはCKDの進行を抑制するか?/NEJM

 進行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)患者において、アロプリノールによる尿酸低下療法はプラセボと比較し、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を遅らせることはなかった。オーストラリア・St. George HospitalのSunil V. Badve氏らが、アロプリノールによる尿酸低下療法の有効性を検証した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Controlled Trial of Slowing of Kidney Disease Progression from the Inhibition of Xanthine Oxidase:CKD-FIX」の結果を報告した。血清尿酸値の上昇はCKDの進行と関連している。しかし、アロプリノールを用いた尿酸低下療法が進行リスクの高いCKD患者のeGFR低下を抑制できるかどうかは不明であった。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

COPDへの3剤配合吸入薬、ICS半量でも有効/NEJM

 中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、ブデソニド標準用量または半量によるブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール3剤配合吸入薬(ブデソニド半量の3剤配合吸入薬は本邦未承認)はいずれも、グリコピロニウム/ホルモテロールまたはブデソニド/ホルモテロールの2剤配合吸入薬と比較し、中等度~重度のCOPD増悪頻度を抑制したことが示された。ドイツ・LungenClinic GrosshansdorfのKlaus F. Rabe氏らが、26ヵ国で実施した52週間の第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of Triple Therapy in Obstructive Lung Disease trial:ETHOS試験」の結果を報告した。COPDに対する固定用量の吸入ステロイド(ICS)+長時間作用型抗コリン薬(LAMA)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)3剤併用療法は、これまで1つの用量のICSでのみ検討されており、低用量ICSでの検討が不足していた。NEJM誌オンライン版2020年6月24日号掲載の報告。

次亜塩素酸水は物品消毒に有効、空間噴霧は勧められない

 6月26日、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が実施した新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価を踏まえ、経済産業省、厚生労働省、消費者庁が合同で、消毒・除菌方法に関する情報を取りまとめた。次亜塩素酸水は、物品における新型コロナウイルスの消毒に対して、一定条件下での有効性を報告した一方、手指消毒や空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、まわりに人がいる中での空間噴霧はお勧めできないと注意喚起している。

緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスク~日本人女性

 日本の全国多施設前向きコホート研究であるJapan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk(JACC)Studyにおいて、緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスクの関連を調べた結果、アルコール摂取と乳がんリスク増加との関連がみられた一方、乳がんリスクとの関連の結論が出ていない緑茶やコーヒーについては関連がみられなかった。Asian Pacific Journal of Cancer Prevention誌2020年6月1日号に掲載。  本研究の対象は、JACC Studyにおける国内24地域の40〜79歳の日本人女性3万3,396人。20年以上の追跡期間中に乳がんが255例に発症した。乳がんリスクと緑茶、コーヒー、アルコールの摂取の間の独立した関連性を評価するために、多変量ロジスティック回帰分析を行った。

カプマチニブ、METエクソン14スキッピング陽性肺がんに国内承認/ノバルティス

 ノバルティス ファーマは、2020年 6月29日、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として、カプマチニブ(商品名:タブレクタ)に対する製造販売承認を取得したと発表。  MET遺伝子エクソン14スキッピング(METex14)変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLCの予後は不良で、生命を脅かす重篤な疾患である一方、治療選択肢が非常に限られており、MET遺伝子を標的とした治療法の開発が望まれていた。MET遺伝子変異を有する患者はNSCLC患者数の約3~4%と報告されており、METex14変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者数は日本国内では約3,000名程度と推定される。

日本の実臨床におけるアリピプラゾール長時間作用型注射剤による統合失調症治療

 統合失調症患者のマネジメントでは、抗精神病薬治療の継続が重要である。藤田医科大学の岩田 仲生氏らは、日本の実臨床においてアリピプラゾール長時間作用型注射剤(アリピプラゾール月1回製剤、AOM)がアリピプラゾール経口剤(OA)と比較し、より長期間の治療継続に寄与できるかを評価するため、JMDCのレセプトデータベースを用いて検討を行った。Advances in Therapy誌オンライン版2020年6月4日号の報告。  2015年5月~2017年11月にAOMまたはOAで治療を開始した統合失調症患者を対象に、データ分析を行った。年齢、性別、抗精神病薬のクロルプロマジン換算量、精神科への入院回数で調整した後、AOMとOAの治療中止のハザード比(HR)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。

多発性骨髄腫、3剤併用療法の長期アウトカムは?/JCO

 多発性骨髄腫に対する3剤併用(レナリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン:RVD)療法の有効性について、最大規模のコホートで長期追跡したアウトカムの結果が報告された。米国・エモリー大学のNisha S. Joseph氏らによる検討で、移植後患者の奏効率は90%近くに上り、リスクに留意した維持療法により、先例のない長期アウトカムがもたらされる可能性があることが示されたという。RVD療法は、移植治療の適格・不適格を問わず、導入療法としての有効性は高く、重宝するレジメンであることが示されていた。Journal of Clinical Oncology誌2020年6月10日号掲載の報告。

