日本語でわかる最新の海外医学論文|page:366

腎細胞がん術後補助療法、ペムブロリズマブがDFS延長/NEJM

 再発リスクが高い腎がん患者の術後補助療法として、ペムブロリズマブはプラセボと比較し無病生存(DFS)期間を有意に延長することが認められた。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のToni K. Choueiri氏らが、第III相国際共同無作為化二重盲検比較試験「KEYNOTE-564試験」の中間解析結果を報告した。腎摘除術を受ける腎細胞がん患者では、再発リスクを低下させる術後補助療法として、エビデンスレベルが高い選択肢はこれまでなかった。NEJM誌2021年8月19日号掲載の報告。  研究グループは、18歳以上の淡明細胞型腎細胞がん患者で、再発リスクが高く(Grade4または肉腫様分化を伴うpT2、pT3以上、局所リンパ節転移、またはM1 NED[原発巣の切除と同時または術後1年以内に転移巣完全切除後、病変が認められない患者])、全身療法未実施、術後12週以内の患者を、ペムブロリズマブ(200mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ3週ごと、最大17サイクル(約1年)投与した。

介護施設でファイザーワクチン2回接種、コロナ入院リスク95%減/BMJ

 スペイン・カタルーニャ州保健省のCarmen Cabezas氏らは、前向きコホート研究の結果、介護施設の入居者、スタッフ、および医療従事者の3つのコホートすべてにおいて、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種によりSARS-CoV-2感染が80~91%減少し、介護施設の入居者の入院および死亡率が最大5ヵ月にわたって大きく低下したことを明らかにした。著者は、「ワクチンの長期的な効果については、さらなるデータが必要である」とまとめている。BMJ誌2021年8月18日号掲載の報告。  研究グループは、SARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチン接種と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院・死亡との関連を明らかにする目的で、前向きコホート研究を行った。

ダパグリフロジン、日本で初めて慢性腎臓病に承認取得/AZ・小野

 アストラゼネカと小野薬品工業は、すでに糖尿病の薬物治療で広く使用されているアストラゼネカの選択的SGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)について2型糖尿病合併の有無にかかわらず、わが国で初めて「慢性腎臓病(CKD)」の効能または効果の追加承認を、8月25日に取得したと発表した。  なお、今回のダパグリフロジンの承認は、第III相DAPA-CKD試験の肯定的な結果に基づき、厚生労働省に指定された優先審査に則り行われたもの。  CKDは、腎機能の低下を伴う重篤な進行性の疾患。わが国では約1,300万人が罹患していると推定されている。CKDを発症する最も一般的な原因疾患は、糖尿病、高血圧、慢性糸球体腎炎で、最も重篤な状態は末期腎不全(ESKD)と呼ばれ、腎障害および腎機能低下が進行し、血液透析や腎移植を必要とする状態となる。CKD患者の多くはESKDになる前に心血管系の原因によって死亡している。

東京五輪関連のCOVID-19発生状況は/感染研

 2021年7月23日より開催された東京2020オリンピック競技大会(東京五輪)。開催前より期間中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が危惧され、社会的にさまざまな意見が交わされた。実際、大会に関連してCOVID-19の感染は発生したのだろうか。  この疑問に対し国立感染症研究所は、「東京オリンピック競技大会に関連した新型コロナウイルス感染症発生状況(速報)」を8月20日に発表した。  その結果、調査の定義に合致したCOVID-19症例は計453例だった。なお、調査の目的について同研究所は、東京五輪に関連したCOVID-19症例を振り返ることで、現在開催中の東京パラリンピック競技大会における感染症対策に資する情報として国内外に還元することとしている。

コロナ感染者の献血、症状消失から4週間経過で可能に

 新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、コロナ禍が収束する見通しが依然立たない中、医療現場に不可欠な血液の確保が難しくなっている。その理由の一端は、言うまでもなく献血者の減少である。献血は「不要不急の外出ではない」と声高に訴えても、現況においてはなかなか人々に響かないのが実情だろう。厚生労働省は、7月27日の薬事・食品衛生審議会 (血液事業部会安全技術調査会)で、新型コロナウイルス感染症と診断された人であっても、症状消失から4週間経過すれば、献血を可能とする方針を固めた。新たなルールは9月8日より適用される。

「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)ガイドライン」刊行、ポイントは?

