日本語でわかる最新の海外医学論文|page:178

炎症性乳がんへのNAC、1ラインvs.2~3ラインで転帰の差は

 多くのStageIII炎症性乳がん患者は、第1選択治療として術前化学療法(NAC)を受け、十分な反応を示し手術可能となるが、追加のNACが必要となるケースもある。米国・ハーバード大学医学大学院のFaina Nakhlis氏らは、1ラインvs.2~3ラインのNACを受けた患者における臨床転帰を評価した。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年12月28日号への報告。  2施設において、1ラインまたは2~3ラインのNACを受けたStageIII炎症性乳がん患者が特定された。ホルモン受容体とHER2の状態、グレード、および病理学的完全奏効(pCR)が評価され、乳がんのない生存期間(BCFS)および全生存期間(OS)はKaplan-Meier法により評価された。多変数Coxモデルを用いてハザード比(HR)が推定された。

双極性障害患者の原因別死亡率と併存する神経発達障害

 双極性障害患者の早期死亡に関するこれまで研究は、サンプルサイズが小さいため、限界があった。台湾・長庚記念病院のWei-Min Cho氏らは、台湾の人口の約99%を対象に、双極性障害患者の早期死亡および併存する神経発達障害、重度の双極性障害との関係を調査した。その結果、精神科入院頻度の高い双極性障害患者は、自殺死亡リスクが最も高く、自閉スペクトラム症の併存は自然死や偶発的な死亡のリスク増加と関連していることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年12月6日号の報告。

TG/HDL-C比は2型糖尿病発症の強力な予測因子

 中性脂肪(TG)と善玉コレステロール(HDL-C)の比が、将来の2型糖尿病の発症リスクの予測に利用できることが、12万人以上の日本人を長期間追跡した結果、明らかになった。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の弓削大貴氏、岡田博史氏、福井道明氏、パナソニック健康管理センターの伊藤正人氏らの研究によるもので、詳細は「Cardiovascular Diabetology」に11月8日掲載された。2型糖尿病発症予測のための最適なカットオフ値は、2.1だという。

緊急避妊薬、新年直後に販売数が増加/BMJ

 米国のドラッグストアや量販店で、レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数について調べたところ、新年の祝日後に顕著に増加することが、米国・テキサス工科大学のBrandon Wagner氏らが行った時系列分析で示された。そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日の後にも、新年の祝日後ほどではないが増加が認められたという。結果を踏まえて著者は、「新年の祝日後の緊急避妊薬の売上増加は、この時期が他の休日と比べて、無防備な膣性交のリスクが高いことを示唆している」と述べ、「行動リスクをターゲットとした性暴力を軽減するための予防戦略と、休日前後の避妊薬へのアクセスを改善することで、無防備な膣性交のリスクを制限できる可能性がある」とまとめている。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。

重症小児の全身酸素化、SpO2目標低めがアウトカム良好/Lancet

 小児集中治療室(PICU)に緊急入室し侵襲的換気療法を受ける小児において、制限的目標酸素投与(conservative oxygenation target)は、非制限的目標酸素投与(liberal oxygenation target)と比較して、30日時点の臓器支持期間または死亡について、良好なアウトカムを得られる可能性が、わずかではあるが有意に高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMark J. Peters氏らが、2,040例の小児を対象に行った多施設共同非盲検並行群間比較無作為化試験「Oxy-PICU試験」の結果を報告した。重症小児患者における最適な目標酸素投与量は明らかになっていない。非制限的酸素投与は広く行われているが、小児患者では害を与えるとされていた。結果を踏まえて著者は、「制限的な酸素飽和度目標値(SpO2:88~92%)を広く取り入れることは、PICUに入室する重症小児患者のアウトカム改善およびコスト削減に役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。

teplizumabの登場で1型糖尿病治療は新たなステージへ(解説:住谷哲氏)

膵島関連自己抗体が陽性の1型糖尿病は正常耐糖能であるステージ1、耐糖能異常はあるが糖尿病を発症していないステージ2、そして糖尿病を発症してインスリン投与が必要となるステージ3に進行する。抗CD3抗体であるteplizumabはステージ2からステージ3への進行を抑制することから、8歳以上のステージ2の1型糖尿病患者への投与が2022年FDAで承認された。しかし、現実にはステージ2の1型糖尿病患者がすべて診断・管理されているわけではなく、臨床的に1型糖尿病を発症したステージ3の患者が多数を占めている。

大腸がん、FTD/TPI+ベバシズマブ隔週療法の臨床試験開始。がん領域初のプラグマティック試験で/愛知県がんセンター

 愛知県がんセンターは、大腸がんを対象としたトリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)・ベバシズマブ併用の従来法と隔週法を比較する無作為化第III相試験(PRABITAS試験)を開始した。  FTD/TP+ベバシズマブは大腸がんの標準治療として世界中で広く用いられている。従来の投与方法は5日間内服後2日間休薬を2回行い、その後2週間休薬する28日サイクルである。この投与法は、標準療法として用いられる一方、有害事象(白血球減少や好中球減少)が比較的多くみられるため、5日間内服後に9日間休薬する14日サイクル(隔週法)が提案されている。隔週法では、小規模臨床試験で副作用軽減が示されているが、その有効性と安全性について、十分に検証されているとはいえない。