医療ミス多いのは?24h以上の長時間勤務 vs.16h以内の2交代制/NEJM

 米国小児科研修医のICUローテーション中のスケジュールについて、24時間以上の長時間勤務のほうが、16時間以内の日中・夜間勤務を繰り返すスケジュールに比べ、研修医による重大な医療ミス発生率が低かったことが示されたという。ただし、実施した施設によるばらつきは大きかった。米国・ボストン小児病院のChristopher P. Landrigan氏らが行った、2パターンの勤務シフトを比較した多施設共同クラスター無作為化クロスオーバー試験の結果で、著者は「仮説に反する試験結果となった」と述べながら、要因として「各研修医が治療するICUの患者数は、長時間勤務でないスケジュール群のほうが多かった」ことに触れている。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

COVID-19、がん患者の全死亡率への影響/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者のデータが不足している中、米国・Advanced Cancer Research GroupのNicole M. Kuderer氏らによる検討で、COVID-19に罹患したがん患者の30日全死因死亡率は高く、一般的なリスク因子(年齢、男性、喫煙歴など)、およびがん患者に特異な因子(ECOG PS、活動性など)との関連性が明らかにされた。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる長期追跡を行い、がん患者の転帰へのCOVID-19の影響を、特異的がん治療の継続可能性も含めて、明らかにする必要がある」とまとめている。Lancet誌2020年6月20日号掲載の報告。  研究グループは、COVID-19罹患のがん患者コホートの転帰を特徴付け、死亡および疾患重症化の潜在的予測因子を特定するコホート研究を行った。

進行性前立腺がんに対する経口レルゴリクスによるアンドロゲン除去療法(解説:宮嶋哲氏)-1250

GnRHアゴニストの皮下注射薬リュープロリドは、視床下部-下垂体系に作用して男性ホルモンを去勢域まで低下させ、現在のところ前立腺がんに対するアンドロゲン除去療法(ADT)の標準治療薬である。GnRHアゴニストの作用機序は初期段階で男性ホルモンを上昇させ、そのネガティブフィードバックによって男性ホルモンを去勢域に低下させる。わが国における前立腺がん治療薬としては、皮下注射薬リュープロリドは1ヵ月から6ヵ月製剤まで普及している一方で、皮下注射薬GnRHアンタゴニストも普及しつつある。作用機序もシンプルでありGnRHアゴニストのような一過性の男性ホルモンの上昇はない。

デュルバルマブ承認後の実臨床における、局所進行非小細胞肺がんCCRTの肺臓炎(HOPE-005/CRIMSON)/ASCO2020

 デュルバルマブが局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線同時療法(CCRT)後の地固め療法の標準治療として確立された。しかし、デュルバルマブ承認後の実臨床におけるCCRTの実態は明らかになっていない。この実臨床の状況を調べるため、Hanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)では、プラチナ化学療法と放射線の同時療法(CCRT)を受けた局所進行NSCLC患者を対象にした後ろ向きコホート研究を実施。肺臓炎/放射線肺臓炎(以下、肺臓炎)の実態に関する結果を千葉大学の齋藤 合氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scoentific Program)で発表した。

軽度認知障害や初期アルツハイマー病の短時間スクリーニング法

 岩手医科大学の赤坂 博氏らは、軽度認知障害(MCI)や初期アルツハイマー病(AD)などの早期認知障害患者のスクリーニングツールとして、老研式活動能力指標(Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology index of competence:TMIG-IC)を用いて評価した日常生活の機能活動の臨床的有用性について検証を行った。日本老年医学会雑誌2020年号の報告。  対象は、クリニックから連続登録を行ったMCI(39例)とAD患者(FAST分類4:50例、FAST分類5以上:19例)およびコミュニティベースコホートより抽出した健康対照者(NC群:187例)。すべての対象者およびその家族に対し、TMIG-ICを用いた調査を行った。合計スコアおよびサブスケールスコアについて、群間比較を行った。また、MCIとADの診断精度の検討も行った。

COVID-19入院患者にバリシチニブ治験へ/リリー

 米国・イーライリリー・アンド・カンパニーは、成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者を対象に、インサイト(Incyte)社からライセンス供与されている経口JAK1/JAK2阻害剤バリシチニブの有効性および安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験に、最初の患者が組み入れられたことを6月15日に発表した。 ■試験の概要  本試験には400人の患者が組み入れられ、米国、欧州およびラテンアメリカで実施される予定。なお、患者はSARS-CoV-2感染により入院し、試験組み入れ時に、少なくとも1種類の炎症マーカーの上昇があるが侵襲的機械換気(気管挿管による人工呼吸)を必要としない患者が対象となる。

