日本語でわかる最新の海外医学論文|page:204

イラン産の新型コロナワクチン、有用性は?/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する不活化全ウイルス粒子ワクチンBIV1-CovIran(イラン・Shifa-Pharmed Industrial Group製)の2回接種は、有効率が症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して50.2%、重症化に対して70.5%、重篤化に対して83.1%であり、忍容性も良好で安全性への懸念はないことを、イラン・テヘラン医科大学のMinoo Mohraz氏らが多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果で報告した。BIV1-CovIranは、第I相および第II相試験において、安全で免疫原性のあるワクチン候補であることが示されていたが、症候性感染や重症化/重篤化あるいはCOVID-19による死亡に対する有効性は、これまで評価されていなかった。BMJ誌2023年9月21日号掲載の報告。

医療従事者、職種ごとの自殺リスク/JAMA

 米国の非医療従事者と比較した医療従事者の自殺のリスクについて、正看護師、医療技術者、ヘルスケア支援従事者の同リスクが高いことを、米国・コロンビア大学のMark Olfson氏らがコホート研究の結果で報告した。歴史的に医師の自殺リスクは高かったが、この数十年で減少した可能性が指摘されていた。一方で、他の医療従事者の自殺リスクに関する情報は、依然として不足していた。今回の結果を踏まえて著者は、「米国の医療従事者のメンタルヘルスを守るため、新たな計画への取り組みが必要である」とまとめている。JAMA誌2023年9月26日号掲載の報告。

地域ぐるみでの食事を作る家族への減塩指導が食塩摂取量を減少させ血圧を低下させる(解説:石川讓治氏)

食塩の摂取過剰が高血圧の発症リスクであることが報告されており、日本高血圧治療ガイドライン2019においても食塩の摂取量を1日6g未満に減らすことが推奨されている。しかし、我が国の平均的な食塩摂取量はその2倍近くあり、減塩は思った以上に難しいことが多い。本研究は、中国の地域一般住民をベースにした介入研究で、家庭で調理を行う家族に対して、減塩に関する教育、高食塩食の健康に対する影響、食事中の食塩量、代用塩の使用、調理における減塩のコツなどのレクチャーを行った。また、食塩摂取量を7日間の食事かアプリを使って計算しモニターを行い、減塩用のスプーンまで配られている。さらには、様々なメディア(ポスター、ビデオ放送、スピーカーでの放送、冊子、マニュアルなど)を用いて、減塩の重要性を地域ぐるみで訴えている。本研究の介入には、コミュニティーにおいて減塩を推進する雰囲気を作り出すことの重要性が示されている。その結果、1年間にわたる介入によって、コントロール群と比較して、24時間蓄尿で測定された食塩摂取量が有意に減少し、血圧の低下も認められたことが報告された。

アントラサイクリン系薬剤による心機能障害をアトルバスタチンは抑制したがプラセボとの差はわずかであった(解説:原田和昌氏)

近年、Onco-cardiologyが注目されており、がん化学療法に伴う心毒性を抑制できる薬剤の探索が行われている。動物実験や小規模なランダム化比較試験では、アントラサイクリン系薬剤による左室駆出率(LVEF)低下に対する、アトルバスタチンの抑制作用が報告されていたが、乳がんを中心としたPREVENT試験では効果を示せなかった(ドキソルビシン換算の中央値、240mg/m2)。リンパ腫患者においてアトルバスタチン(40mg/日)の投与はプラセボと比較して、アントラサイクリン系薬剤に関連する心機能障害を有意に抑制し、心不全の発生には有意な差がないことが、二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験であるSTOP-CA試験で示された(同、300mg/m2)。主要評価項目はLVEFが化学療法前後で絶対値において10%以上低下し、12ヵ月後に55%未満となった患者の割合で、プラセボ群22%対アトルバスタチン群9%であった(p=0.002)。しかし、群全体としてのEF低下幅はスタチン群4.1%で、プラセボ群5.4%との差は1.3%のみであった(p=0.029)。