 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の診療に関しては、2017年に「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療の手引き」が刊行されている。HBOC既発症者へのリスク低減手術の保険収載や、膵がん・前立腺がんへのPARP阻害薬の承認など、遺伝子検査に基づく治療・マネジメントがいっそう求められる中、Minds「診療ガイドライン作成マニュアル2017」を遵守する形で、今回新たにガイドラインがまとめられた。2021年8月7日、webセミナー「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2021年版の解説(主催:厚生労働科学研究費補助金[がん対策推進総合研究事業]「ゲノム情報を活用した遺伝性腫瘍の先制的医療提供体制の整備に関する研究」班)が開催され、各領域のポイントが解説された。

歯周病とアルツハイマー病リスク~メタ解析

 歯周病とアルツハイマー病(AD)や軽度認知障害(MCI)との関連を調査した研究結果は、一貫性が認められておらず、2017年に発表されたメタ解析では、不十分な研究が含まれていた。中国・上海交通大学のXin Hu氏らは、歯周病とADまたはMCIのリスクとの相関をシステマティックに評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychogeriatrics誌オンライン版2021年7月11日号の報告。  2人の研究者が独立して、各種データベース(CENTRAL、PubMed、EMBASE、China National Knowledge Interne、China Science and Technology Journal Database、Wanfang Data、www.ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform)より言語制限なしでスクリーニングを行った。含まれた研究の不均一性に応じて、変量効果モデルまたは固定効果モデルを用いて、メタ解析を実施した。

行動的減量プログラム後のリバウンド、その原因は?/BMJ

 体重減量後の再増加の早さは初期の減量の大きさと関連していたものの、初期の減量の大きさは行動的減量プログラム終了後少なくとも5年間、減量との関連が持続していた。英国・オックスフォード大学のJamie Hartmann-Boyceらが、行動的減量プログラムの特徴とプログラム終了後の体重変化について検証したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。行動的体重管理プログラムは、肥満成人の治療法として推奨されている。ほとんどの行動的減量プログラムにより短期間で減量できるが、プログラム終了後の体重変化には非常にばらつきがあり、その原因はわかっていなかった。BMJ誌2021年8月17日号掲載の報告。

ファイザー製ワクチン、SARS生存者で強力な交差性中和抗体産生/NEJM

 シンガポール・Duke-NUS Medical SchoolのChee-Wah Tan氏らは、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1:SARS-CoV-1)の既感染者で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)の接種を受けた人では、サルベコウイルス亜属(コロナウイルス科βコロナウイルス属に属するウイルスの一群で、SARS-CoV-1やSARS-CoV-2が属する)に対する強力な交差性中和抗体が産生されることを明らかにした。この交差性中和抗体は、抗体価が高く、懸念されているSARS-CoV-2の既知の変異株だけではなく、コウモリやセンザンコウで確認されヒトへ感染する可能性があるサルベコウイルスも中和でき、著者は「今回の知見は、汎サルベコウイルスワクチン戦略の実現性を示唆するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月18日号掲載の報告。

ペムブロリズマブ、MSI-H大腸がんとTN乳がんに適応拡大/MSD

 MSDは2021年8月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん(大腸がん)およびPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。  今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第III相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.80)。安全性については、安全性解析対象例153例中、ペムブロリズマブ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)であった。

糖尿病薬物治療で最初に処方される薬は/国立国際医療研究センター

 糖尿病の治療薬は、さまざまな種類が登場し、患者の態様に合わせて治療現場で処方されている。実際、2型糖尿病患者に対して最初に投与される糖尿病薬はどのような治療薬が多いのだろうか。  国立国際医療研究センターの坊内 良太郎氏らのグループは、横浜市立大学、東京大学、虎の門病院の協力のもとこの実態について全国規模の実態調査を実施した。調査の結果、最初の治療薬としてDPP-4阻害薬を選択された患者が最も多く、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬がそれに続いた。

慢性疼痛の遺伝的リスクが抗うつ薬の有効性と関連

 慢性疼痛とうつ病は高頻度で併発しており、治療が困難な場合も少なくない。これまでのオーストラリアのうつ病遺伝学研究では、併存疾患がうつ病の重症度の上昇、抗うつ薬治療効果の低下や予後不良と関連していることを報告した。オーストラリア・クイーンズランド大学のAdrian I. Campos氏らは、慢性疼痛の遺伝的リスクがうつ病の遺伝的要因に影響を及ぼし、抗うつ薬の有効性と関連しているかを評価した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年7月16日号の報告。

旅行制限などの緩和に求められるコロナワクチン接種率~モデリング研究

 SARS-CoV-2拡大抑制のためにさまざまな公衆衛生的・社会的対策(PHSM)が実施されているが、PHSMの緩和に関する政策立案は非常に難しい。中国・香港大学のKathy Leung氏らは、ワクチンの集団接種により、国内および世界でのCOVID-19の蔓延を悪化させることなく、旅行制限やその他のPHSMをどの程度緩和できるかをモデリング研究で検討した。Lancet Public Health誌オンライン版2021年8月10日号に掲載。