肝細胞がんに対するレンバチニブ・ペムブロリズマブ併用療法/ASCO2020

 米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAndrew X. Zhu氏は、切除不能に対する肝細胞がんに対するマルチキナーゼ阻害薬レンバチニブと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)ペムブロリズマブの併用療法の第1b相試験(116/KEYNOTE-524試験)の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表。この併用療法が良好な抗腫瘍効果と安全性を示したと報告した。

サクビトリルバルサルタンが製造販売承認を取得/ノバルティス ファーマ

 ノバルティスファーマは、6月29日にアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト)について、「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果として製造販売承認を取得した。  今回承認されたサクビトリルバルサルタンは、心不全の病態を悪化させる神経体液性因子の1つであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰な活性化を抑制するとともに、RAASと代償的に作用する内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強し、神経体液性因子のバランス破綻を是正することを一剤で可能にした、新しいアプローチの薬剤。

DES留置のACS、短期DAPT後にチカグレロル単剤で予後改善/JAMA

 薬剤溶出ステント(DES)留置術を受けた急性冠症候群(ACS)患者では、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月間施行後にチカグレロル単剤療法に切り替えるアプローチは、12ヵ月間のチカグレロルベースのDAPTと比較して、1年後の大出血と心血管イベントの複合アウトカムの発生をわずかに低減し、統計学的に有意な改善が得られることが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏ら「TICO試験」の研究グループによって示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)としてDES留置術を受けたACS患者では、アスピリン+P2Y12阻害薬による短期DAPT施行後にアスピリンを中止することで、出血リスクが軽減するとされる。一方、新世代DES留置術を受けたACS患者において、アスピリン中止後のチカグレロル単剤療法に関する検討は、これまで行われていなかったという。

新型コロナウイルスの感染伝播防止に有効な対策(解説:小金丸博氏)-1252

COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は人と人との密な接触で広がっていく。本稿執筆時点では、有効性が示された治療薬や予防ワクチンはなく、感染拡大をいかにして防止するかは重要なテーマである。今回、COVID-19、SARS、MERSの原因ウイルスの伝播防止に、身体的距離、マスクの着用、眼の防護が有効な対策となりうることを示したシステマティックレビューとメタ解析がLancet誌オンライン版より報告された。これまでのメタ解析は、季節性インフルエンザなどの呼吸器系ウイルスに関するランダム化試験や不正確なデータを基にし、医療施設内での予防効果に焦点を合わせたものであったが、本論文ではSARS-CoV-2を含むコロナウイルスのデータに絞り、医療施設内のみでなく市中での感染予防効果に関するデータを含んでいることが特徴である。

著者ら自身が不満なのではないのか?(解説:野間重孝氏)-1251

患者アドヒアランスは単純に何かの実施率(この場合リハビリテーション実施率、服薬率)で評価できるものなのだろうか。まず少し理屈っぽくなってしまうが、コンプライアンス(compliance)とアドヒアランス(adherence)の違いを考えてみたいと思う。コンプライアンスもアドヒアランスもいずれも規則や指示に従うことを意味するが、コンプライアンスが言われたことを守るという受け身の意味合いが強いのに対して、アドヒアランスは興味を持って積極的に参加しようという意味合いが強い言葉である。近年は医師・薬剤師に言われたことを守るだけでなく、患者自身が積極的に治療に参加することが重要視されるようになり、数年前までは服薬についていえば「服薬コンプライアンス」といわれていたものが、昨今は「服薬アドヒアランス」と呼ばれるように変わってきた。

血液による大腸がん術後再発リスク評価、医師主導治験開始/国立がん研究センター

 リキッドバイオプシーと遺伝子パネル検査を活用し、“見えないがん(術後微小残存病変)”を対象とした、大腸がんの新たな術後再発リスク評価手法の確立を目指す、世界最大規模の医師主導国際共同臨床試験が開始された。国立がん研究センターによる新プロジェクト「CIRCULATE-Japan」の一環として実施されるもので、同プロジェクトでは産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan」の基盤を活用し、切除可能大腸がんにおける、遺伝子異常・臨床情報を大規模データベース化していく。  現在、大腸がんの術後再発リスク評価は術後の病理組織検査によるがんの術後ステージによって推定され、術後補助化学療法が行われる。しかし、ステージに基づく再発リスク推定だけでは、本来必要がない症例にも再発リスクの高い症例と同じ治療が実施され、末梢神経障害が後遺症として残るなど、副作用が発現する場合がある。