効果的なFreeStyleリブレのスキャン回数が明らかに/京都医療センターほか

 糖尿病の血糖管理において、先進糖尿病デバイスとして持続血糖モニター(CGM)が活用されている。CGMには間歇スキャン式(isCGM)とリアルタイムCGMの2方式がある。間歇スキャン式では、上腕の後ろに装着されたセンサーをワイヤレスでスキャンすることでグルコース値が測定でき、リーダーやスマートフォンを使用する手軽さが魅力的だ。海外の先行研究では、スキャンの頻度が増すほど、HbA1cやTIR(time in range)などの血糖管理指標が改善すると報告されている。そのエビデンスに基づいて、これまでは「できるだけ多くスキャンするように」という指導がされてきたが、70~180mg/dLのTIR70%超を達成する最適なスキャン回数は明らかではなかった。

不眠症の診断治療に関する最新情報~欧州不眠症ガイドライン2023

 2017年以降の不眠症分野の進歩に伴い、欧州不眠症ガイドラインの更新が必要となった。ドイツ・フライブルク大学のDieter Riemann氏らは、改訂されたガイドラインのポイントについて、最新情報を報告した。Journal of Sleep Research誌2023年12月号の報告。  主なポイントは以下のとおり。 ・不眠症とその併存疾患の診断手順に関する推奨事項は、臨床面接(睡眠状態、病歴)、睡眠アンケートおよび睡眠日誌(身体検査、必要に応じ追加検査)【推奨度A】。 ・アクチグラフ検査は、不眠症の日常的な評価には推奨されないが【推奨度C】、鑑別診断には役立つ可能性がある【推奨度A】。 ・睡眠ポリグラフ検査は、他の睡眠障害(周期性四肢運動障害、睡眠関連呼吸障害など)が疑われる場合、治療抵抗性不眠症【推奨度A】およびその他の適応【推奨度B】を評価するために使用する必要がある。 ・不眠症に対する認知行動療法は、年齢を問わず成人(併存疾患を有する患者も含む)の慢性不眠症の第1選択治療として、対面またはデジタルにて実施されることが推奨される【推奨度A】。 ・不眠症に対する認知行動療法で十分な効果が得られない場合、薬理学的介入を検討する【推奨度A】。

夫が高血圧だと妻も高血圧になりやすい?

 夫婦のどちらかが高血圧だとその配偶者も高血圧である可能性の高いことが、新たな国際的な研究により明らかにされた。論文の上席著者である、米ミシガン大学のChihua Li氏は、「中高年に高血圧が多いことはよく知られているが、米国、英国、中国、インドの中高年の夫婦の多くで夫婦がそろって高血圧であることが分かり、われわれは驚いた。例えば、米国では50歳以上の夫婦の35%以上が夫婦そろって高血圧であった」と話している。この研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に12月6日掲載された。

MRI検査室への強磁性体の持ち込み、いかに危険か/BMJ

 硬貨やカトラリー、ビスケット缶などの医療現場で一般的にみられる物品が、意図せずに磁気共鳴画像診断装置(MRI)のある部屋に持ち込まれた場合、重大な人体組織損傷や骨折といった危害が生じる可能性があり、患者および医療従事者はMRI環境への強磁性体の持ち込みに伴う危険性を十分に認識する必要があることが、シンガポール・国立大学病院(NUH)のShao J. Ong氏らが実施した「CHRISTMAS研究」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月21日号クリスマス特集号「MARGINAL GAINS」で報告された。

顎関節症による慢性疼痛に有効な介入とは/BMJ

 顎関節症(TMD)に伴う慢性疼痛の管理では、エビデンスの確実性が「中」または「高」の臨床試験に限定すると、バイオフィードバック療法またはリラクゼーション療法で補強した認知行動療法(CBT)や、顎関節のモビライゼーションなどの、対処を促す介入や、顎関節の可動を促進する介入が最も効果的であることが、中国・蘭州大学のLiang Yao氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月15日号に掲載された。  研究グループは、顎関節症に伴う慢性疼痛に対する種々の治療法の有効性を比較検討する目的で、無作為化臨床試験(RCT)の系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(Chronic Pain Centre of Excellence for Canadian Veteransの助成を受けた)。

2次観察分析としてこういった観点はいかがなものか?(解説:野間重孝氏)