2002~16年米国の医療費、人種・民族別で格差/JAMA

 2002~16年の米国医療費は、年齢・健康状態調整後も人種・民族で異なり、総医療費は多人種系や白人が最も高かった。また、医療サービス別医療費についても人種・民族で差があり、白人は外来医療費が、黒人は入院や救急医療費が、全体平均に比べいずれも高かった。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのJoseph L Dieleman氏らが、データベースを基に行った探査的研究で明らかにした。著者は、「さらなる研究で、COVID-19パンデミックに関連する支出などを含む現在の医療費を、人種・民族別に確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2021年8月17日号掲載の報告。

高リスクCOVID-19外来患者への高力価回復期血漿療法の効果は?/NEJM

 高リスクの新型コロナウイルス(COVID-19)外来患者に対する、発症1週間以内の早期高力価回復期血漿療法について、重症化の予防効果は認められなかったことが、米国・ミシガン大学のFrederick K. Korley氏らの研究グループ「SIREN-C3PO Investigators」が、救急診療部門を受診した511例を対象に行った、多施設共同無作為化単盲検試験の結果、示された。COVID-19回復患者の血漿を用いた早期回復期血漿療法は、高リスクCOVID-19患者の疾患進行を防ぐ可能性があるのではと目されていた。NEJM誌オンライン版2021年8月18日号掲載の報告。

疑問点ばかりが浮かぶ研究(解説:野間重孝氏)

ショックとは「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」と定義される。ショックの分類については、近年は循環障害の要因による新しい分類が用いられることが多く、次のように分類される。(1)循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)出血、脱水、腹膜炎、熱傷など(2)血液分布異常性ショック(distributive shock)アナフィラキシー、脊髄損傷、敗血症など

塩野義のコロナワクチン、日本人I/II相臨床試験で初回投与後の安全確認

 塩野義製薬は8月24日、同社が開発している新型コロナウイルスワクチン(S-268019)について、アジュバントを変更した新製剤による国内第I/II相臨床試験における全被験者60例への初回投与が8月19日までに完了したことを発表した。初回投与3日後までに生じた副反応は、いずれも軽度~中等度であり、安全性への懸念は確認されていないという。  塩野義製薬のコロナワクチン「S-268019」は、昆虫細胞とバキュロウイルスを組み合わせたタンパク発現技術であるBEVS (Baculovirus Expression Vector System)を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンで、2020年12月より第I/II相臨床試験を開始。その後、検討結果や集積された知見を踏まえ、アジュバントを変更した新製剤で2021年7 月末より日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験を新たに実施している。本試験では、20~64歳の日本人の男女60例を対象とし、同ワクチンを3週間間隔で2回接種した際の副反応などの安全性、忍容性および免疫原性の結果から、抗原タンパク量の低減化を含め至適な用量を検討すると共に、それぞれの指標について接種後1年間の追跡評価を実施する予定。

高リスク尿路上皮がんのニボルマブ術後補助療法をFDAが承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年8月20日、米国食品医薬品局(FDA)が、術前補助化学療法やリンパ節転移の有無、PD-L1の発現レベルにかかわらず、根治切除後の再発リスクが高い尿路上皮がん(UC)患者の術後補助療法として、ニボルマブを承認したと発表。  この承認は、ニボルマブとプラセボを比較した第III相CheckMate-274試験に基づいている。  同試験において、ニボルマブ群は、プラセボ群と比較して、無病生存期間(DFS)中央値を延長した(ニボルマブ群20.8ヵ月 vs.プラセボ群10.8ヵ月、ハザード比:0.70、95% CI:0.57~0.86、p=0.0008)。

新型コロナの唾液PCR検査、無症候者へは推奨できない?/JAMA

 鼻咽頭スワブによるリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR法)は新型コロナウイルス検出のための標準検査として行われているが、唾液を用いたPCR法は鼻咽頭によるPCR法より簡便であることから診断・スクリーニングにおいて魅力的な代替手段である。現に日本国内においても帰省や出張の前に検査を希望する人らが市販の唾液PCR検査キットに依存する傾向にある。しかし、米国・Children’s Hospital Los AngelesのZion Congrave-Wilson氏らが調査した結果によると、唾液を用いたPCR法(以下、唾液PCR法)は、感染初期の数週間に有症状の人の新型コロナウイルスを検出するには感度が高かったものの、無症候性の新型コロナウイルスキャリアの感度はすべての時点で60%未満だった。このことから、同氏らは無症候性感染者の唾液の感度低下を踏まえ、無症候感染者には唾液PCR法を新型コロナのスクリーニングに使用すべきではないと示唆している。JAMA誌オンライン版2021年8月13日号のリサーチレターでの報告。

日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。  首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。