アピアランスケアとしての乳房再建

 「乳房再建」という言葉自体の一般的な認知度はまだまだ低く、また、米国や韓国と比較して日本における乳房再建率は低いといわれている。そこで、アッヴィ合同会社アラガン・エステティックスは2023年9月27日、乳房再建について、治療の一環のみならず、昨今注目度が高まっている「アピアランスケア」の選択肢の1つとしての側面をより広く周知するために、メディア向けセミナーを開催した。  セミナーでは、3名の演者が、乳がん罹患者を対象としたアピアランスケアに関する調査結果を紹介するとともに、各専門家による乳房再建の治療現場の動向や、乳がん経験者によるアピアランスケアの体験談等を解説した。

肥満の指標で死亡率と相関するのはBMIでも体脂肪率でもなく…

 BMIとは、ご存じのとおり肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数1)である。しかし、同じBMIを持っていても体組成と脂肪分布によって個人間でばらつきがあるため、“死亡リスクが最も低いBMI”については議論の余地がある。そこで、カナダ・Vascular and Stroke Research InstituteのIrfan Khan氏らが死亡率に最も強く相関する肥満に関する指数を検証するため、全死因死亡および原因別(がん、心血管疾患[CVD]、呼吸器疾患、またはその他原因)の死亡率とBMI、FMI(脂肪量指数)、WHR(ウエスト/ヒップ比、体型を「洋なし型」「リンゴ型」と判断する際に用いられる)2)の関連性を調査した。その結果、WHRはBMIに関係なく、死亡率と最も一貫性を示した。ただし、研究者らは「臨床上の推奨としては、質量と比較した脂肪分布に焦点を当てることを考慮する必要がある」としている。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。

30年間のADHD実態調査~世界疾病負担研究の再分析

 注意欠如多動症(ADHD)の罹患率、有病率、負担に関するデータは、臨床医、患者およびステークホルダーにとって非常に重要である。英国・サウサンプトン大学のSamuele Cortese氏らは、1990~2019年の世界および各国のADHD罹患率、有病率、負担を調査した世界疾病負担研究(GBD)のデータについて、再分析を実施した。その結果、GBDはADHDの罹患率、有病率、負担に関する時間的傾向、地理的傾向、性差の最も詳細なエビデンスを示しているが、ADHDの有病率および負担については過少評価している可能性が示唆された。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年9月8日号の報告。

複雑性黄色ブドウ球菌菌血症へのceftobiprole、ダプトマイシンに非劣性/NEJM

 複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の成人患者において、ceftobiproleはダプトマイシンに対し、全体的治療成功に関して非劣性であることが示された。米国・デューク大学のThomas L. Holland氏らが、390例を対象に行った第III相二重盲検ダブルダミー非劣性試験の結果を報告した。ceftobiproleは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の治療に効果的である可能性が示されていた。NEJM誌オンライン版2023年9月27日号掲載の報告。  研究グループは、複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の成人被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはceftobiprole(500mgを静脈内投与、8日間は6時間ごと、その後は8時間ごと)、もう一方の群にはダプトマイシン(6~10mg/kg体重を静脈内投与、24時間ごと)を投与し、ダプトマイシン群では必要に応じてアズトレオナムも投与した。

肥満につながる炭水化物の種類は?/BMJ

 長期的な体重管理において、とくに過体重や肥満の人では、摂取する炭水化物の品質と供給源が潜在的に重要であることが、大規模前向きコホート試験で浮き彫りにされたという。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYi Wan氏らが報告した。一方で、添加糖、砂糖入り飲料、精製穀物、果物、非でんぷん質の野菜は、体重コントロールへの取り組みを後押しする可能性も示唆された。体重の増加および肥満に果たす炭水化物の役割については議論の的になっている。これまで、炭水化物の摂取量の経時的変化と体重の長期的変化との関連を評価した研究は、ほとんど行われていなかった。BMJ誌2023年9月27日号掲載の報告。

カテーテルアブレーションは心房細動を伴う末期心不全の予後を改善する(解説:原田和昌氏)