今回の研究は、著者らのグループが2018年にLancet誌に発表したHigh-STEACS試験の関連観察研究である。正直に言って論点がわかりにくく、論文を誤解して読んだ方が多かったのではないかと心配している。著者らはHigh-STEACS試験において、急性冠症候群(ACS)を疑われた患者に対して、トロポニンIの高感度アナリシスを用いることにより、より多くの心筋障害患者を同定することができたのだが、標準法を用いた場合と1年後の予後に差がなかったことを示した。この論文はジャーナル四天王でも取り上げられたのでお読みになった方も多いと思うが、当時の論調では著者ら自身、そこまで言い切ってよいものか迷いが見られていたのだが、本論文でははっきり「心イベントが有意に減少することはなかった」という表現で断定している。分析法とカットオフ値が確定したことが要因だったのではないかと推察する。

妊娠によって明らかになった将来の健康ハイリスク女性に対する、効果的な産後介入の可能性(解説:三戸麻子氏)

妊娠高血圧症候群に罹患した女性は、将来の生活習慣病や脳心血管病のハイリスクであることが知られている。しかし、現行の診療ガイドラインでは、産後にそのリスクを周知し、健康的なライフスタイル指導を推奨しているのみで、フォローアップの方法は確立していない。本研究では、産後の血圧自己モニタリングと医師による降圧薬調整の遠隔指導を行うことで、通常の産後管理と比較して、産後9ヵ月時の拡張期血圧が低下したことが示され、将来の疾病予防につながる可能性が示唆された。

境界性パーソナリティ障害に合併する精神および身体疾患

 境界性パーソナリティ障害(BPD)とその併存疾患に関する情報は、BPDの診断数が少ないため、限られている。南デンマーク大学のL. H. Hastrup氏らは、初めてBPDと診断された患者における診断前後3年間の精神的および身体的併存疾患を調査し、対照群との比較を行った。その結果、BPD患者は、さまざまな身体的および精神的疾患を併発する可能性が高いことを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年12月10日号の報告。

乾癬への生物学的製剤、逆説的反応リスクは?

 生物学的製剤による治療を受けた乾癬患者が湿疹を発症する逆説的反応のリスクは、IL-23阻害薬を投与された患者で最も低かった。リスク上昇と関連する因子は、年齢上昇、女性、アトピー性皮膚炎の既往、花粉症の既往であった。全体的には逆説的反応の発生率は低かった。英国・マンチェスター大学のAli Al-Janabi氏らが前向きコホート試験の結果を報告した。生物学的製剤を用いた尋常性乾癬患者の一部で、アトピー性皮膚炎の表現型の1つである湿疹を発症することが報告されている。しかし、そのリスク因子は不明であった。今回の検討結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、今回得られた結果を再現する必要がある」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月6日号掲載の報告。

インフルエンザでも後遺症が起こり得る

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆるlong COVIDでは、さまざまな症状が、数週間や数カ月間、時には何年もの間、続く可能性があることは広く知られている。こうした中、季節性インフルエンザ(以下、インフルエンザ)でも長期間にわたって症状が持続する「long Flu(ロング・フルー)」が起こり得ることが、米セントルイス・ワシントン大学の臨床疫学者Ziyad Al-Aly氏らが実施した研究で示された。詳細は、「Lancet Infectious Diseases」に12月14日掲載された。

閉経後HR陽性早期乳がんでは放射線療法を省略可能か

 ホルモン受容体(HR)陽性早期乳がんの診断を受けた50〜60代の閉経後の女性では、乳房温存術後に放射線療法を省略しても、5年間の再発リスクは非常に低いことが示された。米エモリー大学医学部放射線腫瘍学主任教授で同大学ウィンシップがん研究所のReshma Jagsi氏らによるこの研究結果は、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2023、12月5〜9日、米サンアントニオ)で発表されるとともに、「Journal of Clinical Oncology」に12月7日掲載された。  通常、HR陽性乳がんと診断された閉経後の女性は、乳腺腫瘤摘出術を受けた後に、放射線療法とホルモン療法を併用する。しかし最近の研究では、65歳以上の患者は、放射線療法省略してもそれを受けた場合と同等の転帰をたどる可能性が示唆されている。Jagsi氏らは今回の研究で、それよりも若い女性でも同じように放射線療法を省略できるかどうかを検討した。

若年期のテレビ視聴時間が45歳時のメタボリックシンドロームと関連

 小児期から青年期にかけてテレビの平均視聴時間が長い人は、45歳時点でメタボリックシンドローム(MS)を有している確率が高まるという研究結果が、「Pediatrics」8月1日号に掲載された。  オタゴ大学ダニーデン校医学部(ニュージーランド)のNathan MacDonell氏とRobert J. Hancox氏は、1972年および1973年に、ニュージーランドのダニーデンで生まれた住民ベースの出生コホートデータを用い、小児期から青年期のテレビ視聴時間と45歳時点のMSとの関連を調べた。対象者が5歳、7歳、9歳、11歳、13歳、15歳および32歳になった時点で、対象者の親または対象者自身から平日のテレビ視聴時間を尋ねた。