心房細動(AF)を伴う心不全にカテーテルアブレーションを行うと、AF burdenが減少し、左室の逆リモデリングが起こり、死亡率が下がることが知られている。AFを伴う末期心不全患者においても、カテーテルアブレーション+薬物療法は薬物療法単独に比べ、死亡、左心補助人工心臓(LVAD)の植え込み、緊急心臓移植の複合イベント発生を低下させることが、ドイツ・ルール大学ボーフムのSohns氏らによる非盲検無作為化比較試験(CASTLE-HTx試験)により示された。対象者は、心臓移植か人工心臓かの評価のためBad Oeynhausenの心臓・糖尿病センター(心臓移植年間約80例)に受診した、症候性AFを有する末期心不全患者である。

COVID-19パンデミックによる面会制限は産後うつ病リスクと関連するか

 COVID-19パンデミックによる面会制限は産後うつ病のリスク因子であるかどうかを明らかにするため、舞鶴共済病院の工藤 渉氏らは調査を行った。その結果、著者らは「COVID-19パンデミック中に出産した女性は、入院期間中の家族面会制限が行われていたものの、産後1ヵ月のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)スクリーニングスコアの悪化が認められず、一部の女性では、精神状態の安定が認められた」としている。BMC Pregnancy and Childbirth誌2023年9月9日号の報告。  COVID-19パンデミック中に出産した女性(面会制限群)とパンデミック前に出産した女性(対照群)を比較したケースコントロール研究を実施した。産後うつ病の評価には、EPDSを用いた。出産後2週間、1ヵ月時点でのEPDSを評価した。

血栓高リスクの肺・消化器がん、エノキサパリンによる血栓予防で生存改善(TARGET-TP)

 肺がんや消化器がん患者において、バイオマーカーに基づく血栓リスクの分類と、高リスクに分類された患者に対するエノキサパリンによる血栓予防は、血栓塞栓症の発生を抑制するだけでなく、生存も改善することが報告された。本研究結果は、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのMarliese Alexander氏らによって、JAMA Oncology誌オンライン版2023年9月21日号で報告された。  2018年6月~2021年7月に第III相非盲検無作為化比較試験「Targeted Thromboprophylaxis in Ambulatory Patients Receiving Anticancer Therapies(TARGET-TP)」が実施された。本試験はオーストラリアの5施設において、肺がんまたは消化器がんに対する抗がん剤治療を開始する18歳以上の患者328例が対象となった。

小児の急性副鼻腔炎、クラブラン酸・アモキシシリンvs.アモキシシリン/JAMA

 急性副鼻腔炎の小児患者における外来での経験的抗菌薬治療では、アモキシシリンと比較してクラブラン酸・アモキシシリンは、治療失敗の割合には差がないものの、消化器症状やイースト菌感染のリスクが高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のTimothy J. Savage氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年9月19日号に掲載された。  本研究は、米国の全国的な医療データベースを用いたコホート研究であり、年齢17歳以下の急性副鼻腔炎の新規外来患者で、診断の同日にクラブラン酸・アモキシシリンまたはアモキシシリンの処方を受けた患者を対象とした(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

ノーベル生理学・医学賞、mRNAワクチン開発のカリコ氏とワイスマン氏が受賞

 2023年のノーベル生理学・医学賞は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの開発を可能にしたヌクレオシド塩基修飾の発見に対して、カタリン・カリコ(Katalin Kariko)氏とドリュー・ワイスマン(Drew Weissman)氏に授与することを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のノーベル委員会が10月2日に発表した。カリコ氏とワイスマン氏の画期的な発見は、mRNAがヒトの免疫系にどのように相互作用するかという理解を根本的に変え、人類に対して最大の脅威の1つとなったCOVID-19パンデミックにおいて、前例のないワクチン開発に貢献した。授賞式は12月10日にストックホルム市庁舎にて開催される。

認知症治療支援保険、東京海上日動とエーザイが共同開発

 東京海上日動火災保険とエーザイは認知症の早期発見や早期治療について経済的に支援するための「認知症治療支援保険」を共同で開発したことを、9月28日のプレスリリースにて発表した。アルツハイマー病による軽度認知障害またはアルツハイマー型認知症に特化した補償は業界初となる。  9月25日に、エーザイとバイオジェンが共同開発したヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体レカネマブが、日本において「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果において厚生労働省より承認を取得した。

世界共通語「ダイアベティス」へ「糖尿病」の呼称変更を目指す/日本糖尿病学会・日本糖尿病協会

 9月22日、日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所])と日本糖尿病協会(理事長:清野 裕氏[関西電力病院])は都内でメディアセミナーを合同で開催した。セミナーでは、以前から活動が続けられている糖尿病のアドボカシー活動の現状や今後の展望、新たな呼称候補の発表などが語られた。  門脇 孝氏(IDF-WPR議長[虎の門病院])は、「糖尿病医療におけるアドボカシーの重要性」をテーマに講演した。糖尿病の病態解明や治療が進んでいる一方で、過去の負のイメージが社会に定着し、患者の不利益になっていることを指摘。

実臨床における日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療

 片頭痛治療に対する抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体フレマネズマブの有効性は、ランダム化比較試験で実証されているものの、実臨床での研究結果は、いまだ限られている。獨協医科大学の鈴木 紫布氏らは、リアルワールドにおける日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療の有効性および忍容性を明らかにするため、単一施設観察研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2023年7月6日号の報告。  対象は、6ヵ月間、毎月または四半期ごとにフレマネズマブ投与を行った反復性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)患者。主要アウトカムは、フレマネズマブ治療後の1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)および治療反応率の変化とした。副次的アウトカムは、治療6ヵ月時点での治療反応患者の予測因子を特定とした。また、他の抗CGRP抗体から切り替えを行った患者におけるフレマネズマブ治療の有効性を評価し、毎月投与群と四半期投与群におけるフレマネズマブの有効性を比較した。MMDは、頭痛日誌を用いて評価した。

膿疱性乾癬のフレア予防、高用量のスペソリマブが有効/Lancet

 膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)の急性症状(フレア)の予防において、プラセボと比較して抗インターロイキン36受容体(IL-36R)モノクローナル抗体スペソリマブの高用量投与は、GPPの急性症状の発現を改善し、安全性プロファイルも良好であることが、名古屋市立大学の森田明理氏らが実施した「Effisayil 2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年9月19日号で報告された。  Effisayil 2試験は、日本を含む20ヵ国60施設で実施された無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2020年6月~2022年11月に患者のスクリーニングを行った(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。

XBB.1.5対応コロナワクチン、新規剤形を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは9月29日付のプレスリリースにて、オミクロン株XBB.1.5系統対応新型コロナウイルス感染症(COVID-19)1価ワクチンの新規の剤形について、厚生労働省に承認申請したことを発表した。  今回申請した新規の剤形は以下のとおり。 ・12歳以上用:プレフィルドシリンジ製剤(希釈不要) ・5~11歳用:1人用のバイアル製剤(希釈不要) ・6ヵ月~4歳用:3人用のバイアル製剤(要希釈)  また、12歳以上用の1人用バイアル製剤(希釈不要)については2023年9月1日に承認を取得している。  これらの製剤は2024年以降の接種に向けたものであり、2023年9月開始の予防接種法上の特例臨時接種において使用されることはない。

統合失調症とうつ病の治療ガイドライン普及に対するEGUIDEプロジェクトの効果

 国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」を活用することによる、精神疾患の診療ガイドラインに関する教育のリアルワールドにおける効果を検証するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月8日号の報告。  EGUIDEプロジェクトは、「統合失調症薬物治療ガイドライン」と「うつ病治療ガイドライン」を日本国内で実践するための全国的なプロスペクティブ研究である。2016~19年、精神科病棟を有する176施設に所属する精神科医782人がプロジェクトに参加し、診療ガイドラインに関する講義を受講した。プロジェクト参加病院の統合失調症患者7,405例およびうつ病患者3,794例を対象に、ガイドラインが推奨する治療の実施割合を、プロジェクト参加者と非参加者から治療を受けている患者間で比較した。プロジェクト参加病院より毎年4~9月に退院する患者の臨床データおよび処方データも分析した。